インドで広がるISの脅威――グローバル化するジハード、在留邦人・観光客はテロに要注意

20170726 03
インド北部のジャンムー・カシミール州で、『IS(イスラミックステート)』の黒い旗を掲げる若者が相次いでいる。3月には中心都市・スリナガルの反政府デモで、若者たちの集団がISの旗を持って参加。先月1日には、プルワマ地区の学生によるデモ隊がISの旗を掲げた。「カシミールの若者には2つの選択肢がある。ツーリズムかテロリズムか。過去40年間、テロは何も与えてこなかった筈だ」。インドのナレンドラ・モディ首相は4月2日、カシミールでこう演説し、若者に暴力の放棄を訴えた。だが、若者たちとインド治安部隊との衝突は治まらない。インド情報機関の元幹部は、「インド軍を挑発する為に旗を掲げているだけで、ISとの繋がりは無い」とみるが、治安部隊へ投石を繰り返す現地の10代の少年たちは口を揃える。「ISに参加する準備はできている」。政情不安が続くカシミールで、イスラム過激主義が急速に広まっている。同州には70万人規模のインド治安部隊が駐留し、カシミールの独立やパキスタンへの編入を主張する“分離派”の取り締まりを行っている。こうした“抑圧”に苦しむ多くの若者が今、IS等の過激思想に引き寄せられているのだ。カシミールではISによるテロ事件は起きていない。だが、「リクルーターが来ればあっという間に戦闘員が集まる状況」(地元記者)であり、近い将来、インドの治安を脅かすテロの震源になる可能性を秘めている。

カシミールに過激主義の種が蒔かれたのは、武装闘争が激化した1990年代に遡る。本来、カシミールはイスラム神秘主義が主流で、厳格なワッハーブ派やタリバンに通じるデオバンド派とは一線を画していた。しかし、パキスタンの諜報機関『ISI』が支援する『ラシュカレタイバ(LeT)』や、アフガニスタンで旧ソビエト連邦と戦った『ハルカトゥルムジャヒディン(HUM)』等が、続々とカシミールに戦闘の舞台を移した。インド治安関係者によると、これらの組織は1990年代から、インド側のカシミールで各村にリクルーターを潜伏させ、若者の勧誘を続けてきた。彼らがカシミールの地元武装組織と決定的に異なるのは、闘争の中心に“イスラム”を掲げていることだ。イスラム法の統治を齎すことを目標とし、“ジハード”と称して治安部隊を攻撃する。現在、これらの組織に加わっているのは、武装闘争の中で育った10~20代の若者たちだ。1990年代に蒔かれた過激主義の種を刈り取るように、武装組織が地元の若者たちを吸収している。更に、インターネットの普及が若者の過激化を加速させている。昨年、カシミールで大規模デモが続いたのは、地元住民の間でカリスマ的な人気を博していた『ヒズブルムジャヒディン(HM)』の司令官であるブルハン・ワニ(22)が、インド軍に殺害されたのがきっかけだった。ワニは過激派のポスターボーイ(広告塔)と呼ばれ、武装蜂起を呼びかける動画を頻繁に発信していた。こうした動画は『Facebook』で瞬く間にシェアされ、若者たちを駆り立てた。ワニの後継者となったザキール・ムーサは3月、ビデオ声明で「カシミールのナショナリズムの為ではなく、イスラムの為に」戦うよう呼びかけた。更に、先月にはHMを脱退し、「カシミールをイスラムの国にする」と宣言。カシミールの政治闘争を批判し、『アルカイダ』への支持を明らかにした。“カシミールの独立”を目指す武装闘争の中で、戦闘員が過激主義を強め、グローバルジハードへと傾倒していった形だ。ISは、拠点とするアフガニスタン東部から越境し、パキスタンで度々テロを起こす等、活動を広域化させている。カシミールはテロリストの越境ルートが構築されており、彼らがインドに侵入するのも難しくない。「ISが本物のイスラムを齎すのか注視しているところだ」。嘗てHUMで戦った30代のある元戦闘員はこう語り、ISへの参加を検討していることを明かした。ISがカシミールに到達すれば、こうした若者たちが参加を表明することは想像に難くない。深刻なのは、インドではカシミール以外にも各地でISシンパが出始めていることだ。インドのメディアによると、3月7日、中部のマディヤ・プラデーシュ州で列車爆破事件があり、負傷者が出た。治安部隊が北部のラクナウで犯行グループの拠点を急襲したところ、銃器や爆発物等と共に、ISの旗が見つかった。このグループはISを自任し、メンバーは過去にシリアへの渡航を試みていた。

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また4月4日には、インド当局がサウジアラビアから強制送還されたインド人のイスラム教徒(37)を逮捕した。この男は、ISのリクルート活動を続ける地下組織『インドのカリフ軍』の中心人物の1人とされる。この組織は既に数十人をリクルートしたとみられ、インドでヒンドゥー教の祭典を狙った爆破テロ等を計画していた疑いがある。地元シンクタンクの纏めでは、インド人による戦闘員のリクルート等のIS関連事件は、2014年が6件だったが、2015年は35件、2016年は75件に急増した。アメリカ軍は4月13日、アフガニスタン東部で大規模爆風爆弾(MOAB)によりIS戦闘員約100人を殺害したが、「この内の13人はインド人だった」との情報もある。ISの思想は既に、多数のインド人を惹きつけているのだ。カシミールにもリクルーターの触手が伸びている。昨年7月、シリアのIS戦闘員の指示で、コルカタのマザーハウスで外国人を狙ったテロを計画していた男が逮捕された。その後の調べで、この男は前述のインドのカリフ軍メンバーと繋がりを持ち、同5月にはスリナガルの反政府デモでISの旗を掲げていたことが判明した。また、4月21日には、ドバイ等でISのリクルーターをしていたインド人2人に対し、デリー地裁が懲役7年を言い渡したが、この内の1人はカシミール出身だったことも判明している。インド当局や在印アメリカ大使館は近年、「タージマハルや宗教施設等でISのテロ攻撃が起きる可能性がある」として、度々警告を発している。先月には「シリアでISに参加したインド人が帰国する可能性がある」として、全土に警戒態勢が敷かれたばかりだ。バングラデシュでは昨年7月、ISとの繋がりを構築した地元過激派組織が飲食店襲撃テロを起こした。インドでも、過激主義に引かれた若者がシリアやアフガンのIS戦闘員と連絡手段を確立し、“バングラ型”のテロを起こす可能性が現実味を増している。


キャプチャ  2017年6月号掲載

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