【中東カオス・モスル奪還】(上) 拡散するテロ分子

イラク政府は、イスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』からモスルを奪還した。弱体化するISは今後、どうなるのか?

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「モスルでの敗北は、ISに大きな打撃となる」――。イラクのハイダル・アル=アバーディ首相は今月9日、政府軍が制圧したモスルに入り、地元テレビにこう述べて、約9ヵ月に及ぶ軍事作戦の戦果を強調した。ISは、モスルと並ぶ重要拠点で、“首都”と呼ぶシリア北部のラッカでも劣勢にある。アメリカ軍の支援を受けるクルド人主体の民兵組織『シリア民主軍』は今月3日、ISが要塞化したラッカ旧市街に進駐した。「今後3ヵ月以内に制圧する」との見方も出ている。だが、『アハラム戦略研究所』(カイロ)のサイド・オカシャ研究員は、「イラクやシリアで支配地域が消滅しても、アジアやアフリカに広がったISの戦闘員が、テロ攻撃等を引き起こすだろう」と警告する。

「体中に金属が刺さっていた。ここでISのテロが起きるとは思わなかった」――。モスルから南西に約1400㎞離れたエジプト第2の都市・アレクサンドリアに住む、キリスト教の一派・コプト教徒のゲルギス・バフームさん(82)は、50歳でテロの標的となった息子・イブラヒムさんの写真に何度もキスをし、涙をこぼした。イブラヒムさんは4月9日、地元のコプト教会で起きた自爆テロの犠牲になった。犯人はISメンバーのエジプト人の男(31)で、昨年まで3年間、シリアでISの戦闘訓練を受けたとされる。エジプトでのISの勢力範囲は、砂漠が広がる東部のシナイ半島とみられていた。だが治安当局幹部は、「ISは砂漠を離れ、都市に触手を伸ばしている」と危機感を強める。極端なイスラム教の解釈で暴力を正当化するISの戦闘員が忍び寄るのは、エジプトだけではない。チュニジアでは、イラクやシリアから帰国した戦闘員が、隣国のアルジェリアとの国境付近で新組織を結成した。中東から遠く離れたフィリピン南部でも最近、ISに忠誠を誓う過激派と政府軍の交戦があった。「リビアから国境を越えて戦闘員が入り、モスク(※イスラム教の礼拝施設)で若者を洗脳している」。ニジェールの首都・ニアメーで、治安関係者がそう証言した。経済発展が遅れて汚職が横行し、世界最貧国の1つと言われる砂漠の国では、仕事も無く、手持ちぶさたにうろつく若者が首都でも目立つ。約2000万人の国民の90%以上がイスラム教徒だ。関係者によると、同国でISメンバーは約300人だが、治安当局者ら数十人が殺害された。最近になって新しい地域指導者が選出され、組織の拡大を図っているという。テロ組織に詳しい有力紙『レベヌマン』のブカリ・アダモ記者は、「そのうち、イラクやシリアのようにならないか心配だ」と話す。政治的に混乱し、貧困が深刻な地域を狙って、イスラム過激派の“テロ分子”が拡散している。

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■イラク内、残党排除が課題  保坂修司氏(『日本エネルギー経済研究所』研究理事)
モスルの奪還は、ISの崩壊が近いことを印象付ける象徴的な意味合いが強い。モスルは、指導者のアブバクル・バグダーディ容疑者が初めて、“カリフ”(※イスラム教の預言者・ムハンマドの後継者)として公の場に現れ、説教した場所で、支配の象徴だった。ただ、イラク国内にはISの戦闘員が残っており、完全に駆逐された訳ではない。西部のアンバル県等には、テロを起こす力を残した残党がおり、排除が課題だ。イラクは、内戦下にあるシリアに比べて問題が少なく、ISがいなくなれば、イラク政府による統治にスムーズに移れるだろう。イスラム教シーア派が主体のアバーディ政権は、少数派のスンニ派住民の不満を抑える政策を打ち出す必要があるが、シーア派住民の反発を買わない為、バランスも大事になる。一方のシリアでは、ISの拠点・ラッカが解放されたとしても、誰が統治するのかわからない。統治者がアサド政権でも反体制派でも、対立は継続する。ISが支配領域を拡大するのはもう難しいが、イデオロギーは残っている。外国人戦闘員がイラクやシリアから帰国し、事件を起こす可能性がある。欧米やアジア等でのテロに重点を置くことも予想される。 (聞き手/国際部 津田知子)


⦿読売新聞 2017年7月11日付掲載⦿

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