【中東カオス・モスル奪還】(中) クルド、独立の野望

20170725 03
イラク北部のアルビル市内に、ブロックを積み上げた簡素な住宅地がある。ここに、北西部のシヌンから逃れてきた16家族が暮らす。住民のハラフ・ヘザさん(54)は、「古里に戻りたいけど、安全かどうかわからない」と話す。シヌンには、クルド人やアラブ人ら合わせて約14万人が住んでいた。連邦警察が治安を担っていたが、2014年8月、イスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』にあっけなく制圧された。その4ヵ月後、クルド自治政府の治安部隊『ペシュメルガ』がISを放逐し、それ以降、駐留を続ける。へザさんは先祖がクルド系だが、地域信仰のヤジーディ教の信徒で、「ペシュメルガが何をするのかをよく見ないと動けない」と、クルド人が支配する町に帰ることに不安を感じている。クルド人は独自の言語を持ち、多くはイスラム教スンニ派の信徒だ。推定で約3000万人がイラク、トルコ、シリア、イランに分断されて住み、“領土を持たない世界最大の少数民族”と言われる。アラブ人が多数派のイラクでは、人口のほぼ2割を占める約600万人が北部の自治区を中心に暮らしている。

ペシュメルガは昨年10月、ISの拠点である北部・モスルの掃討作戦に参加した。クルド系住民の保護を名目に、モスル周辺の地域に進駐し、ISを撃退する先兵となった。モスル近郊には、戦闘で無残に破壊された家屋が並ぶ集落がある。ペシュメルガはISを撃退すると、クルド自治区の領域外にある集落に検問所を置いて、独自の管理を続けた。付近の集落出身というアラブ人のアリ・ムハマド・ガータさん(19)は、「クルド人が支配するのはおかしい」と不満をこぼした。自治政府関係者によると、ペシュメルガがISから奪った地域は、自治区の面積の3割強に相当する。クルド人の支配地域は自治区の範囲を超え、現在ではイラクの領土の14%程度に広がった。ペシュメルガが居座る理由を、ハルグド・ヒクマット准将は「元々はクルドの土地だ。しかも、イラク軍はISに敗れて逃げた。勇気ある我が軍に撤退する理由は無い」と主張した。「独立を問いたい」――。先月、クルド自治政府のマスード・バルザニ議長(70)は、イラクからの独立の是非を問う住民投票を9月25日に行うことを電撃発表した。自治政府は、油田地帯のキルクーク等、ペシュメルガが駐留する自治区以外の町でも投票を実施したい考えだ。住民投票の実施に対し、イラクのハイダル・アル=アバーディ首相は「我々は1つの国土に住んでいる」と猛反発した。隣国からも、「クルド地域はイラク共和国の一部だ」(イラン外務省)、「誤った対応だ」(トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領)等、反発の声が上がる。両国とも国内にクルド人を抱えており、今回の住民投票が独立運動に火を付ける事態を危惧する為だ。しかしバルザニ議長は、「私の人生は独立の為にある。独立したクルドの旗の下で死にたい」と繰り返している。


⦿読売新聞 2017年7月12日付掲載⦿
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