【ビジネスとしての自衛隊】(10) 空母から無人機まで拡充する中国…アメリカ軍はサイバー戦を警戒

20170727 12
軍備拡張を続ける中国。2017年の国防予算は、前年実績比7%増の1兆443億元(約17兆円)で、初めて1兆元を超えた。中国は経済力に比例して兵器の近代化を進め、海空軍の行動範囲を拡大し、九州・沖縄・ボルネオ等を結ぶ第一列島線内外における優勢を獲得しようと試みている。また、戦略的縦深性(※最前線から本土までのゆとり)を確保するた為に、軍事力を用いて南シナ海を領海化しようとする。人民解放軍(中国軍)の実力はどれほどであろうか? 先ず、航空兵力を見てみよう。戦闘機の主力は、400機以上が配備されている『J-11』である。J-11は、ロシアからライセンス供与されたもので、航空自衛隊も運用している『F-15』と同様に、第4世代戦闘機(※1980年代以降に登場した運用中の戦闘機では最新タイプ)である。そして2015年、中国はロシア製最新戦闘機『Su-35』の購入契約を結んだ。第4.5世代戦闘機とされ、搭載電子機器の能力とステルス性を向上させた点に特長がある。長距離爆撃機も保有している。旧ソビエト連邦からライセンス供与された『H-6』は、その長大な航続距離と大きな搭載量を生かし、巡航ミサイル発射母機や対艦ミサイル発射母機等の派生型も生産されている。中国空軍の弱点は航空エンジンの開発である。特に、戦闘機に用いられる高出力エンジンは、中国は単独での開発に成功していない。現在、中国はステルス性を高めた『J-20』戦闘機を開発しており、2017年にも配備されると言われている。だが、試験飛行で異常な黒煙を吐いたり、エンジンが機体にフィットしていなかったりと、エンジン開発のトラブルが伝えられている。航空エンジン技術の低さは、空母艦載機である『J-15』戦闘機でも顕在化している。J-15は『J-10』に搭載されるエンジンを転用したが、十分な運動性能を得られず、正規輸入した『Su-27』や『Su-30MKK』等のエンジンを転用しているとの報道もある。

中国海軍の動向は、中国政府が考える海洋権益と密接に関係している。南シナ海から地中海に至る広大な地域に対する影響力拡大に、海軍のプレゼンス強化は不可欠であり、特に空母はその象徴になり得る。中国は、旧ソ連時代に建造された空母をウクライナから購入して自力で修復し、『遼寧』と命名して、2012年から訓練用に運用している。現在は少なくとも2隻の空母を建造中だ。その内、大連で建造中の1隻は、予想されていた海軍記念日(4月23日)ではなく、4月26日に進水した。この空母は遼寧に酷似しており、国防部は2015年12月の記者会見において、「2艦目となる空母の設計と建造は、遼寧の科学技術試験、及び訓練における有益な経験を吸収し、多くの部分で改善し、向上させた」と述べている。上海で建造中のもう1隻の空母は、形状が異なるようだ。空母では、艦載機の射出速度を上げる“カタパルト”という装置が重要だが、世界でも未だ珍しい電磁カタパルトを装備するという報道もある。空母を巡り、2つの技術系譜があるということは、空母建造技術が確立していないことを意味している。大連で旧ソ連の技術を基にした艦と、上海で欧米の技術を基にした艦を建造し、同時に運用して最終型を決定していく可能性がある。こうしたことは以前にも見られた。2000年代前半、大連で旧ソ連の3次元レーダー技術を利用した『051C型駆逐艦』、上海で“中国版イージス艦”と呼ばれる『052C型駆逐艦』を同時に建造したのだ。2つを同時に運用し、性能を確認してから、052Cを発展させた052Dに統合した。中国が空母を軸に海軍力を強化していることは注目に値するが、他方で、中国が空母を運用できるかについては、現時点では疑問符が付く。空母は単艦で運用する訳ではなく、水上艦艇や潜水艦、更には航空機等を組み合わせ、“空母打撃群”として運用するものだが、元々、中国軍は縦割りでの組織文化が強過ぎて、統一的・有機的な運用をしているとは言い難いからだ。艦載機についても、訓練が不足し、パイロットの養成に苦労しているようだ。それでも中国は、空母打撃群の中東等への展開を急ぐだろう。中国の空母は、アメリカ海軍と洋上決戦を行う目的で建造されている訳ではない。2015年の国防白書が述べるように、中国は、その対外的な経済活動に軍事的保護が必要だと考えており、それを保障するのが海軍なのである。中国軍は、無人航空機の開発にも力を入れている。今年1月、中国メディアは「サウジアラビアのメディアが、中国製無人機の空爆の画像を公開した」と誇らしげに報じた。『翼竜』という名称のこの無人機は、アメリカ製無人機『MQ-9リーパー』に酷似している。翼竜の性能はMQ-9に大きく劣る。航続距離こそ翼竜が上回るが、無人機にとって重要な航続時間では、翼竜が20時間なのに対し、MQ-9は30時間である。翼竜は既に、カザフスタン・パキスタン・アラブ首長国連邦(UAE)・サウジアラビア等が導入している。価格は1.1億円で、MQ-9の15分の1に過ぎず、途上国の軍隊にとってはそれが魅力的なのである。無人機の技術は欧米に比べて未だ低いが、新しいハイテク兵器に中国は貪欲だ。直接的な兵器ではないが、アメリカ軍が警戒しているのは、中国のサイバー攻撃や衛星破壊兵器である。現在、軍事攻撃の前に、社会を混乱させる目的でサイバー攻撃を仕掛けるハイブリッド戦が一般的になりつつあるが、中国のサイバー攻撃はそれとは目的が異なる。サイバー攻撃や衛星破壊は、中国のアメリカに対する一種の非対称戦である。中国は、「核兵器でも通常兵器でもアメリカに劣る」と認識している。その劣勢を埋めるのが目的なのだ。中国の狙いは、指揮通信情報ネットワークの破壊によるアメリカ軍の戦力低下である。これはアメリカにとって最も危惧すべき状況だ。中国は、自らの軍備増強も軍の活動も「防御的である」と言う。だが、アメリカにも周辺諸国の目にも防御的だとは映らないことが問題なのだ。 (『東京財団』研究員 小原凡司)


キャプチャ  2017年5月13日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 自衛隊/JSDF
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR