【霞が関2017夏】(08) 内閣府、育たぬ官庁エコノミスト

『加計学園』問題等で何かと話題の内閣府。国家戦略特区や規制改革が注目されるが、その源流の1つは、長期的な日本経済の分析を担っていた旧経済企画庁だ。国内総生産(GDP)等の統計データを集計し、分析結果を政府の経済政策の決定に生かしてきた。だが近頃、その屋台骨に異変が起きている。内閣府で経済分析を担当する職員は、“官庁エコノミスト”と呼ばれる。外務大臣を務めた大来佐武郎氏や、政府税制調査会会長を務めた香西泰氏等、多くの人材を輩出してきた。しかし、最近の内閣府の官庁エコノミストは、「日銀と比べると人材不足が目立つ」(民間エコノミスト)という。内閣府が人材不足に陥っている原因の1つとして、関係者が指摘するのが、海外の大学院へ留学する職員が少ないことだ。財務省は毎年20人前後の総合職が入省し、「殆どが海外の大学院に留学する」(財務省)。経済産業省も、年40人前後の入省者(総合職)の内、半数以上が海外の大学院で修士号を取得する。経済分析で内閣府と比較されることの多い『日本銀行』は留学者数を公開していないが、40人前後の入行者(総合職)のう内、「半数以上が海外の大学院で修士号を取得する他、博士号を取る人もいる」(日銀関係者)という。一方で、内閣府には毎年十数人が総合職で採用されるが、海外の大学院に留学したのは、直近10年の平均で4.4人に留まる。内閣府の景気動向指数研究会の座長を務める立正大学の吉川洋教授は、2012年に行われた内閣府幹部との『内閣府“官庁エコノミスト”への期待』と題された対談で、「官庁エコノミストは、内閣府に入ってからも大学院レベルの経済学を勉強してほしい」と話していた。だが、足元の2015年度で留学したのは2人、2016年度も僅か3人だ。その全員が、経済学等経済分析に関わる分野を専攻する訳ではない。勿論、新卒採用時にも修士号保持者を採用しているが、学部卒も含めて「官庁エコノミスト採用なんて年に1人か2人」(旧経済企画庁出身の内閣府幹部)。財務・経産省や日銀と比べると、大学院で学んだ経験のある職員が不足している可能性がある。

「次は経済分析とは関係ない部署かもしれない」――。経済分析を担当する部署の中堅職員は漏らす。内閣府は2001年の省庁再編で、旧経済企画庁・旧総理府・旧沖縄開発庁等が統合してできた。内閣府になったことで扱う分野は広がり、子育て・防災・青少年の非行防止等、様々なテーマを取り扱う。携わることができる仕事の幅が広がった半面、官庁エコノミストを志望する内閣府の職員にとっては、キャリアパスが描き難くなっている。経済企画庁OBで、『日本経済研究センター』研究顧問の小峰隆夫氏は、「経済企画庁から、経済以外の分野が多い内閣府になったことで、大学で学んだ経済学を生かしたい人は、財務省や経済産業省を志望するようになった」と見る。ある経済官庁の若手職員は、「内閣府に入ることも少し考えた」とした上で、「制度を変えて国を良くしたいなら、現場のある他省に行く。経済分析をしたいなら、政治の横槍の無い大学や、待遇が良くて知名度もある日銀のほうが魅力的」と話す。別の若手職員も、「内閣府は全体の方針を作れるのが魅力だが、権限が小さい。各論になると結局は他の省庁」と話す。霞が関では、今月5日から“官庁訪問”が始まった。総合職試験の合格者が各省庁を訪れ、面接を受ける。19日まで10日間(※土日祝を除く)の長丁場だ。最高気温が30℃を超える暑い最中、将来の官僚たちが熱い志を抱き、門を叩く。今年度の総合職試験の申込者数は、前年度比6%減の2万591人で、2万人を割り込んだ1970年度以来、47年ぶりの低水準だった。新規採用者の3割以上を女性にする目標が課されていることもあり、省庁間で優秀な人材の争奪戦は激しさを増している。自分の分析が政府の経済政策や予算編成に生かされるのが、日銀や民間エコノミストには無い官庁エコノミストの魅力だろう。内閣府自身が官庁エコノミストに必要な能力を考え、キャリアパスを整えることが、職員の能力向上や、他省庁・日銀・民間シンクタンクとの人材獲得競争に勝つ為に欠かせない。研修の充実や人事制度の改革が、官庁エコノミストの復権へのカギになりそうだ。 (吉田悟巳)


⦿日本経済新聞電子版 2017年7月11日付掲載⦿
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