【メディア・米国のいま】(中) 過激評論、デマの温床

20170801 05
「テキサス州が潤わないのはバラク・オバマのせい。石油産業が儲からないよう、環境保護に力を入れたからだ」――。保守色の強いテキサス州。夕方のラッシュ時に、州都のオースティンで車のラジオを付けると、司会者の怒声が聞こえてきた。話題はあちこちに飛び、性的少数者(LGBT)に対する露骨な表現も飛び出す。“トークラジオ”と呼ばれる番組だ。過激な論調で知られる。番組は、放送の公正さを担保する為に放送事業者に課した“フェアネスドクトリン(公正原則)”の撤廃後に増え続け、今や全米で約1300万人が耳を傾ける。評論を差し挟まない報道を“ストレートニュース”と呼ぶのに対し、こうした番組では司会者が中立性もなく差別的な意見を吐くことがしばしばで、保守層に根強い人気がある。トークラジオは、オバマ前大統領が“外国生まれ”で“イスラム教徒”だというデマの温床にもなった。オバマ前大統領が公式に否定した後も“事実”として伝え続け、ドナルド・トランプ大統領も就任前に盛んに繰り返した。『ワシントンポスト』のマーティン・バロン編集主幹(62)は、「アメリカ人の2割超が、未だにそれが事実だと信じている。そして我々が報じないのは、虚偽だからではなく、『事実を隠す為だ』と思い込んでいる」と語る。アメリカでは、新聞やテレビ等既存のメディアに対する信頼が低下し続けている。『ギャラップ』の昨年の調査では、こうしたメディアを「信頼する」と答えたのは32%。1972年の調査開始以来、過去最低だった。

しかし、ハーバード大学ジャーナリズム研究所『ニーマンラボ』のジョシュア・ベントン代表(41)は、「信頼低下と一言で片付けるべきではない」と指摘する。保守層はリベラル色の強い『ニューヨークタイムズ』等を信頼せず、リベラル層も保守系の『FOXテレビ』に反発する。インターネットメディアの中には、デマをニュースだとして流すサイトも少なくない。「メディアが多様化したことを背景に、社会の分断が顕著になったことの表れだ」と解説する。ただ、デマが拡散し易い現状は、メディアの信頼低下と無関係ではない。ギャラップの調査を支持政党別でみると、共和党支持層の間で「メディアを信頼している」と答えたのは、僅か14%。民間調査機関『ピューリサーチセンター』の調査では、昨年の大統領選に関する情報の入手先(※複数回答)をラジオとした人は44%。全国紙の23%、地方紙の29%を大きく上回り、保守層の投票行動に影響を及ぼしたことは間違いない。メディアの信頼回復には何が必要か? べントン氏は、地域ニュースの復権に着目する。「地元の自治体が抱える問題は何れも生活に密着しており、党派対立を乗り越えて解決しなければならない課題だからだ」。2009年にテキサス州オースティンで活動を始めた『テキサストリビューン』は、地域ニュースのインターネットサイトを運営する非営利のニュースメディアだ。保守層が多く、トークラジオが根強い人気を誇る同州で読者数を伸ばし、運営の支えとなる寄付金も右肩上がり。地元紙に記事を配信するようになった。成功したのは、州の財政・教育・防災問題等、地域のストレートニュースに特化したからだ。「『足元の出来事を公正な視点で伝えてほしい』という声は必ずある。我々がそういう存在だと受け入れられている結果だと思う」。編集者のアリヤン・ミトラさん(42)が胸を張ると、誌者からの投書を一手に引き受ける運営責任者のジョン・ジョーダンさん(59)は、こう続けた。「抑々、今のアメリカのメディアは評論だらけ。報道は地道に、事実でこそ勝負すべきじゃないかな」。


⦿読売新聞 2017年7月27日付掲載⦿
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