【メディア・米国のいま】(上) 都合のいい情報が“真実”

アメリカでドナルド・トランプ政権が誕生してから半年。昨年の大統領選を席巻した“フェイクニュース”は今や、政権に批判的な報道を攻撃するトランプ大統領の常套句にすり替わり、大統領が虚実の境界を曖昧にする事態に陥っている。社会の分断に拍車がかかる中、嘗てない信頼低下にもがくアメリカメディアの今を探った。

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カナダとの国境に接するノースダコタ州が昨夏以来、全米の注目を集めている。原油を運ぶ全長1800㎞超のパイプライン建設反対の声が、激しい抗議活動に発展し、大統領選で争点になったからだ。荒涼とした大地が広がる州都のビスマーク近郊。地方紙『ビスマークトリビューン』で記者としてのスタートを切ったキャロライン・グルースキンさん(24)は、反対派と地元警察との睨み合いが過熱して以降、全米から寄せられる反応の激しさにたじろいだ。キャロラインさんの記事に対し、保守層は「警察を悪者に仕立て上げている」と非難し、リベラル層は「正当な水源保護活動を貶めている」と糾弾した。双方が根拠にしていたのは、『Facebook』上で流れる出所不明の“ニュース”だった。「反対派は手製爆弾で武装する暴徒だ」と信じ込む保守層。「デモ参加中の子供が警察犬に噛まれて怪我をする等、反対派は弾圧を受けている」と主張するリベラル層。キャロラインさんは事実を示して「根拠が無い」と報じ続けたが、「記事には本当のことが書かれていない」と双方から攻撃された。Facebook等、インターネット上に溢れるそうした書き込みを、デマだと受け止めることができないのだ。批判はエスカレートし、脅迫電話も受けた。父母共に新聞記者という家庭で育ったキャロラインさんは、戸惑いを隠さない。「ジャーナリズムの基本は、中立的な立場で双方の言い分を取材・検証して事実を書くこと。フェイクニュース時代の今こそ、それが何よりも大切なのに…」。

事実に中立的に目を向けようとせず、都合のいい情報しか受け入れない――。その背景には、Facebookを始めとするSNSが、日々のニュースの主要な入手先になっているアメリカの実情がある。「Facebook等の利用者は、『自分の信念や主張に合致していれば、出所不明の情報でもそれが真実だ』と受け入れる傾向がある。それがフェイクニュースに付け入る隙を与えている」。キャロラインさんの父で、『コロンビア大学ジャーナリズムスクール』のビル・グルースキン教授(61)は指摘する。アメリカの民間調査機関『ピューリサーチセンター』は今年2月、「『SNSからニュースを得ている』と答えた人の約半数が、ニュースの出典を全く把握していなかった」との調査結果を発表した。昨年12月の別の調査では、「SNS上でフェイクニュースを友人や知人と“共有”した経験がある」と答えたケースが23%あった。Facebookは虚偽のニュースを見つけ次第、目印を付ける等の対策を打ち出しているが、ニュースの共有等1日の投稿数は数十億件に上り、対策が追いついているとは言えない。グルースキン教授は警鐘を鳴らす。「Facebookは報道機関とは違う。そろそろ、アメリカ国民はそのことに気付くべきではないか」。トランプ大統領が自らSNSを駆使し、自身に敵対的な報道機関への攻撃を強めていることも、メディア不信に拍車をかける。大統領就任直後からツイッター上で、「就任式の観客は過去最大」「バラク・オバマ前大統領の指示で盗聴された」等と裏付けのない主張を展開。捜査が進む“ロシア疑惑”も、「メディアや民主党によるでっち上げだ」等と訴える。“事実”を示して報じるメディアに対し、トランプ大統領が根拠を示すことは殆ど無い。『CNN』や『ニューヨークタイムズ』等を名指しして“フェイクニュース”と切り捨て、最近は“ゴミジャーナリズム”や“詐欺ニュース”等とエスカレートする一方だ。事実を虚偽だと強弁し、真実が歪められていく――。メディア評論で知られるジャーナリストのケン・ドクター氏(67)は、「事実を事実として受け入れることは普遍的な真理」と訴え、こう指摘する。「大統領自身が事実を捻じ曲げ、事実を重んじるメディアを敵視する。それは、民主主義社会にとって極めて危険なことだ」。


⦿読売新聞 2017年7月26日付掲載⦿
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