【政治の現場・区割り改定】(01) 東京7区…都議選惨敗、“開拓”に壁

衆議院小選挙区の“1票の格差”を2倍未満に是正する為、97の選挙区で区割り見直しが行われた。今月16日に施行された改正公職選挙法に基づき、次期衆院選から青森・岩手・三重・奈良・熊本・鹿児島の6県で小選挙区数が1減る他、東京等で選挙区の境界線も大きく変わる。走り出す現場を追った。

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今月11日の昼下がり。水色のワゴン車が、目黒区の住宅街の路地を舐めるようにゆっくり走った。「ここから先が、新しく選挙区となる地域ですね」。座席で地図を広げていた野沢潔(68)はそう言うと、ポスター掲示に適した場所を車の窓越しに探し始めた。野沢は、自民党衆議院議員・松本文明(68・当選3回)の地元事務所で所長を務める。松本は、前回2014年衆院選の東京7区で、民進党の長妻昭(57・当選6回)に敗れ、比例選で復活当選した。次期衆院選では、長妻を小選挙区で倒しての勝利を目指す。東京7区の区割りが見直されて以降、野沢の仕事には“新たに選挙区となった地域の下調べ”が加わった。炎天下の住宅街を歩き回れば、汗がどっと噴き出る。還暦を過ぎた身にはかなり堪えるが、そうも言っていられない事情がある。

自民党は今月2日の都議選で、過去最低の23議席に沈んだ。松本を支えてきた中野・渋谷両区の現職都議2人も落選。この内の1人は都議会議長だった。「松本先生の選挙区内は、ほぼ都議が全滅した。そういう意味では、大変ご苦労されるんだろうなと思う」。落選した都議の1人は、松本が次期衆院選に向けて進むのは茨の道かもしれないと悲観する。自民党は目黒区でも2議席を失った。野沢が“下調べ”に入った目黒区の一部は、新たに東京7区となる。自民党目黒区議団幹事長の小野瀬康裕(45)は、「目黒は9月がお祭りの時期。松本先生には、お神酒所を回ってもらう」と、地道な手法に“松本勝利”への活路を求める。松本にとって泣きっ面に蜂なのは、今回の区割り見直しで、自宅ですら東京7区の選挙区外になってしまったことだ。中野区北部にある家は、“1票の格差”是正に伴い、東京10区に含まれることになった。松本後援会で30年以上に亘り事務局を務める岸宏昭(70)ら、“選挙区外”に住むことになった有力支持者もいる。岸は「乱暴過ぎる」と無念の表情を浮かべる。市区内で新たに選挙区の境界線を引かれた自治体では、こうした混乱が少なくない。焦りからか、松本の後援会には、次期衆院選に向けた活動の早期開始を求める声もある。しかし、都議選の結果がそれを許さない。松本は語る。「自民党は国会議員のせいで惨敗した。それなのに、『次は私の選挙を…』等とは未だ言えない」。自重の日々は続く。

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■国政に『都民ファーストの会』、民進党警戒
民進党内にも、区割り改定への戸惑いはある。都議選で3選を果たした長妻の元秘書・西沢圭太(38)は16日、長妻の名代として、選挙区から外れる中野区北部の支援者を回った。「将来的に、この地域が7区に戻ることもあるかもしれない。長妻さんには顔を見
せに来てほしい」。名残惜しそうに言う男性(70)に、西沢は何度も頭を下げて礼を言うしか言葉がなかった。都議選で西沢を含め5議席に留まる等、党勢が伸び悩む上に、打開策が見つからない民進党にとって、長年の支援者を失うのは大きな痛手だ。新たに選挙区となった地域での支援著開拓は、手探りが続く。長妻は母校である慶應義塾大学の卒業者名簿に当たったり、新婚時代に住んだ目黒区のマンションの大家を約30年ぶりに訪ねてみたりと、知恵を絞る。支援を願う長妻に、大家は「おぉ、そうか」と驚きながらも、「当時を覚えている」と笑みを見せたという。前回選挙と異なるのは、選挙区の境界線だけではない。「都民ファーストに狙い撃ちされるなら、衆議院東京1~25区だろう」。長妻は、東京都知事の小池百合子率いる地域政党『都民ファーストの会』の国政進出を警戒するよう、周囲を引き締める。全25選挙区の内の21選挙区で境界見直しが行われた東京では、“小池新党”が誕生するかどうかも、選挙を大きく左右しそうだ。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年7月20日付掲載⦿

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