【外国人材と拓く・手探りの現場】(03) シューカツ理解できない

20170727 03
外国人留学生――。最近は“出稼ぎ目的”が指摘されるが、高度な知識や技術を身に付けたい学生たちが大半を占める。卒業後は日本での就職を望む人も多く、成長を担う“金の卵”と言える。2018年春入社の就職活動が空前の売り手市場と言われる中、留学生の様子はどうなのか? 東京経済大大学院を修了した中国出身の李晨さん(26)は、内定がゼロ。在留資格が切れる11月までに勤務先を決めないと、日本にいられなくなる。就活は2年目。昨秋、第1志望の飲食店チェーンの内々定を取り消されたのを忘れない。配属予定の店舗の現場勤務では、「就労ビザ(※在留資格)が出ない」と告げられた。「考えてもいなくて、目の前が真っ暗になった」。12日、外国人人材派遣の『グローバルパワー』(東京都台東区)の就職活動セミナー。20人ほどの留学生が必死にメモを取る。九州大学大学院の中国人留学生・馬晨さん(27)は焦りを隠さない。「15社くらい受けたが、何故落とされるのか? 就活って一体何なの?」。就活は、新卒一括採用で就学中が当たり前。解禁前もインターンへの参加等複雑な日程に、卒業後という海外の常識に縛られる留学生はぴんとこない。

竹内幸一社長(42)は、「現時点で内定があるのは3割だ」と話す。事実上の年齢制限で、母国の大学等を経た留学生は門前払いになりがち。スリランカ出身で早稲田大学国際教養学部のワヤニカ・マルミさん(28)は、就活支援会社に行くのを止めた。「『28歳で入れる会社はあまり無い』と言われてがっかりするだけ」。アメリカは、新入社員の採用で年齢制限を設けないケースが一般的という。『日本学生支援機構』によると、64%の留学生が日本で就職を希望し、実際に就職したのは30%。就活等の“日本流”は壁になる。『新日本監査法人』の調査では、就活で困ったことは「仕組みがわからない」と共に、「日本語での試験が難しい」と答えた留学生が3割を超えた。「日本語でのウェブテストで落とされた」。デンマーク人で明治大学のライラ・ペダーセンさん(24)は、日本語だけの筆記試験に違和感を覚えた。社内公用語が英語の大手も、インターンの応募用紙は日本語のみで失望した。「社内は日本人ばかりで日本語でやり取りしていて、グローバルと言えるだろうか?」。東京大学大学院に留学していたタイ出身のティーラポン・ポンキッティパンさん(29)は、外資系企業に就職した。高等教育を受ける外国人留学生は17万人超。5年で24%増えた。グローバル化や多様な人材獲得の重要性が増す中、“郷に入れば郷に従え”と言ってばかりもいられない。『経済同友会』が昨年実施した調査で、通年採用の導入企業は僅か13%。様々な人材を求めるのであれば、採用の多様性も欠かせない。留学生の思いに耳を傾け、“脱日本流”を探る必要がある。

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■金の卵ここにも…地方の国際化担う外国人材
“金の卵”はここにも――。国際交流で日本を訪れた外国人材に、地方から注目が集まっている。交流の一環で、小中学校の外国語指導助手や役所の国際交流員として働いた経験から、日本の地方への理解が深く、国際化を率いる格好の人材となっている為だ。日本政府も誘致を加速しており、地方を変える原動力となりつつある。「外国人が行内で働いているのが普通だという基礎を作りたい」。ミネソタ州出身のマイケル・コボウさん(27・右画像)は、『めぶきフィナンシャルグループ』傘下の『常陽銀行』で働き始めて、もうすぐ2年。外貨預金の推進や取引先企業の海外事業展開の支援、海外投資家向け広報(IR)資料の作成や外国人の口座開設の手伝い等、任される業務は幅広い。同行のある上司は、「彼のおかげで業務が円滑に進むようになった」と話す。これまで数日かかっていた海外銀行から送られてくる大量の英語の質問書への対応も、マイケルさんは僅か2~3時間で熟す。英語のネイティブというだけでなく、経済や金融に関する知識を身に付けてきた努力が買われている。高校・大学時代の日本留学を経て、アメリカの大学を卒業し、日本に戻ってきたのは2012年夏。日本政府の国際交流事業『JETプログラム』を利用して、2015年夏まで茨城県庁で国際交流員として勤務した。常陽銀との出合いは2015年、東京で開かれた同プログラム参加者向けのキャリアフォーラム。視察目的で同フォーラムに来ていた同行だったが、数週間後にはマイケルさんに入行の意思を尋ねたという。「アメリカ・日本の両国で生活してきた経験を生かせるのは、日本しかないと思った」。茨城に移住してくる外国人が増加傾向にある今、「生活に欠かせない銀行で働けば、県内の外国人の役に立てる」。こうした思いから、常陽銀行への入行を決意した。

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神戸市で2015年から広報専門官を務めるイギリス出身のルイーズ・デンディさん(27・左画像)も、国際交流人材の1人だった。バーミンガム大学でフランス語・スペイン語・日本語を学び、3年時に留学で日本に来た。一旦イギリスに戻り、フランスの大学で英語を教える職を得たが、友人に誘われた日本政府のJETプログラムの説明会で、「フランスはいつでも行ける」と翻意した。同プログラムでは、外国語指導助手を経て、神戸市の国際交流員として市長の通訳や資料の翻訳等に携わった。各国要人や大企業のトップらとの協議、大きなパーティーでの通訳に臨むのは、「怖過ぎてお腹が痛くなった。専門用語等を理解するよう、1週間前から資料を読み込んだ」。慣れてきた頃、市から広報専門官の打診を受けた時は、「大好きな神戸を海外に発信できる」と二つ返事で引き受けた。SNSを駆使して、神戸の魅力を海外に発信している。市の『Facebook』のフォロワーは2500人、『ツイッター』が1500人、『インスタグラム』が1200人まで広がり、「海外からの反応も増えている」と手応えを語る。高校時代に人気ゲーム『ファイナルファンタジー』のファンサイトを作ったほどのテクノロジー好き。インスタグラムは、海外で神戸を知らない層への発信を想定し、Facebookは神戸在住外国人の利便性向上にも役立て、ツイッターは海外記者とのやり取りにも使う。SNSを使い分けつつ、利用データも活用しながら、更なる発進力強化を目指す。

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「やはり、市民の為、議員間討議を通じて合意形成をし改善を図ることは、とても大事です」――。アメリカ出身で、愛知県犬山市議会議長のアンソニー・ビアンキさん(58・右画像)は、先月26日、議長として最初の定例会をこう締め括った。海外出身の地方議長は極めて珍しく、国内外で一挙手一投足が注目を集める。2003年に市議に初当選して以来、全議員で合意して、議会から市政に提案することの重要性を主張してきた。日本の地方議会の在り方には違和感があったからだ。「行政との対話ばかりで、議員間の議論が少ない」。素朴な疑問を提起し続けるビアンキさんに、同僚の議員たちも変化を見せている。今回の定例会では、議員間討議に基づいて、市議会として公共施設のわかり難い料金体系の見直しを、市に申し入れることになった。山田拓郎市長は、「共感した。早速見直す」と応じた。ビアンキさんは1989年、政府の国際交流プログラムで来日して、愛知県で外国語指導助手として働いた。帰国後、語学教育プログラムづくりで犬山市に呼ばれ、2002年に日本国籍を取得した。定着した理由を、ビアンキさんは「居場所を作ってくれた恩返し」と話す。同市への感謝が原動力だ。ビアンキさんたちを日本に繋げた国際交流プログラムは、1987年創設。海外に知日派を育成する為に、自治体で外国人青年を受け入れる制度で、2000年代は地方財政の悪化に伴い、受け入れを止める自治体が相次いだ。ところが近年、税収増に訪日外国人の誘致が欠かせなくなると、海外発信できる外国人材獲得の場として、自治体の注目を集めるようになった。今夏は参加者が10年ぶりに5000人を超えそうだ。政府も2019年までに、プログラム参加者を外国語指導助手だけで6400人以上に増やす目標を掲げる。プログラム終了後に、日本で就労を希望する参加者と企業のマッチングを支援する制度も拡充した。外国人材は、企業や大学が集中する東京に集中しがちで、国際交流事業は地方にとって優秀な外国人材と触れ合う貴重な機会だ。地元を知ってもらい、定着に導ければ、地域社会に新しい風を取り込める――。地方の期待は益々高まっている。 (下前俊輔・櫻井佑介・生田弦己)


⦿日本経済新聞 2017年7月21日付掲載⦿

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