【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(50) 世界の犯罪組織がパリに拠点を置く“アングラ経済”の常識

『アルカイダ(AQAP)』幹部のサイードは、経済学の博士号を持ち、テロ資金の管理が主な任務だった。温和な風貌に仕立ての良いスーツを纏い、とてもテロリストには見えない。ドバイにある彼のオフィスは、石油関連の商社である。そこでは、色鮮やかなヒジャブを被った数人の女性が札束を仕分けしていた。「ジハードの為に身体を張りなさい。身体を張れない者は資金、或いは物で支えなさい。それもできない者は、祈りで支えなさい」。積まれた札束は、コーランの教えに則って中東各国から集められた浄財なのだ。通貨の種類もディナール、リヤル、ディルハム等、GCC(湾岸諸国)の様々な種類で、少額紙幣も多い。ここに集められた資金は、所謂イスラム圏の一般庶民のものである。富裕層の高額な浄財は、その額が大きい為、現金では扱い難く、イスラム系銀行が直接管理している。バチカンの銀行がイタリアマフィアの犯罪資金を洗浄し、マルクス・レーニン主義勢力や、イスラム系過激派に対抗する為の資金を管理しているのと同じ構図だ。サイードの元へ集まった資金は、ある程度まとまったら、自家用機でスイスへ運ばれる。そこでドルに換えられ、イギリス領バージンアイランドの銀行へ送金されるのだが、この銀行はパリに拠点を置くマフ ィアがオーナーである。銀行オーナーのセザールは、マフィアとテロリストを繋ぐ重要な人物として有名な男だ。麻薬と武器の売買決済ではヨーロッパ一と言われている。アフガニスタンで製造されたへロインは、バルカンルートでロシアに売られる。ロシアからはアフガニスタンへ武器が売られる。その決済に使われるのが、セザールの銀行なのだ。

それだけではない。セザールの銀行はテロリストに口座を作らせ、VISAカードを提供している。世界中で活動するテロリストは、ATMからテロ資金をキャッシングしているのである。口座の名義はオフショアカンパニーだから、カードの券面にも取引履歴にも個人名が出ることはない。これまで、テロリストへの活動資金は、イスラム社会の地下銀行システムである『ハワラ』が主流であった。ハワラは、エージェントを介して現金と暗証番号を交換する。人間以外のネットワークを使用しないので、履歴は残らない。その為、9.11同時多発テロでも、捜査機関によるテロ資金のルート解明は困難を極めた。ところが、捜査当局の執念によって、アメリカ国内のハワラが関係する施設やエージェントが次々と摘発されるようになると、テロ資金の移動も変化せざるを得なくなった。こうした背景から、パリを拠点に麻薬や武器取引の仲介をしていたセザールは、テロ資金の移動や決済まで行うようになったのだ。国際的なマフィアやテロ組織だけでなく、臓器売買・人身売買の組織までもがパリを拠点とするのは何故だろう? 抑々、こうした犯罪組織が金融取引を行うのは、ロンドンである場合が大半だ。ユーロダラー市場とシティの独立性に魅力があるからである。しかし、イギリスは徹底した監視と情報収集で、犯罪組織の拠点にはなり難い。検査無しで国境を渡れる『シェンゲン協定』にも加盟しておらず、事実、国境の警備も厳しい。そこで、パリが選ばれたという訳だ。フランスならば、EU内なら人や物の移動が自由で、当局の捜査能力も低い。これは、厳格な民主主義の運用を目指すがあまり、個人の権利を尊重し過ぎたことが要因となっている。日本では意識し難いかも知れないが、欧米では犯罪収益にはテロ資金も含まれている。『パレルモ条約(国際組織犯罪防止条約)』の意義を、もう一度考えるべきではないだろうか。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年7月18日・25日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 国際問題
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR