【有機EL&半導体バブル】(05) 形状の自由度が車載で強み、自動運転で広がる使途

20170724 17
ディスプレイ需要において自動車は大きな柱であり、今後も存在感は高まっていく。世界の自動車生産台数は、2016年の9000万台強から、2022年には1億300万台へと増加し(※IHS Markit:Maritime&Trade参照)、同期間にディスプレイ装着数も1億枚強から1億7000万枚強へと増える予測もある(※『矢野経済研究所』調べ)。数量増だけではなく、大型化も進んでいる。『テスラ』は、『モデルS』で17インチ(※対角線約43インチ)という車載では類を見ない大型ディスプレイを採用した。また、『トヨタ自動車』の『プリウスPHV』でも11.6インチ(※同約30インチ)のディスプレイを採用する等、高級車以外でも大型化が進んでいる。また、『メルセデスベンツ』の『Eクラス』のように、メーター全体をディスプレイにして、従来のセンターディスプレイと繋げて一体化する例もある。日本でも、サイドミラーを無くしてカメラを取り付け、車内ディスプレイで後方を確認する“ミラーレス車”が法改正で解禁された。今後は、後方を確認するディスプレイの採用やワイド化も進むだろう。このように、大型化・多様化するディスプレイは、現在は液晶が主流だが、有機ELの導入も検討されている。曲げられるという有機ELの形状の自由度は、今後、重要性が増す内装デザインの差別化要因となるからだ。また、既に反応速度や色彩のコントラストを生かして、ミラーレス車のコンセプトカーにも使われている。課題だった寿命・消費電力・製造コストも、実用に足る水準に達しており、今年末には複数のヨーロッパ完成車メーカーの量産車への採用も囁かれている。今後、車載ディスプレイ需要では、HMI(Human Machine Interface)の概念の広がりという新たな追い風が吹く。これは、機械(※本稿では自動車)と人とが情報を授受する相手や手段が変わることを意味する。

現在の手動運転における車載ディスプレイの位置付けは、運転手が地図情報を見たり、エアコンの設定を変える時に使うもので、車両と運転手の情報授受が中心だ。歩行者に対しては、運転手がアイコンタクトやジェスチャーで「お先にどうぞ」という意思表明をしている。しかし自動運転では、このようなサインは車外に向けた車載ディスプレイが送る。実際、『Google』も“歩行者への通知”という名で、車外に情報を表示する特許を取得している。また、車内にいる人も、運転手ではなく乗員として、映画やゲーム等、運転とは無関係な情報授受が中心となる。つまり、ディスプレイの役割は、車両と歩行者・乗員との情報授受へとシフトするのだ。自動運転の車両では、運転から解放されることで、乗員が如何に車内で有意義に過ごせるかが重要となる。そこでは、車内空間の在り方が問われる。『フォルクスワーゲン(VW)』が今年3月に発表した完全自動運転のコンセプトカー『セドリック』(※左上画像)では、前面ウィンドウに透過性の有機ELディスプレイを備えている。このディスプレイで、映画鑑賞やビデオ会議の映像を映し出せる。自動運転のフェーズが進めば、これまでとは次元が違う大型ディスプレイが備わるようにもなり、有機ELの商機も広がるだろう。車と人との情報伝達という点から言うと、ディスプレイ以外の技術進化も著しい。『BMW』は既に、ジェスチャーでエアコン温度やカーオーディオ音量を調整できる技術を市販化している。これからは、『アマゾンエコー』のようなAI(人工知能)を備えた音声認識も、存在感を増していくだろう。BMWは、車内で音声認識を通じて買い物をするデモンストレーションを行っている。完全自動運転になれば、乗員はディスプレイだけをずっと見ていることもできる。しかし、実現までは手動運転が必要であり、ディスプレイ経由の情報授受の手段には制約がある。一方で、音声認識端末はアメリカ等で急速に家庭に広がっている。海外の研究機関によると、今年末までにアメリカだけでも累計3300万台、つまり4世帯に1台普及するとの予測もある。車載での有機ELの競合は、液晶等他のディスプレイとは限らない。有機EL需要は、単体の技術進化や価格動向だけでなく、自動運転の普及、音声やジェスチャー認識との競合等、大局的な視点から捉えることが重要ではないか。 (『ローランドベルガー』パートナー 貝瀬斉)


キャプチャ  2017年6月13日号掲載
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