【不養生のススメ】(04) 小さくなっていく日本人

20170728 14
最近、気がかりなことがある。それは、日本人が小さくなっていくことだ。昨年7月の科学雑誌『eLife』に、『インペリアルカレッジロンドン』等の約800人もの研究者らが、『世界保健機関(WHO)』と共同で“過去100年間における世界200ヵ国の人々の身長の変化”について報告した。研究者らは、1896年から1996年の間に生まれた対象者が18歳以上になった時、つまり1914年から2014年の身長データを解析した。結果、日本人男性の平均身長は、1896年生まれの156.2㎝(※世界ランキング187位)が、1996年生まれは170.8㎝(※同102位)。女性の平均身長は、1896年生まれの142.3㎝(※同195位)が、1996年生まれは158.3㎝(※同112位)になった。これまでの研究で、身長が高い人は一般的に心臓病や脳卒中を患う可能性が低く、長生きする傾向が報告されている。戦後の経済成長と共に、日本人の栄養状態が著しく改善し、平均身長や寿命が延びた。ところが、日本人の平均身長は、1960年代初期に生まれた世代で頭打ちになった。栄養状態が改善されて、遺伝的な潜在能力の上限に達した可能性がある。但し、気がかりなのは、男性は1979年、女性は1977年に生まれた世代をピークに、毎年平均身長が少しずつ小さくなっていることだ(※左グラフ)。肥満に比べて、身長の低下はそれほど注目を浴びないが、この傾向は深刻に受け止めるべきだと思う。厚生労働省は、子供の栄養素の偏り、朝食の欠食やダイエット等の問題に注意を呼びかけているが、大人の歪んだ“痩せ願望”や、それに伴うバランスの悪い“○○制限食信仰”を改善しない限り、子供の健全育成の実現は無理だ。

抑々、痩せる為に頑張らなくても、私たちの体の殆どの部分は、加齢と共に驚くほど自然に萎縮していく。無理なダイエットをすれば、当然、体の病的な萎縮を促し、老化が進む。例えば身長。誰もが加齢に伴い、身長は低下する。1999年の『アメリカ国立老化研究所』の研究者らの報告によると、男女とも30歳頃から身長の低下が始まり、その速度は加齢に伴って高まり、特に70歳以降に加速した。具体的には、男性だと30~70歳までの間に平均3㎝、80歳までには平均5㎝、身長が縮んだ。女性は30~70歳までの間に平均5㎝、80歳までには平均8㎝と、より大きく減少した。特に急速に身長が低下する人は、骨粗鬆症のリスクが高まり、骨折、高齢者の寝たきりの原因になる。『公益財団法人 骨粗鬆症財団』によると、日本の総人口の10%弱、即ち約1100万人が骨粗鬆症で、予備軍まで含めると2000万人に達すると言われている。因みに、『ロチェスター大学医療センター』の報告では、顔の骨も加齢に伴い縮小し、周りの筋肉や皮膚が皺となり、老け顔になる。更に、南カリフォルニア大学と北京大学等の研究者らの大規模追跡調査では、身長の低下と認知機能の低下に強い関係が認められた。より多く身長が縮んだ人ほど、短期記憶・基本的な計算・日付の認識等の標準的な認知機能のテスト成績が大きく低下した。次に筋肉。サルコペニアとは、加齢に伴い筋肉が減少していくこと。「筋肉組織の量と質の低下は40代より前に始まる」とも言われ、そして徐々に減少していく。以前の研究報告では、40歳以降、一般的には10年代毎に、8%以上の筋肉量を失い、更に70歳以降に加速するということだった。筋肉が減ると、体を動かしたり支えたりする機能が衰えて自立性を失う。また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者は、サルコペニアが肥満に関係なく、筋肉量が少ないことが、糖尿病の発症の早期予測因子であることを示した。更に、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らによると、老化に伴い心臓の筋肉も縮小し、血液を送り出すポンプとしての機能が低下するという。そして脳。脳の重さは出生時に約400gで、青年期までに約1.2~1.4㎏まで大きくなるが、20歳を超えると発育が止まり、少しずつ小さくなる。特に脳の重さは、40歳以降、10年毎に約5%の割合で減少し、70歳を超えると加速する可能性が広く知られている。特にアルツハイマー型認知症では、脳が早く萎縮していく。他にも、生殖器や膀胱の容量等も、加齢と共に萎縮していく。つまり、生活の質の高い自立した人生を送る為には、痩せるより痩せないように努力することのほうがよっぽど重要だ。

20170728 17
ところで先日、『国立がん研究センター』のチームが、「欧米型の食事パターンで全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡が低下する」ことを、科学雑誌『PLoS One』に報告した。欧米型は不健康なイメージがある為、意外な結果に日本のメディアで話題になったが、私は理に適った結果だと思う。例えば、『アメリカ人のための食生活指針』は、1日2000calを摂取する人に肉類や卵を約105g摂取すること、飽和脂肪酸から摂取するカロリーは、総カロリー摂取量の10%以下に抑えることを推奨している。同誌の報告によると、欧米型の食事パターンのグループは、1日平均1997calの摂取で、その内、肉類や卵の1日の摂取量は102g、飽和脂肪酸は8.7%だ。つまり、欧米式の食事を取っている日本人は、アメリカでよく問題になる肉類の過剰な摂取等ではなく、アメリカのガイドラインの基準にちゃんと収まっているのだ。残念ながら、この報告にはアメリカ人の肥満の原因である糖分の摂取量が記載されていなかったが、どのグループも平均のボディマス指数(BMI)は標準の範囲内だった。そんな欧米型の食事パターンの日本人が長寿などということは、最早驚くには値しないのだ。昨年4月、スタンフォード大学の研究者らの『アメリカ医師会雑誌』の報告によると、アメリカ所得トップ1%の平均寿命は、男性87.3歳、女性88.9歳だ。アメリカ人は太って不健康なイメージがあるかもしれないが、裕福な人たちはバランスのいい食事をしっかり取って、体の機能を維持し、自立した生活を楽しんでいる。日本人も、そろそろ痩せ信仰は止めて、もっとしっかり食べるべきだ。


大西睦子(おおにし・むつこ) 内科医師・医学博士。1970年、愛知県生まれ。東京女子医科大学卒業後、同大学血液内科入局。『国立がんセンター』・東京大学医学部附属病院を経て、2007年に『ダナ・ファーバー癌研究所』留学。2008~2013年にハーバード大学で肥満や老化に関する研究に従事。現在はマサチューセッツ州ケンブリッジ在住。著書に『カロリーゼロにだまされるな 本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)・『健康でいたければ“それ”は食べるな ハーバード大学で研究した医師の警告』(朝日新聞出版)等。


キャプチャ  2017年7月号掲載

スポンサーサイト

テーマ : 医療・病気・治療
ジャンル : 心と身体

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR