【Global Economy】(47) 原油低迷、“3R”の圧力…協調減産でも上向かぬ不可解相場

産油国の減産にも拘わらず、原油価格が上昇基調を辿らない。不可解な相場は今後も続くのか? 行方を読み解くキーワードは、“Revolution(革命)”・“Rate of interest(金利)”・“Rupture(断交)”の3つのRだ。 (本紙経済部長 天野真志)

20170731 1620170731 17

■第1のR…革命
「革命の凱歌が聞こえてくる」――。ある石油トレーダーは、現在の原油相場をこう言い表す。『石油輸出国機構(OPEC)』諸国とロシア等の産油国は5月、年初から6月までとしていた原油の協調減産を2018年3月まで延長すると決めた。生産を抑え、原油価格を引き上げる狙いがある。だが、国際指標のテキサス産軽質油(WTI)の相場は1バレル=45ドル前後と、減産開始前より1割ほど安い水準で推移している。減産に参加していないアメリカで、シェールオイルの増産が続いていることが一因だ(※グラフ①)。OPECは今年1月から、日量120万バレルを目標に減産に取り組んできた。ただ、OPEC内でも、政情不安を理由に減産を免除されたナイジェリアとリビア、経済制裁解除後のシェア(市場占有率)回復を図るイランは、計50万バレルほど増産している。これに加え、アメリカはシェールオイルの生産を40万バレルほど増やしており、OPECの減産効果を弱めている(※グラフ②)。アメリカは2010年以降、イラン一国の生産にほぼ匹敵する日量約400万バレルのシェールオイル増産を実現した。シェールオイルは、アメリカをサウジアラビアに並ぶ最大の産油国へと押し上げ、1つ目のR、“Revolution(革命)”を世界の石油市場に齎した(※グラフ③)。アメリカの『エネルギー情報局(EIA)』は、「シェールオイル等の生産が8月に日量558万バレルに達し、過去最高水準になる」と予測する。採算価格の低下とドナルド・トランプ政権の姿勢が、増産の追い風になると見ている。シェールオイルは嘗て、1バレル=70ドル前後の相場でないと採算が取れなかった。それが今は、技術革新で40ドル前後にまで下がり、安値でも利益が出るようになった。地球温暖化防止に関する『パリ協定』からの離脱を決めたトランプ政権は、環境規制を緩め、国内の資源開発に力を注ごうとしている。既に公有地で石油やガスを探査する認可手続きの迅速化等に着手した。更にトランプ大統領は、国産のシェールオイルやガスを活用し、アメリカを資源輸入国から輸出国へ転換する取り組みにも前向きだ。6月にはポーランドへのガス輸出を始めた。ポーランドは、ロシアからのガス輸入に燃料の多くを依存しており、東欧でのロシアの資源輸出攻勢を牽制する動きと見られている。シェール革命の凱歌は鳴り止まず、原油価格に下げ圧力をかけ続けそうだ。

20170731 1820170731 19

■第2のR…金利
相場を占うには、2つ目のR、“Rate of interest(金利)”の影響も見逃せない。市場には、油が必要な人だけでなく、多くの投資家も参加し、巨額の投機資金が流れ込む。WTIの生産層は1日30万バレル前後だが、将来を見越した先物取引が加わる為、実際の取引は1日10億バレルほどに膨らむ。この為、原油価格は、需給とは別に、金融市場の動向に大きく左右される。ドルで取引されることから、特にアメリカの金利に敏感だ。『連邦準備制度理事会(FRB)』が利上げの検討を本格化させ、金利が上向くと、価格は逆に下落する傾向が見られる(※グラフ④)。金利上昇でドル高が進めば、原油を買うドル資金を調達する費用は膨らむ。将来の利上げを見込んだ投機筋は、コストがかかる原油より、他の投資商品を買うようになり、原油価格を低下させると考えられる。FRBは今月26日の『連邦公開市場委員会(FOMC)』で、利上げを目指す政策の現状維持を決めた。金利の先高感が原油の上値を重くする状態に、当面、変化は無い。

20170731 20
■第3のR…断交
3つ目のR、“Rupture(断交)”も相場を押し下げる要因となる。サウジアラビアは6月、同じOPEC加盟国のカタールとの国交を断絶した。カタールが、サウジアラビアと対立するイランとの関係を深めることを牽制する狙いがある。中東情勢の悪化は通常、原油価格を押し上げる。ただ、今回は断交の発表直後こそ相場は上昇したが、間もなく下落に転じた。OPECの足並みの乱れによって、減産の継続への不安が高まった為だ。断交の長期化に加え、乏しい減産効果に不満を持つロシアが協調減産を打ち切る等すれば、市場の不安は増幅され、相場を更に下押ししかねない。減産維持の姿勢を強調しようと、サウジアラビアが原油輸出を抑制する方針を表明したこと等で、原油価格は僅かに上向いた。だが、3つのRの影響は依然として大きく、「原油価格は年後半以降も1バレル=40~50ドル前後の低水準で推移する」との見方が根強い。原油安は本来、日本のような石油消費国には望ましい状況だが、負の側面にも目配りは欠かせない。安い原油は、物価を押し下げ、日本のデフレ克服を遠退かせる懸念がある。産油国に深刻な財政悪化や通貨安を招き、世界経済や金融市場を混乱させる危険性にも警戒が必要だ。原油安の長期化が石油会社の経営を圧迫、油田開発等への投資を縮小させ、生産の落ち込みや価格高騰を齎す恐れもある。日本は、石油輸入の8割超を中東に頼る。現行の原油安に安心し、将来への備えを怠ってはならない。安値が続く買い手市場の今こそ、粘り強い交渉で有利な購入条件を引き出すことが大切だ。アメリカやロシア等からの資源輸入を増やす検討も求められる。第2次世界大戦中のイギリス首相だったウィンストン・チャーチルは、1910年代に海軍大臣を務めた。その際、ドイツの脅威に備えて、イギリス艦隊の燃料を石炭から石油に替え、20世紀が“石油の世紀”となるきっかけを作ったとされる。嘗てチャーチルは、「石油(調達)の安全と確実性は多様さの中だけにある」と語った。現代の日本にも通じる警句である。


⦿読売新聞 2017年7月28日付掲載⦿

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

原油暴落で変わる世界/藤和彦【1000円以上送料無料】
価格:1728円(税込、送料無料) (2017/7/30時点)

スポンサーサイト

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR