【Global Economy】(46) 中国、迫られる構造改革…習主席、2期目の減速不安

中国は今秋、5年に1度の共産党大会を開く。2期目に入る習近平政権にとって、経済運営の失敗は許されない。第19回党大会(19大)を乗り切っても、その後に不安は無いのか? (本紙編集局次長 佐伯聡士)

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高速鉄道の新型車両の運行が先月下旬、北京-上海間で始まった。習主席のスローガンである“中華民族の偉大な復興”に因んで、車両は『復興号』と命名されたという。習主席の威信を高める為に利用できるものは何でも利用する――。そんな党大会の年の経済政策には、例年以上に慣重な舵取りが求められるのは間違いない。共産党の一党独裁下にある中国は、政治と経済を明確に分けることはできない。今月末から来月初めにかけて、河北省の避暑地である北戴河で、党の重要会議が開かれる。習主席や李克強首相ら首脳と、引退した長老らが毎年集まる会合だ。今年の目玉は無論、習政権2期目の最高指導部人事だが、もう1つの主要議題は目下の経済情勢だろう。下半期の方針を確認する場となる。習政権が最も腐心しているのが、金融リスクの防止である。2015年6月に株価が急落し、その後、人民元相場も急落した経緯があるからだ(※グラフ①)。2014年11月に『中国人民銀行』が2年4ヵ月ぶりの利下げを決めたところ、投資資金が低迷していた不動産市場から株式市場に流入。政府や官製メディアが株式投資を推奨し、個人投資家が急速に増えた。実体経済とかけ離れて膨らんだ株式バブルが崩壊した。今年、金融市場の混乱が起きれば、習主席は最高指導者としてのメンツを失い、求心力にも影響が及ぶ。昨年以来、習政権は不動産投資に対する引き締めに注力してきた。住宅ローンの金利引き上げや、住宅の転売規制強化等の措置を続けている(※表②)。引き締めに力を入れる背景には、不動産価格上昇等資産バブルの懸念が強まったことや、アメリカの利上げもあるとみられている。

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「現在、確かにリスクは存在するが、全体としては制御できる」。先月下旬、李首相は遼寧省大連で開かれた『世界経済フォーラム』(夏季ダボス会議)でこう演説し、引き締め政策を続ける方針を表明した。その一方で、「通年の主要な目標は完全に実現できる」とも述べ、“6.5%前後”という今年の成長率目標が達成可能との見通しを示した。習政権にとって、今年の目標実現は譲れない一線だ(※グラフ③)。ただ、先行きに懸念もある。昨年以来、習政権は景気を下支えする為、第13次5ヵ年計画(2016~2020年)のインフラプロジェクトを前倒しで実施する等、積極的な財政政策を維持してきた。それにも拘わらず、今月17日に発表された今年4~6月期の統計を見ると、異変が感じられるからだ。「景気が再び減速し始めるのではないか?」との不安が、党大会後の経済情勢に影を落とす。国内総生産(GDP)速報値は前年同期比6.9%増で、1~3月期から横這いだった。上半期(1~6月)の内訳を精査すると、都市部の公共工事や企業の設備投資を示す固定資産投資は前年同期比8.6%増と、1~3月期の9.2%増よりも伸びが鈍化した。マンション建設等の不動産開発投資は8.5%増で、1~3月期の9.1%増を下回った(※グラフ④)。「不動産市況が沈静化し、下半期は成長に下押し圧力がかかる」との見通しが出ている。経済の減速傾向が強まり過ぎれば、当初の計画通りに、鉄鋼等過剰生産設備の解消が進まなくなる恐れがある。「(供給サイドの構造改革の柱である)“ゾンビ企業”の淘汰が頓挫するのはないか?」という懸念だ。過剰な生産設備や負債を抱えて実質破綻したゾンビ企業は、上場している国内の鉄鋼会社の半数に当たるとされる。淘汰により失業書が大量に生まれれば、景気の減速に拍車がかかる。

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政府の統計では、鉄鋼と石炭の業界だけでも、過剰生産能力の整理により、労働者約180万人の失業対策が必要になる見通しだ。失業者の増大は政権への不満に結び付き、暴動の頻発等混乱を招きかねない。政治・社会の安定を最優先する習政権が最も目にしたくない光景だろう。中国政府は今年、鉄鋼の生産能力を5000万トン削減する目標を掲げる。2015年末の粗鋼生産能力は11億3000万トン、生産量は約8億トンだった。過剰生産能力は3億トンを超えていた。政府がどんなにメーカーの遊休設備を整理しても、新たに建設されるケースが見られ、「却って生産能力が増大する」との指摘もある。景気が減速すれば尚更、こうした取り組みが停滞するのは避けられない。加えて、不透明感を高めているのが、アメリカの出方だ。今年上半期の対米貿易収支は、前年同期比約6%増の1175億ドル(約13兆円)の黒字だった。ドナルド・トランプ大統領は、膨大な対中貿易赤字を問題視する。米中通商摩擦が現実化すれば、中国経済への打撃は心至だ。先の大連のフォーラムで李首相は、世界で台頭する保護主義的な動きについて、「自由貿易を制限すれば不公正な貿易を生む。一方的に自分のルールを押し付けてはならない」と強調していた。名指しは避けながらも、“アメリカ第一”を掲げるトランプ政権を牽制したつもりだろう。中国では外資規制や不透明な行政指導等が多く、 開放された国内市場とは言い難い。その上、過剰生産問題での対応強化という国際公約を果たせないようでは、説得力を持たない。習政権は構造改革を先送りにせず、安定成長を実現する責務を担っている。


⦿読売新聞 2017年7月21日付掲載⦿

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