【オトナの形を語ろう】(35) ごっそり金を持つ男たちの共通点とは何か?

金というものは誠に厄介なものであるが、金の正体がある程度わかれば、健気にも見えるし、可愛いくも見えるものだ。私は以前、金に代わるものが何かないものかと考えたが、これが適当なものが見つからないのだから、やはりこの世の中において厄介なものであるのだろう。ごっそり金を持つ男が、私にこう言ったことがある。「伊集院さん、金を可愛いと思わなあきまへん。金は生きもんです。金に向かって『コイツ、しょうもないヤツらや』と思えば、金のほうがそっぽを向いてしまいますわ。『可愛い』と思うたら、いつまでも手元に置きとうなるのが人情だっしゃろう。可愛い子がぎょうさんいてたほうが楽しゅうおますがな。金を手元に残すコツは、それでんがな」。聞いていて、如何にも納得が行くような、それでいて愛嬌がある言葉に聞こえるが、実際、男がやっていることは、本業の金貸しもそうだが、血も涙もない取り立てをして、のし上がってきただけなのである。「アイツの懐に入ってしまうと、金は1銭も外へ出て来ぃへん。アイツのガマ口(※財布のこと)は、入る時だけ開いて、あとは一切開かへんのや」。男を批判する言葉を聞いて、少し愉快には思えたが、実際、その男に金を借りて、尻の毛まで抜かれた相手はたまったものではなかったろう。

金をごっそり持つ人々には共通点がある。それは先ず、並大抵のケチではないという点だ。無駄な金の使い方は一切しないし、必要以上の暮らしをすることもない。何故、そうなるのか? それは、金を増やすことが何より楽しい、嬉しいからである。次の共通点は、顔付き・目付きが、普通の人とどこか違っている。卑しいとまでは言わないが、少なくとも品性は無い。「品性? そんなもん持って何になりまんの? 品性って、1個いくらになりまんの?」くらいは平然と言うだろう。確かに、品性は金に換算し難いものだろう。彼らに言わせれば、品性どころか、家族・兄弟も換算すれば、無価値になるのかもしれない。況してや、愛や恋…友情等というものまで、不要のものとなるのかもしれない。それらは、この欄で、これまで私が語ってきたことで、人生で大切なものであったのだから、私の手元に金が残る筈がない。だからと言って、私は金を持つ人を否定はしないし、彼らは彼らで、他の人間ができなかったことを、それまでの人生と、今も日々やり続けているのだろう。扨て、この手の雑誌で、ごっそり金を持つ人間の話をしても、それは何の役にも立たないだろう。読者の大半は、取り敢えず、今の金の足りなさを嘆いている者のほうが多いだろうし、今の局面を打開するのに役立つことを知りたいのだろう。金に関して言えば、「金欠病に打開策は一切無い!」。それが結論だ。例えば、事細かく「こことあそこを節約すれば…」等と話しても、それができないから金がないのであるから、無駄である。

次に、今の収入なり、金の入る何か方策はあるか? 「金は急に入ってくる代物ではない!」。これも結論だ。「金が、金が、金が欲しい」という日常には、金は入ってこない。金が欲しければ、貴方の中で今直ぐ、金で換算できるものを提供するしかない。「伊集院さん、俺には何もありませんよ」。そうでもないだろう。先ず目の前に来て、貴方を見 れば、私はこう言う。「どこか身体でおかしい所は無いんだろう? 今夜しなくてはならないことも無いんだろう?」。貴方が頷けば、私はこう続けるだろう。「貴男には、その身体と時間があるじゃないか。今直ぐ金が欲しいなら、その両方を提供すれば、金は間違いなく入ってくるよ」「どういうことですか?」「だから、身体はどんどん使えば金に換算できるものだし、貴方のその時間は、誰かが欲しがっているものだから、金になるんだよ」「本当ですか?」「嘘を言って何になる?」「どうやればいいんですか?」「それは貴方が考えなきゃダメだよ。新聞を見れば、貴方の身体と時間を欲しがってる募集記事や、労働力を求めているものはゴマンとあるだろう。それを提供すれば自然と金は入ってくる」「昼間働いた後、夜も働けということですか?」「そういう方法もある。しかし私は、そんな単純な話をしているんじゃない。貴方にしかできない身体と時間の使い方は必ずあるし、世間はそれを待っているし、望んでいるものなのだ。しっかりと考えれば、金は貴方の手元にやって来る」。 【続く】


伊集院静(いじゅういん・しずか) 本名は西山忠来。作家・作詞家・在日コリアン2世。1950年、山口県生まれ。立教大学文学部日本文学科卒業後、『電通』に入社。CMディレクター等を経て、1981年に作家デビュー。『愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない』(集英社)・『大人の男の遊び方』(双葉社)・『無頼のススメ』(新潮新書)等著書多数。近著に『旅人よ どの街で死ぬか。 男の美眺』(集英社)。


キャプチャ  2017年8月7日号掲載

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