【東京情報】 デブ税のすすめ

【東京発】ニューヨークから東京に戻ってきたフランス人記者が、うんざりした顔で言う。「帰りの飛行機で酷い目にあった。隣の席に凄いデブの白人が乗ってきて、ずっと酒を飲んでいるんだ。機内食のお代わりまでしていたな。暑苦しいし、臭いし、結局、一睡もできなかった」。アメリカ人記者が笑う。「貴男だって十分デブじゃないの。少しは食事制限や運動をしたほうがいいわよ」。デブに厳しい作今である。インターネットの掲示板には、「公共交通機関ではデブは運賃を倍支払うべき」といった意見が寄せられ、一部で論争になっている。アルバイトの小暮君が言う。「僕はデブは嫌いではありません。女性お笑いトリオの森三中も、オペラ歌手の森久美子も、痩せていたら味わいがない。デブタレントは、デブというだけで心が休まるんです。ドイツでもデブは人気で、“デブ”というテレビ番組があったくらいです」。所謂“デブ税”というものがある。イギリスでは、糖分を多く含む飲料に、2018年から“砂糖税”が導入される。飲料メーカーと輸入業者に対し、100ミリリットルあたり5%以上の糖分を含む飲料に課税するとのこと。増加し続ける小児肥満症や糖尿病患者を減少させるのが狙いだ。イギリス財務省は、2018年度の税収を5億2000万ポンド(約767億円)と見込んでいる。インドでも“肥満税”導入の動きがある。検討グループはナレンドラ・モディ首相に対し、ジャンクフード等への課税を2017年度予算に組み込むよう提言。対象となるのは、コレステロールを増やす飽和脂肪酸や、糖分・塩分を多く含む飲食物だ。

小暮君が資料を配りながら言う。「ソーダ税、つまり砂糖が沢山入った炭酸飲料に税をかける試みが、今、広がっています。フランスやメキシコ、それにカリフォルニア州バークレー市も導入している。ハンガリーには“ポテトチップス税”があります。スナック菓子等の塩分や糖分が多い食品に税をかけるのです。なお、アラブ首長国連邦のドバイでは、1㎏痩せると金1gが貰えるそうですよ」。病気が減れば社会保障費の削減に繋がるし、税収が健康関連予算に使われるなら悪いことではない。デンマークは、飽和脂肪酸が多く含まれる乳製品・肉類・加工食品等に“脂肪税”をかけていたが、導入後1年ほどで廃止した。近隣国のドイツに国民が買い物に行くようになり、期待した効果が得られなかったからだという。しかし、島国の日本では、その心配はないだろう。フランス人記者が唸る。「世界保健機関が推奨する1日あたりの糖分摂取量は、砂糖に換算すると25gほどだ。約40gの砂糖が含まれる炭酸飲料なら、1本でアウトだな。俺は以前調べたことがあるが、砂糖に税をかけるのは中々難しい。政府は製糖メーカーの輸入原料に調整金を課し、国内のサトウキビ農家を保護している。ここに更に税金をかけようとすると、砂糖の業界団体が猛反発するんだ」。今でも鮮明に覚えているが、1966年に英国海外航空の飛行機が、富士山の2合目に墜落した。私は取材の為、車で富士山に向かったが、麓から先は入れなかったので、自衛隊のトラックの荷台に乗せてもらうことにした。幌を外すと、荷台には空の棺桶が積んであった。墜落現場には乗客の死体や荷物が散乱していた。自衛隊員は肉片を回収して棺桶の中に入れていたが、「これはどういうことだ? 3人分はあるぞ」という声が聞こえた。後の報道でわかったが、日本からイギリスに帰る団体観光客の中に凄いデブがいたのだ。海外旅行が珍しい時代だったので、ツアー参加者の集合写真が残っており、右端に写っている男を見て、「確かに棺桶も3人分必要だ」と思ったものだ。

フランス人記者が頷く。「俺は、飛行機に乗る際に体重を聞かれたことが2回ある。最初は、196年の旧正月にラオスのビェンチャンからルアンプラバンに向かった時だ。定員12名の古い小型飛行機で、乗客全員が乗り込んだ後、担架に横たわったお婆さんが担ぎ込まれてきた。『このお婆さんの重さも計算に入っているのだろうか?』と不安になったな。今の飛行機は、デブが2~3人乗ってきたところで飛ばなくなるということはないのだろうが。2回目は、1970年代にニューヨークの空港に行った時だ。どうやら、日本への直行便の初就航だったらしく、搭載可能な重量を調べているようだった。それまでは燃料補給の為にアラスカに寄っていたからな」。東京大学文学部の小暮君が豆知識を披露する。「日本には“恰幅がよい”という言葉があります。太っていることは、昔は財力と健康の印だったのです。“貫目が足りない”という言葉もありますね。高い地位に立つ者は、ある程度の貫録が必要だった。不治の病だった結核になるとガリガリに痩せます。だから、“デブは結核ではない”という証明にもなりました。長谷川町子の漫画であるサザエさんやエプロンおばさんでは、夏痩せした人が風呂屋で体重を量り、『また痩せた』と嘆く光景が描かれている。今は夏痩せという言葉自体、死語になりつつありますよね」。アメリカ人記者が同意する。「ロシアでも太っていることが財力の証明になったそうよ。だから昔は、少女がある程度の年齢になると、芋を食べさせて太らせたんだって。太っていることが嫁入り条件の1つだったのね」。小暮君が続ける。「僕は大学の授業で、昭和初期の芸能のレポートを書いたことがあるのですが、大女優の高峰秀子も恰幅がよくて人気があった。喜劇王の古川ロッパはグルメで知られており、パンパンに太っていたので女の子にモテた。しかし、晩年は病気になり、痩せてしまった。そこで、衣装の下に座布団を巻いていたそうです。今とは価値観が逆ですね」。フランス人記者が呟いた。「コーラやサイダーに重税をかけるのは構わない。コーラの値段が倍になろうが半額になろうが、どちらにせよ飲まない。それより、酒税を上げるのを止めてほしい」。そりゃそうだ。今回は珍しく、特派員仲間全員の意見が一致した。 (『S・P・I』特派員 ヤン・デンマン)


キャプチャ  2017年7月27日号掲載

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