【特別対談】 小池百合子、偽りの都民ファースト――片山善博(前鳥取県知事)×郷原信郎(弁護士)

都政の改革者か、将又破壊者か――。地方自治に精通した前鳥取県知事と、コンプライアンス問題に詳しい元検事が、小池都政の“偽り”を喝破する。

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郷原「小池百合子さんが東京都知事に就任してから、早いもので9ヵ月余りが経過しました。彼女は“東京大改革”を旗印に一大旋風を巻き起こし、新聞各紙の世論調査でも、未だに7割を超える非常に高い支持率をキープしています。その一方で、“豊洲移転”問題を始めとする数々の難題に直面しているのも事実です。これまでの小池都政について、片山先生はどのように評価されていますか?」
片山「昨年7月の東京都知事選で小池百合子知事が打ち出した公約や、その後の言動から察するに、知事の掲げる東京大改革の要諦は、情報公開の徹底にあるのだと思います。確かに、“のり弁”と呼ばれた黒塗りばかりの資料に象徴される都議会を含めた都政の非公開体質、また根回し・談合体質にメスを入れた点については評価すべきでしょう。振り返れば、都政の混迷は鈴木俊一元知事時代の末期から続いてきました。知事がリーダーシップを発揮できず、都の職員と都議会自民党等との癒着の構造が生まれ、“ドン”と呼ばれる存在まで現れた。そうした構造が石原(慎太郎元知事)さんの時代に強化され、猪瀬(直樹)・舛添(要一)の両都政でも基本的に変わることはなかった。つまり、意思決定のプロセスが不明瞭な、情報公開という点では極めて劣悪な環境にあった訳です。その意味で、小池知事が改革に乗り出したことの意義は、決して小さくありません」
郷原「私も、小池知事が誕生した時には、かなり期待を込めて見ていました。『これまでの都知事とは違って、都議会との柵が無く、圧倒的な支持率を誇る彼女であれば、東京都という巨大自治体の官僚体質にも斬り込んでくれる筈だ』と。小池知事の強みの1つとして、コンプライアンスを武器にしていることが挙げられますが、これは私自身が活動する際のテーマでもある。しかも、彼女は単に法令遵守を唱えるだけではなく、社会の要請に柔軟に応え、都民の利益を重視するスタンスを前面に押し出してきました。コンプライアンス的なフレーズを巧みに使い、その方向性も基本的には正しいので、中々正面から批判し難い訳です」
片山「ただ、ここに来て私が危惧の念を抱いているのは、『小池知事がコンプライアンス・説明責任・情報公開の徹底という基本路線から、自分自身は除外しているのではないか?』という懸念です」
郷原「仰る通りだと思います。実際に、都政を任されてからの小池知事の活動を見る限り、そこに確固たるポリシーがあるようには思えません。寧ろ、“都民ファースト”という言葉を背景にして、融通無碍な、謂わばやりたい放題の状態になっている。内実が伴わないまま、イメージ先行で物事を進めていくことで、都政に悪影響を及ぼしつつあります。その結果、泥沼状態に陥っているのが、築地市場の豊洲移転問題です」

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片山「豊洲移転の問題で最も重要なのは、食品を扱う市場として安全性が確保できるかどうかだと思います。地下水調査で環境基準の79倍、その後に100倍のべンゼンが検出された。そこで都知事や都庁がなすべきは、こうした調査結果が、豊洲新市場で事業を始める上で致命的な問題かどうかを点検することに尽きます。若し、汚染の度合いが致命的なのであれば、移転は直ぐさま中止したほうがいい。しかし、この程度であれば克服が可能で、残された課題が市場関係者や消費者の不信感や不安であるならば、それを解消する為に最善の努力をすべきでしょう。にも拘わらず、知事はどっちつかずの態度に終始しています。『豊洲移転は白紙撤回しかない』とも言わなければ、『安全性を確保して粛々と移転を進める』とも明言しません」
郷原「昨年8月末に移転延期の方針を打ち出した小池知事は、その後、『“盛り土”問題が専門家会議によってオーソライズ(了承)されていないから、移転についても考え直す必要がある』という趣旨の発言をしました。ただ、専門家会議は都議会や審議会と違って、条例上の根拠は何も無い組織です。法的な根拠が無いものを持ち出して移転を延期するのは、コンプライアンスという意味では明らかに間違っています。加えて、79倍のべンゼンが発覚した際、小池知事が“安全性確保のオーソライズを行う機関”と位置付けた専門家会議の平田健正座長は、『地上と地下は明確に分けて評価をして頂きたい』『地上に関しては大きな問題は無い』と述べました。要は、豊洲新市場の安全性を考える上で、地下水の数値を過大視すべきではないという訳です。しかし、この発言に対して小池知事は、『ご専門の立場から、そのように仰ったのだと理解しています。一方で、私は一般消費者の1人だと思っておりまして、地下と地上と分けるということを理解するのは、中々難しいものがあるかなとも思う訳です』と発言し、専門家会議の見解を無視してみせた。これは、『二重の意味で論理矛盾を来している』と言わざるを得ません」

片山「若し致命的な問題でないのなら、都民に対して安心感を醸成していくのが自治体トップの務めだろうと思いますよ。例えば、『現時点でも地上部分には汚染の影響はありませんし、地下水も何年後かには基準値に収まるでしょう』等と」
郷原「そうでなければおかしいですよね。小池知事の発言を聞いていると、『自分も都民たる女性であり、その代表なのだ』という認識なんです。『自分が安心だと言えば、都民も安心だと判断する。その決定権は自分が握っているのだ』ということでしょう。“安全”と違って“安心”には明確な根拠も無いので、全ては彼女の胸三寸で決まってしまう。本来は提示すべき移転を決める為の判断基準や、スケジュールも一切示されない。13兆円もの予算を預かる巨大都市の首長として、これでは話になりません。政治家が用いる“安心”という言葉は、“安心してもらう”為の努力を指します。丁寧に説明して、住民の不安を払拭する姿勢こそが大事なのです。そうした発想が欠けているせいで、移転問題は宙に浮いてしまった。こんな状態で最終的な判断を下せるのか、甚だ疑問です」
片山「失礼ながら、小池知事の手法だと、移転問題に道筋を付けるのは難しいと思います。というのも、知事はこれまで、例の“ドン”や石原さん等、次々と敵を生み出しては、エンターテインメントのように世論を盛り上げて、圧倒的な支持率を背景に圧伏してきました。ところが、移転問題ばかりはそうはいかない。どっちに決めても都民の半数近くは納得しないからです。そういう時に、小池知事のようなタイプの政治家は戸惑うことになる」
郷原「どっちに転んでも、小池知事はノーダメージではいられませんからね。それこそ、盛り土問題が公表されて大騒ぎになった頃は、恐らく都民の8~9割ほどが『豊洲移転なんてとんでもない』と考えていた筈です。言うなれば、小池知事一流の手法に乗せられていた。ところが、冷静に考えると、建物の下に盛り土をしなくても汚染対策としては問題がないのです。とはいえ、当時の狂騒状態の中で、その点をブログで指摘するのは、私でもかなり勇気がいりました。しかし、状況は変わりつつあります。新聞各社の世論調査でも、豊洲移転を支持する層が半数を占めます。その意味で、彼女が正念場を迎えているのは間違いありません。また、対立軸を作ることで存在感を高める小池知事の手法は、大阪市の橋下徹前市長と比べられますが、個人的には彼女のほうが更に危険な面を持ち合わせていると感じます。橋下さんは弁護士出身なので、法令を議論のべースにしてきました。しかし、小池知事は“透明性”や“安心”という法令の枠を超えた理屈を持ち出すので、容易に暴走してしまう」

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片山「勿論、小池知事の“石原叩き”にも的を射た部分はある。ただ、『過去の責任者を攻撃すれば自分の価値が上がる』という手法は、もう止めたほうがいい。自治体の長には2つの面があります。先ずは、有権者の代表として都庁や県庁といった組織に民意を注入する、謂わば住民代表としての性格です。それと同時に、自治体の長は組織のトップでもあります。株式会社で言えば社長です。つまり、住民代表として民意を政策に反映させつつ、社長としては企業の価値を高め、持続可能な組織を作らなければなりません。両面のバランスを取る必要がある。小池さんを見ていると、上手くいっているかどうかは別にして、間違いなく前者に力点を置いています。ただ、あまりにも組織のトップとしての自覚に欠けている。一般企業では、先代社長や元幹部の不手際が発覚した際、それを批判するだけで現社長としての責任を果たしたとは言えません。上場廃止の瀬戸際に立たされている東芝の現社長が、先代・先々代のトップを叩いたところで、何も問題は解決しない。やはり、現社長も苦渋に満ちた顔で会見に臨み、先代までの負債を背負ってどうにか乗り切ろうとする姿勢を示さないと、株主も納得しないでしょう。小地知事には、そうした自覚があまり無さそうです」
郷原「私もその点が問題だと考えます。同じ組織である以上、前任者から引き継いだ部分については、現職にも一定の責任がある。ところが、選挙で当選して首長になると、然も革命を起こして、自分が新たな組織を作ったかのように勘違いする人間もいる」

片山「実際の企業経営に喩えると、先代までの経営陣が6000億円もの巨額の資金を投したプロジェクトに、不明朗な会計やミスが発覚した訳です。とはいえ、問題はありながらも、既に主要な施設は完成している。当然ながら、企業価値を下げることは、株主の手前、許されない。その段階で経営を引き継いだ社長は、どんな態度を取るべきなのか? どうにか欠陥を是正して、6000億円の投資を今後の社業に活かすことで、企業価値を高めていくのが正常な判断だと思います。それなのに、『これは前任の“石原社長”の責任だから、私は知らないわよ』と。『計画自体を止めましょう』となったら、経営基盤に大穴が開くのは目に見えている。株主に対しても言い訳が立ちません」
郷原「首長が変わったからといって、過去の契約関係を全てチャラにできる訳ではありません。無論、相手側からすれば、『契約したのは同じ都庁という組織であり、その責任は継続する』と考えていますからね。移転延期を発表した会見で小池知事は、過去の不手際や情報公開が不十分だったことについて、只の一度も『お詫びします』とは言いませんでした。それが組織としての一体性・継続性を否定してしまうことに気付いていない。それどころか、『自分が過去の悪しき責任者を成敗してやる』といったスタンスを貫いている。未だにその勘違いを引き摺っていることこそが根本的な問題だと思います。小池知事は、豊洲移転を延期した理由について、安全性への懸念、不透明な費用の増大、そして情報公開の不足を挙げました。ただ、片山先生も仰ったように、真に延期の理由となるのは安全性の問題しかない。情報公開が不足しているのなら、改めて透明化を徹底して、不安を払拭するべきなのです。ところが、安全性以外の理由にならない理由を持ち出して延期を決断したことで、完全に引っ込みがつかなくなってしまった」
片山「移転延期については、他にも首を傾げざるを得ない点があります。抑々、民主政治で重要なのは、できる限り民意に沿った結論を導き出すこと、そして、結論に至るまでのプロセスに正当性があることの2点です。『結果さえ良ければ経緯など無視してもよい』とは決してならない。小池知事はよく『総合的に判断します』と口にしますが、その“総合的”なプロセスの正当性こそが大事なのです。豊洲移転を巡っては、昨年3月に東京都中央卸売市場条例が改正され、築地市場を廃止して豊洲新市場に移ることが決められました。条例で移転することが決まっているのに、それを知事の一声で延期するのは、実は独断専行に他なりません。延期するにしても、ルールに則って、先ずは都議会に差し戻して、例えば条例の改正案を出さなければいけないのです。都議会で改めて議論して、『新しい知事の言うことは一理ある』となって初めて、延期の判断が下せる。これが正当な手続きです。また、東京都の卸売市場審議会では、利害関係者も含めて議論を尽くし、“移転”という結論に至った。しかし小池知事は、この審議会にも延期について諮っていません。審議会の議論を経て、議会の承認を仰ぐのが、民主政治における都知事の踏むべき手続きなのです。その点を小池知事は無視している。寧ろ、絶大な人気を最大限に利用し、手続きを等閑にしたまま問題解決を図ろうとしてきた。そういう面で、民主主義の正当性をかなり欠いていると思いますね」
郷原「全くその通りだと思います」

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片山「勿論、支持率を背景に官僚主義を打破することが一概に悪いとは言いません。けれど、人気を使って解決してよい課題と、それでは許されない課題があるのです。豊洲移転問題等は、後者の代表的な例でしょう。この移転の是非を住民投票で決めたらどうかといった議論も浮上しましたが、私に言わせれば『何をバカげたことを言っているのか!』という感覚ですよ。『賛成多数なので移転する』となっても、安全性の確認が取れなければ根本的な解決には繋がりません。また、『反対が多いので白紙に戻す』としても、6000億円をドブに捨てる責任は誰が取るのか? 7月に迫った都議会議員選挙の争点にするという発想も、都民に責任を転嫁するという意味では大差ありません。やはり、科学的な知見に基づいて判断し、どのように財政の見通しを整えるかを議論するといった、着実な手順を踏む以外に解決の道は無いのです」
郷原「しかも、豊洲移転は既に東京都が方針を決めた上で、巨費を投じている訳です。若し、移転を見直すとすれば、その決定の際に想定していなかった安全性の問題が明らかになった場合です。そこに民意を持ち出すのは見当違いも甚だしい。移転延期決定と都議会との関係というような問題には、東京都の官僚がきちんとした判断を下せる筈なのに、知事の出鱈目ぶりを抑えられていません。ある意味での忖度というか、下手に口を出せない状況になっているように映ります。知事と都職員が分断されているのではないでしょうか」

片山「尤もなご指摘です。それに加えて、都議会もだらしないと思いますね。石原さんや浜渦武生元副知事を悪役に仕立てて捕物帳を演じていますが、最終的に豊洲移転を決めたのは都議会自身なのです。勿論、彼らも内心忸怩たるものがあるとは思いますよ。当時、都議会は真面な審議をしていなかった訳ですから。豊洲の土地を購入する際、せめて先日の百条委員会のように、東京ガスの幹部を呼んで確認しておけばよかった。そうした後ろめたさがあるのか、都議会は小池知事に正論を言えない。百条委員会もお粗末な内容でした。浜渦さんに同情する訳ではないけれど、都議会は彼が本当は部下から報告を受けていた等という理由で“偽証”だと言っている。噴飯ものです」
郷原「今、糾弾されているのは、浜渦さんが当時の副知事として当然、受けているべき報告を問題にしているのか、それとも交渉の延長線上で深く関わっていたことなのか、その点すらはっきりしていません。それなのに、『報告を受けていない』という抽象的な発言だけを捉えて、『偽証だ!』と騒いでいる。都議会の品格が問われる事態だと感じています」
片山「児戯に等しいと思いますね。都議会はそれ以前に、自分たちが安易に議案に賛成したことの検証をすべきです」
郷原「首長と議会の関係は、全面支持で無条件承認でも、全面対立で全てを否決するのでもなく、健全な関係で抑制機能が働いていないといけない。でも、大抵はどちらかに偏りがちです」
片山「そうなんです。是々非々で議論しないといけないのに、もう0か1かのデジタル的になってしまう。しかも、小池知事は石原さんを批判しつつ、一方では同じように都議会を自分の支配下に置こうとしています。どうやら二元代表制の原理を理解していない。“都民ファーストの会”を立ち上げて、まるで我が事のように都議会議員選挙に臨もうとしている。最終的には都議会を意のままに操れるようにして、自分の出した議案を批判されることなく無傷で通そうとするのでしょう。それは、癒着体質に根差した不透明な都政の温床にもなります。小池さんは、これまでのそうした都政を批判していた筈なのに。手法は違えども、結局は石原さんたちと同じことをしようとしているのではないか。『東京大改革を成し遂げるには、都民ファーストの会が都議会で過半数を占めなければならない』というすり替えの論法が透けて見えるようになってから、小池さんが何を目的にしているのかよくわからなくなりました」

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郷原「世論の期待感を意識している面も大きいと思います。安倍政権に権力が一極集中している状況下ですから、それに対抗する政治勢力を欲する人々は少なくない。ところが、野党第一党の民進党はあの体たらくです。そんな時、一気に小池知事の人気に火が点いた。彼女に新たな政治勢力としての期待が寄せられているのは間違いありません。マスコミも同じように考えているから、豊洲移転問題にしても正面切って小池知事を批判しようとはしない」
片山「確かに、小池知事はメディアを使った自分の見せ方がとても巧い。ただ、当のメディアも冷静さを欠いていると感じます。小池知事が『都議選に全力を尽くす』と発言した時に、『それは知事がやるべき仕事しゃないでしょう?』という視点が抜けている。都政を4年間託されているのだから、知事としての仕事に専念するのが当然です。それなのに、各紙の政治部主導による政局を軸にしたような報道が大勢を占めている。都政そのものに対する適正な評価がなされていないのです。若し、都民ファーストの会を国政に進出させようとしたり、ご自身が国政に舞い戻ったりすることを狙っているのであれば、都知事なんかさっさと辞めるべきです。只でさえ、都政は他の自治体に倍して課題が山積していますし、知事がフルタイムで専念しても未だ時間が足らない筈です。都政以外に色目を使うようでは、都知事としての務めがどうしても片手間仕事になってしまう。自治体の首長が国政政党を率いると、国政の立場と自治体の立場との間でミッションが混乱します。利益相反を起こすことだってある。知事が二足の草鞋を履くのは絶対に止めたほうがいい」

郷原「しかも、都議選での勝利を待つまでもなく、小池知事は都政で絶大な権力を手中にしています。豊洲移転の延期にしても、都の職員すら何も口出しできない。現在の圧倒的な支持率からすれば、議会も口を閉ざす他ありません。誤解を恐れずに言うならば、北朝鮮のような状態だと思います。物事を小池知事と彼女の顧問団だけで決めることができる。ちょっと恐ろしい話ですよ」
片山「私も不健全だと思いますね。外部の人で構成するプロジェクトチームの力を借りる発想は否定しませんが、小池さんが知事に就いてからもう9ヵ月が経過している。いつまでも外部に頼らなきゃいけないというのは、未だに都庁内部を掌握できていないということだと思います。外部から連れてきたブレーンばかりが幅を利かして、内部に不協和音が生じているようにも見えます。都の職員から聞いたのですが、プロジェクトチームは職員から“トッコウ”という隠語で呼ばれているそうです。どんな意味かと尋ねたら、戦前の特別高等警察(特高)のことだと。本当のところはよくわかりませんが、都庁の職員は彼らが恐ろしくて物も言えないということのようです。つい先日、市場問題プロジェクトチームの小島敏郎座長が、市場関係者を前に“築地再整備案”を発表しましたが、あれもどうかと思います。プロジェクトチームは知事の私的諮問機関のような存在でしょう。どんな権限に基づいて発言されているのかわかりませんが、『築地市場の改修を成功させる条件は、築地の人々が“築地で営業を続けたい”という気持ちをどれだけ強く持っているかだ』等とぶち上げた。市場関係者でなくとも首を傾げますよ。どうも、都政のガバナンスが利いていないのではないか? 私的諮問機関が前面に出て政治をやってはいけません」
郷原「韓国の朴槿恵前大統領は、お友だちを重用して職権を歪め、逮捕されてしまった。お友だちの度合いは違うかもしれないけれど、似たような話に思えます」
片山「小島さんの発言が不見識だと思ったのは、明らかに豊洲問題の論点を履き違えているからです。これまで述べてきたように、重要なのは『豊洲新市場の汚染が致命的な問題か?』ということ。それが延期の理由だった筈です。その点を徹底的に検証しなければならない訳です。それを棚上げにして築地再整備プランを披露するのは、どう考えてもピントがズレている。政治は選択を積み重ねながら進めていく作業ですから、やはり、これまでの経緯と手順を踏まえた上で、これからのことを考えなきゃいけない。正直なところ、世論をミスリードすると思います。寧ろ、『焦点を暈すことで論点を逸らそうとしているのではないか?』とさえ勘繰ってしまう」

郷原「しかし、この期に及んで豊洲移転を放り投げるのは、法的にもとんでもないことです。大変な責任問題に繋がりかねない。現在、豊洲新市場の土地購入を巡って、石原元知事の責任を問う住民訴訟が起こされています。小池知事は、『石原氏に責任は無い』とする従来の都の訴訟方針を見直して、『責任追及を検討する』ということで、弁護団を新たに選任しました。代理人はクライアントの意向に従って仕事をするので、石原元知事の責任を追及する方向で臨むことになるでしょう。ただ、石原さんをとやかく言う前に、小池知事が豊洲新市場を捨てて6000億円の費用を無駄にすれば、その責任が完全に彼女にあるのは間違いない」
片山「そうすると、何年後かに小池知事が住民訴訟を起こされて、窮地に立たされる可能性はある。早急になすべき豊洲新市場の再点検に手を付けず、徒に先延ばしして、市場関係者を中心に多くの人たちに損害を与えた。それを当面は都が補填するのでしょうが、この点についての損害賠償を小池さんが求められることも十分に考えられます」
郷原「その通りです。しかも、移転延期については議会にも語っていない。仮に議会に投げていたら、最終的な判断は議会が下したことになるので、彼女にとっても賢いやり方だった」
片山「石原さんに同情する訳じゃないですが、同じ知事職を経験した者として、今回のような格好で損害賠償請求されるのは理不尽だと思います。というのも、豊洲の土地購入についても、最総的な判断は都議会がしている訳ですよ」
郷原「しかし、小池知事はそうした手順を踏まなかった。石原さんとはその点が大きく異なります。つまり、小池知事こそが、住民訴訟で損害賠償を求められた時に何の弁解もできない状態にある」
片山「移転については、既に都議会が可決した条例で決まっていて、知事には施行期日を定める規則を定める義務がある。しかし、その規則を定めませんでしたね」
郷原「それは不作為に該当するでしょうね」
片山「だから、『小池知事も潜在的には非常に危険な立場に置かれている』と言えるのです」
郷原「これまで小池知事は、透明性・ガバナンス・説明責任といった言葉を用いて、石原さんを始めとする過去の都政関係者を散々批判してきました。しかし、肝心のご自身に対してはどうなのか? 知事に就任してからの9ヵ月間、はっきり言って彼女はとても多くの間違いを犯してきました。豊洲市場問題についても、安全と安心とを混同し、暴走を続けている。こうした間違いを早急に総括して、反省すべき点は反省し、改めるべきところは改める。潔く誤りを認めて都民に謝罪し、今後の方針を示しつつ、混乱を収拾すべきです。同時に、都の組織をきちんと活用する為、お友だち中心の顧問団から脱却すべきです。都の能吏を活用して、法令に基づく行政を実行する体制を整える必要もある。ただ、これまでの彼女を見る限り、そんなことができるのか? 個人的には悲観的な印象を拭えません」

片山「郷原さんが仰るように、小地都政にとって最大のポイントは、自らに対しても透明性を徹底できるかどうかだと思います。現状では、かなりダブルスタンダードになっている印象を受けます。私が気になったことでいえば、例えば予算編成の過程における情報公開です。小池知事は、舛添都政の時代まで続いていた200億円の“政党復活枠”を廃止しました。都議会自民党等が牛耳っていた事実上の予算配分権を取り戻した訳で、それ自体は評価すべき改革です。ただ、今度は都議会自民党に代わって、知事自身が業界団体を都庁に呼び付けて、予算要望の公開ヒアリングを行った。小池さんは、これを“見える化”だと言って胸を張りましたが、それは単なる“見せる化”に過ぎません。業界団体から要望を受けるシーンをインターネット上で流させただけのこと。本当の意味での“見える化”は、業界団体からの要望をどのように処理したか、どういう理由で予算をいくらつけたか、その過程を明らかにすることです。しかし、その過程はブラックボックスのままです。報道によれば、知事はマスコミを通して予算案が公表されるよりも前に、業界団体に対して予算の査定結果を伝えていたという。これはインサイダーの情報提供に他なりません。結局、これまで都議会自民党が行っていたのと同じことを、今度は小池知事がやっているようなものです。この点を小池知事と親しい人に質したところ、『そうは言っても、要望の結果を予算発表で突然知らせて、相手方が戸惑ったり、齟齬が生じたりしても困るでしょうから…」と言葉を濁していた。でも、知事に直接要望を聞いてもらう機会を与えられたのは、ごく一握りの業界団体だけです。彼らは意見を聞いてもらえただけでなく、事前にインサイダー情報まで教えてもらっている。一方、ヒアリング等には縁がなく、ただ都庁の担当部局に陳情書を出しただけの人たちはどうか。その人たちは新聞で予算発表を見て、要望した予算が付かないことに落胆するしかありません。これでは、“都民ファースト”ではなく“業界ファースト”ですよ。声の大きい人や力の強い団体だけが優遇されているし、情報提供もそちらだけが優先されている。こんなことでは、小池知事の掲げる情報公開の徹底も掛け声倒れになりかねません」
郷原「何が行うべき“大改革”なのかということが根本的にわかっていないように思えます。しかし、彼女が自ら間違いを認めて改める可能性はゼロに近い。ですから、本当に小池都政を是正する方向に持っていくには、メディアが問題を1つひとつ厳しく指摘する必要がある」
片山「メディアのスタンスも問われています。あんな要望ヒアリングの茶番を“見える化”だと報じているようでは話になりません。情報公開とは、できれば隠しておきたい内容も含めて、全てを公にせざるを得ない仕組みのことです。自分のほうから見せたいものをマスコミを通じて見せるのは“広報”であり、単なる“宣伝”です。豊洲移転問題についても、知事は何をどう検証したのか、どういう考えの下に判断を下したのか? そのプロセスを詳らかにすることこそが情報公開です。小池知事の標榜する東京大改革の真贋は、そんなことを通して自ずと明らかになる筈です」


キャプチャ  2017年6月号掲載

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