【外国人材と拓く・手探りの現場】(04) 悩みは日本人と一緒です

20170727 04
入管難民法の改正で、9月から介護が在留資格に加わる。介護福祉士の資格を持つ外国人材が対象で、在留期間は最大5年。何度も更新できる。施設を利用する高齢者の補助から相談・助言まで、携わる知識と技術を身に付け、高齢化大国ニッポンに欠かせない“専門人材”と言える。中国出身の大学生である曽婷さん(21)は、法改正が決まると小躍りして喜んだ。「中国も高齢化が問題になり、介護施設ができていく。日本で学び、経験を生かしたい」。2014年に日本に留学し、介護福祉士資格を取得した。特別養護老人ホームで介護補助のアルバイトを続け、卒業後は施設で働こうとしている。厚生労働省の推計では、介護人材は2025年に1.5倍の253万人が必要で、38万人不足する。介護の在留資格を作るのは、受け皿として期待する外国人材の受け入れ促進策の意味合いが強い。資格取得は簡単ではない。養成施設で2年勉強し、5年後には日本語の筆記試験での合格も必要となる。

ベトナム、フィリピン、インドネシアとの経済連携協定(EPA)で受け入れた累計2740人の内、取得者は402人に過ぎない。今月4日、『東京福祉保育専門学校』の教室。約20人の留学生が、たどたどしい日本語で実習に励む。ミャンマー出身のキョージン・ウーさん(25)。母が学費を出してくれている。「早く資格を取って就職し、お金を送って楽な生活をさせてあげたい」と話す。念願の資格を取り、希望に満ちて現場に出ても、厳しい現実に直面する。四国の施設で働くフィリピン出身のロドルフォ・エスペロンさん(仮名・27)は、同僚の日本人が複数辞めた影響で仕事量が大幅に増えた。月給は20万円。家賃・電話代・食費に消え、貯金できない。「やり甲斐があり、長く働きたいが、辞めようと何回も思った」と漏らす。ベトナム出身の女性介護士(30)は、「悩みは日本人と同じだ。体力的に辛いし、給料を上げてほしい」。常勤の介護職員の離職率は16.8%。一般労働者全体の12.4%より高い。『日本介護福祉士会』は、介護福祉士の資格を持つ外国人材が「日本で働き続けることに問題はない」とする。働き易い環境整備で連携することがもっとあっていい。アジア各国も何れ高齢化が進む。国連の推計では、東南アジアで2015年に15歳以上人口の12人に1人だった65歳以上が、2040年は6人に1人。中国は3.6人に1人と、今の日本に並ぶ。母国で介護需要が高まれば、日本を選ぶ人を多く見込めるのか? 先ずは、日本で働く利点を明確にする必要がある。“介護先進国”の技術を丁寧に伝え、成長を実感できる職場にする。人手不足の穴埋め感覚で向き合えば、手痛い竹箆返しを受ける。

■ハンコ・稟議・保育園…ニッポンの生活、ここが大変
「ハンコって必要?」「入管の大行列にうんざり」「クレジットカードの審査が通らない」――。日本で働く外国人は、この5年間で6割近く増え、100万人を超えた。数こそ増えたものの、慣れない環境で苦労することは未だ多い。本音を探った。

①入管手続き・ビザの取得
●「入国管理局は朝から大行列。手続きもアナログ主流で大変」
●「親を呼び寄せると保育園の申し込みで減点になってしまう」
●「経営管理ビザの要件にあるオフィスの確保は、私には不要」
サウジアラビアから日本に来て10年目、今はフリマアプリの『メルカリ』(東京都港区)で働くアル・カティブ・アブドゥラさん(29)は、入国管理局(入管)の手続きに不満げだ。「東京の入管手続きは朝から並ぶので大変。サウジアラビアはインターネットで申請して、当局に行って書類を貰う形です。アプリもあります。日本の手続きはアナログが主流で、時間がかかり過ぎ」。外国人の在留資格申請を多く扱う行政書士の横山晋さんは、「確かに、東京の入管ではよく行列を見る。一般の在留資格の手続きの場合、書類が整っているかを確認してから番号札を貰う仕組みで、番号札を貰うところで行列ができる。そこから申請受理されるまで、書類の精査で更に時間がかかる。番号の数をみていると、1日300~500人は手続きに来ているようだ」と話す。日本の手続きについて、「オンラインで申請できれば、ある程度は効率化できると思う。窓口の事務作業も見直すことを検討したほうがよいのでは。今は、何も変更がない人でも並ばないといけない。手続きを簡略化できるケースもある」と横山さん。在留資格制度への注文も相次ぐ。台湾出身で人材サービスの『フォースバレーコンシェルジュ』(東京都千代田区)で働く彭仁暉さん(35)は、「永住権取得も視野に入れて、高度専門職の在留資格を取得した。全体的には良い制度だと思う。ただ、転職の時に申告・申請をやり直す必要があった。一定の条件で親を呼び寄せることができるが、そうすると、自分の子の保育園入園の申し込みをする際に減点になってしまう」と困惑気味だ。“クリエーター”といった先進的な仕事を日本で続ける難しさを感じているのはドイツ出身の映像作品クリエーター、ドメリチ・ベンジャミンさん(33)。日本の伝統文化や最新のストリート情景などを映像化する仕事を手がけ、これまでスポーツ用品メーカーや航空会社の宣伝プロジェクトに参加してきた。日本人と結婚し、本人は配偶者ビザで日本に滞在しているが「クリエーターの友人たちは今の仕事だけで日本に居続けるのは難しいと話している。写真や写真集、本とは違い、映像作品などの作品を成果物として提出するのはけっこう大変なので」
同じ映像作品クリエーターでフランス出身のバンジャマン・パロさん(36)は日本で会社をつくり、経営管理ビザを取得した。ただ「経営管理のビザの要件を満たすには、オフィスを確保する必要があり、見つけるのが難しかった。映像クリエーターは取材に飛び回るからオフィスなど要らないのに……」と話す。米国出身で茨城の地銀、常陽銀行の市場国際部で働くマイケル・コボウさん(27)は日本に10年在住していることで取れる永住権に不満を抱く。学生時代に日本で留学していたが、米国の大学を卒業するために帰国すると、在住期間がリセットされる。「永住権がないとお金も借りづらいし、家も建てられない。もう少し柔軟な制度にしてほしい」と漏らす。

②仕事の進め方・職場の習わし
●「ハンコ文化に戸惑った。何でも決済が必要なのね」
●「稟議(りんぎ)は誰もリスクを取らない仕組み?」
●「日本には『はい』と『いいえ』の間に『うーん』がある」
日本独特の仕事の習慣に戸惑う外国人も多い。神戸市で2015年から広報専門官を務める英国出身のルイーズ・デンディさん(27)はハンコ文化になかなか慣れない。「この仕事やっていいですか、だけではダメで、日本では何でもハンコを押す決済が必要なんですね」と話す。

 書類を回覧して承認を得る稟議(りんぎ)の習慣を不思議がるのはバングラデシュ出身のルーベル・エムディ・バウディンさん(31)。日本でアパレル商品などを扱う会社で働いた後、バングラディシュと日本をビジネスでつなぐ会社を立ち上げた。
「稟議はビジネスの安全性のためには良い制度だと思うけど、誰もリスクを取らない仕組みですね。なかなか新しいことができないし、新しい人材も育ちにくいのではないか。日本人はまじめで約束は守るし、うそをつかない。情報のブレがないという点がすごく評価できるけど、判断ができない、応えられないといったところがある、日本では『はい』と『いいえ』の間に『うーん』というのがあって、もっとはっきりしてほしいと思うときがある」

 働き方改革が進む日本でも、外国人の目にはまだまだ働き過ぎに映る場面もあるようだ。米国出身のパトリック・スーさん(26)は日本でエンジニアとして働く。「職場の人はみんないい人ですが、みんな忙しすぎます。終電で帰る人も多いみたいで、疲れ果てているのか職場で寝ている人もいて、大変だなと思います」

③日本語
●「日本語はピクチャーみたい。手書きは大変」
●「ハンタイとヘンタイは意味がぜんぜん違う」
●「動詞が重なると難しい。『受け取る』とか」


 海外の人から見ると、日本語は独特な言語のようだ。

 アフガニスタンから日本に来て3年目、エンジニアのシディキ・クワジャ・ナウィードさん(26)は「日本語はピクチャー(絵)みたい。仕事はパソコンで変換してくれるのでまだよいが、手書きは難しい」と話す。

 インドネシアから来て東京モード学園でメークを学ぶフェラ・セティアワティさんは「大変だったのは、病院で自分の様子をうまく医師に説明できなかったこと。伝えたいことははっきりしているのに、日本語でうまく表現できずに困った」そうだ。

 同学園でファッションデザインを学ぶスウェーデン出身のアレクサンドラ・クストバル・ラーションさんは、漢字が苦手。「意味を理解しながら書くのが難しい。敬語もスウェーデンにないので、たまに先生にタメ口で話してしまい『やっちゃった』と不安に思うことがある」。同じスウェーデン出身で、IT(情報技術)やデジタルコンテンツの専門学校HALで学ぶベリエフル・リーヌスさんは「日本語はスウェーデン語と比べて文法がシンプルだが、一文字かわると意味が変わってしまうのに苦労した。『はんたいです』と言いたかったのに『へんたいです』と言って恥ずかしい思いをした」と苦笑いする。HALでゲーム制作を学ぶ中国出身の何 融山(カ ユウサン)さんは「クレジットカードの申請をして却下された時、カード会社から申請が通らなかった旨の手紙が届いたが、言葉遣いが丁寧すぎて、申請が通ったのか通らなかったのかすぐに理解できなかった」という。

 「日本に来てしばらくは方言の存在を知らなかった」と振りかえるのは、和歌山県串本町の総務課で働くトルコ出身のアイシェギュル・アルカンさん。「初めて大阪を訪れたとき、おじいさんやおばあさん、店の人とかと日本語でしゃべりたくて話しかけたら、みんな大阪弁でしゃべっていて何も分からなかった。私は日本語を2年間も勉強していたのに何で? と落ち込んだ」。それでも、だんだん理解できるようになって大阪や大阪弁が好きになり、アルカンさんはその後、大阪大学に留学した。

 マレーシア出身でエンジニアのワファ・ビンティ・アル・アミンさん(25)は日本語のつながり方に戸惑っている。「例えば動詞が重なることば。『受ける』と『取る』で『受け取る』といった言葉を理解することが難しいです」
新潟県十日町市に20年以上住むドイツ人建築デザイナーのカール・ベンクスさん(74)は「日本語は漢字が難しくて、今でも新聞や本は読めない。日本建築関係の本や歴史書が読めればいいなあ、と思うことはあるけどね」と話す。「敬語も複雑で使い分けが大変だった。男性言葉、女性言葉も日本語独特の文化で最初は難しかった」。

④クレジットカードや銀行口座
●「クレジットカードを発行してもらうのに6年もかかった」
●「銀行で法人口座をの開設ができない。しかも理由は不明」
日本でクレジットカードをつくれずに、不便な思いをしている人もいる。

 IoT関連機器のネクストドライブ日本法人(東京・港)を今年設立した台湾出身の石聖弘さん(42)は「日本に来てまだクレジットカードがつくれない。出張やプライベートも含め、現金か台湾時代のカードを使うことになり非常に不便」と話す。

 神戸市役所で働くルイーズ・デンディさんの場合は「クレジットカードは来日6年目でやっと発行できた」という。

 外国人のビザ取得などを支援する行政書士の飯田哲也さんは「来日後にクレジットカードがつくれないという相談は何度か受けたことがある」と話す。なかには「来日して何年たってもつくれない」といったケースも。飯田さんは「申請が却下される際に明確な理由が示されないので、別のカード会社に何度も申請を繰り返し、『自分の何が悪いのか』と日本の制度に不信感を抱く人もいる」と指摘する。申請が通りにくいのは「信用情報が足りないからだろう」と推測するが、「外国人の場合のガイドラインがあれば望ましい」と話す。

 銀行口座の開設に不満を漏らすのはフランス出身の映像作品クリエーター、バンジャマン・パロさん。「法人口座をつくるのにも苦労した。個人口座は開けたが、法人口座は2つの銀行に断られた。電話口で『ダメでした』と言うだけで、理由は告げられないまま。銀行の担当者も仏語はおろか、英語すらできない人が多く、手続きが進まない。不便を感じる」

⑤日本の食事やお酒の習慣
●「タコが入っていないたこ焼きは好きですが…」
●「盛り上がった飲み会の翌日、なぜか職場はシーンとしている」


 日本の食事はどうだろう。和歌山県串本町で働くトルコ出身のアイシェギュル・アルカンさんは「海産物のエビ、イカ、タコなどは食感が苦手で食べられない。たこ焼きはタコなしなら好きですが…。普通の魚は好きで刺し身もOK。串本に来てから釣りも覚えた。初めてとったキビナゴは空揚げで食べたらとてもおいしかった」と話す。

 スウェーデン人出身のアレクサンドラ・クストバル・ラーションさんは、日本に来てベジタリアン向けのお店が少ないことに困っている。「東京で2店を知っているけど値段が高め。いつもお昼ご飯は同じ店で、卵を原料に使っていないチーズパンを買って食べている」そうだ。

 日本のお酒の習慣についても様々な声があった。

 インド出身で臨床検査機器大手のシスメックスで働くカナガラジ・ヴェリュタイ・ヴィマルさん(24)は「日本の会社の飲み会は面白い」と話す。「同僚と飲みに行くと、たまにビジネスでも大事な話になり、役に立つ。ただ、今は独身で時間があるからお付き合いできますが、家族ができたらどうしようと思っています」。

ミャンマー出身のエンジニア、アウン・セッ・ミャッ(28)さんは「上司にお酒をつぐのは日本の習慣だと思って楽しんでいる。日本人と仲良くなれるならいいと思ってお酒をついでいます」と、お酌の習慣を受け入れている様子。

 「飲み会は歓迎会、忘年会、新年会などいっぱいある。日本人って飲んだらめちゃ面白い」と話すのは和歌山県串本町で働くアイシェギュル・アルカンさん。ただ「びっくりしたのは飲んで次の日、何事もなかったかのような感じになっていて、『きのう、こんなんやった』とか大きな声で言ったら、みんながシーンとなった」。

⑥こんなことにも戸惑ってます
●「外国人はみんな日本語がしゃべれないと思っている」
●「日本で覚えた相づちをしたら、母国で不思議がられた」
常陽銀行で働くマイケル・コボウさんが戸惑うのは、「外国人だから日本語をしゃべれないだろうと先入観を持たれていること」だという。見た目だけで判断されることが多く、例えば「コンビニに入って弁当を買った時に、日本人の店員は『電子レンジで温めますか』とは聞かず、身ぶり手ぶりだけで対応してくることが多い」そうだ。

 フランス出身のエンジニア、ルック・ブランダンさん(28)は「背が高いので日本の電車は危険。気をつけて乗らないと頭をぶつけてしまう」と話す。長身の外国人の悩みもあるようだ。

 スウェーデン出身のアレクサンドラ・クストバル・ラーションさんは「日本人はスウェーデン人に比べて、よく相づちを打つ。今では自分も相づちを打って話すが、帰国すると母国の友人などに不思議がられる」という。 =おわり

               ◇

『外国人材と拓く』は次の取材班で担当しています。
四方弘志・清水泰雅・板津直快・友山宏済・鈴木輝良・野々下和彦・山本拓・佐藤理・覧具雄人・原真子・萩原始・中野圭介・斎藤一美・大久保潤・岩野孝祐・桜井祐介・新井重徳・川手伊織・大酒丈典・木寺もも子・山崎純・上間孝司・辻隆史・飯島圭太郎・白岩ひおな・石川雄輝・内海悠


⦿日本経済新聞 2017年7月22日付掲載⦿

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