消えゆくアベノミクス、試される日本のM&A――日本の買収攻勢は続くとみられるが、お粗末な買収の厳罰化が起こる

20170728 04
“アベノミクス”という言葉が、古着のしまい込まれた棚にある“クールブリタニア(格好いいイギリス)”や、“歴史の終わり”“BRICS”の仲間入りをするのに、然程時間はかからないだろう。こうした言葉たちが齎した概念は、嘗て胸躍るような時代精神の粋があったが、今では表で着られないほどすり切れてしまった洋服のようだ。“アベノミクス”――安倍晋三首相が推進する、今や息切れしている経済再生プログラムの総称は、当然の結果として、その運命を辿るのかもしれない。だが、少なくとも、日本企業の思考に決定的な変化と、外に目を向ける新世代のディールメーカーの創出を促した後で去ることになる。アベノミクスは、誕生から5年近く経つ。海外企業買収に3500億ドル以上注ぎ込んだ日本の記録的な買収攻勢も、同じくらい続く。「日本の対外M&Aが“意味を持つ”のは、これが初めてだ」と、『JPモルガン』のバンカーらは言う。調査会社『マージャーマーケット』によると、2017年上半期に145件を数えた日本の対外M&Aは、2015年に打ち立てられた過去最高記録にほんの数件届かないだけだ。M&A専門のバンカーは既に、「年内に保険・医薬品・化学業界で大型案件がある」と仄めかしている。海外企業買収は昨年、日本の全てのM&A活動の価値の7割を占めた。金額ベースで見ると、日本が2016年に纏めた対外M&A(※調査会社『ディールロジック』によると、約1000億ドル)は、1980年代全体、つまり日本が“世界を買う”ことで悪名を馳せた10年間の実績の3倍近くに上る。インフレはブームの一部しか説明できない。本当に変わったのは野心の大きさだ。「アベノミクスが歴史の彼方に消えたら、この祭りがあとどれくらい続くか定量化せよ」という圧力に曝され、アナリストらは最近、先を争うようにこの現象を分析している。そして、似たような結論に達した。「日本企業の経営幹部は、人口が減少し、国内の成長が鈍り、世界中で競争力と市場シェアが低下する」とみている訳だ。

多くの人は今、「買収こそが救いだ」と確信している。あらゆる兆候を見る限り、資金コストは低水準に留まる公算が大きい。世界の標的企業には事欠かず、エネルギー等の分野では、政府が積極的に対外M&Aを推進している。企業が買収の軍資金として現金を貯め込んでいる為、自社株買いは今年急減した。斯くして、猛烈な買収攻勢が続くとみられる。だが、「取締役会の思考の変化がずっと続くか?」とか、「新たなM&A取引の習慣が、対象企業の適合性や買い手の能力にどの程度勝るのか?」といった面が、アベノミクスの退潮によって大きく試されることになる。日米双方の研究によれば、国境を跨ぐM&Aは長期的に失敗しがちなことが知られており、日本企業の冒険心の無いサラリーマン本能は特に大きな脆弱性を齎す。ある試算によれば、日本企業は今年3月期に、思惑通りに運ばなかった買収案件で、合計180億ドル以上の評価損計上を発表した。ブームの間、疑わしいM&Aに対する罰は一貫して軽かった。長期化する日本の対外M&Aラッシュと、この買収攻勢を先導する企業の株価は、安倍氏の首相就任以降、東証株価指数(TOPIX)の価値を2倍に膨らませた強気相場によって、真剣な監視の目から守られてきた。だが、一部の市場ストラテジストに言わせると、“安倍プレミアム”は急激に消え去る可能性がある。表面上進んでいる改革は、世論調査での首相の高い支持率と共に、アベノミクスの物語にとって常に欠かせないものだった。今やどちらも霧消した。「投資家が若し、『市場の活気は持続不能な操作の産物だ』と判断したら、より大きな災いが現実になる」と言う人もいる。2013年初頭以降、『日本銀行』は12.6兆円相当の上場投資信託(ETF)を買い入れることで、国内株式市場を支えてきた。同じ期間の外国人投資家による購入は13.8兆円だったが、日銀は9月末までに外国人の買いを抜く見込みで、アベノミクスの空想に致命的な打撃を与える可能性がある。『東京証券取引所』を傘下に持つ『日本取引所グループ』の清田瞭グループCEOは今月、「日銀が買い入れを継続したら“恒常的な歪み”が生じる」と警告した。猛烈な調整が生じた場合には、過去5年間の経験により、日本がM&Aに精力的だったのと同じくらい、M&Aに巧みになったかどうかに鋭い目が向けられるだろう。お粗末な買収への罰は厳しくなる。「1985年から2001年にかけて行われた日本企業のM&Aの内、成功したのは8%だけだ」と結論付けた同志社大学・松本茂准教授の著作は、役員室で必ず見かける本になった。『日本電産』のCEOで、著名なディールメーカーの永守重信氏は、大まかに「日本企業の買収の2%しか成功しない」とみる。その推測は重く立ちはだかる。日本の買い手企業にとって、高値掴み・シナジー(相乗効果)の欠如・ガバナンス(統治)の失敗が、最も一般的な落とし穴だ。アベノミクスに触発された3500億ドルの買収攻勢は、多くの企業がこうした穴に落ちるリスクを高めている。 (Leo Lewis)


⦿フィナンシャルタイムズ 2017年7月26日付掲載⦿
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