出光、巨額増資の陰で問われる“株式会社のあり方”

20170801 09
「統合は進むだろうが、創業家の追い落とし方は、今後に大きな禍根を残すだろう」。『出光興産』の経営について、証券アナリストはそう苦言を呈する。出光は今月20日、計画通りに公募増資を実施。発行済み株式の3割にあたる4800万株を新たに発行し、約1200億円を調達した。これにより、創業家の持ち株比率は33.92%から26%程度に低下。3分の1以上の持ち株比率が必要な『昭和シェル石油』との合併の“拒否権”を失ったことになる。創業家は、公募増資の差し止めを求める仮処分を裁判所に申し立てていたが、18日の東京地裁、19日の東京高裁共に認められず、出光の増資を容認する結果となった。“会社側の完勝”――そう見える結末だが、裁判所の判断の中身を見ると、印象は大きく変わる。会社の主張に多くの疑問が示されていたからだ。増資の主な目的は、昭和シェル株を購入した際の借入金返済や、ベトナムの『ニソン製油所』の運転資金、有機EL材料事業等への戦略的投資だった。この中で裁判所が認めたのは借入金返済のみ。ニソン製油所等の戦略的投資は、「的確な証拠が無い」として、必要性・合理性を認めなかった。

更に、出光経営陣は新株発行によって創業家の持ち株比率を下げ、支配権を巡る争いで有利な立場になる目的があったことも裁判所は認め、「不当なものだ」と断定している。それでも増資が認められたのは、複数の目的があった場合、裁判所は主目的で最終判断する“主要目的ルール”がある為だ。「借入金返済を主要目的と認めたことがポイントとなった。その必要性や合理性はある、と」(『日比谷パーク法律事務所』の西本強弁護士)。ここで疑問が湧く。何故、借入金を増資によって返済するのか? 出光によれば、「借入金は短期のブリッジローン契約であった為、利率の低い劣後ローンへ借り換えるつもりだった」という。ところが、公正取引委員会の合併審査が長引いたことや、創業家の反対があり、金融機関から従前の条件での借り換えを拒否された。その結果、「新株発行による資金調達に切り替えざるを得なくなった」と説明している。しかし、ある関係者は、「別の銀行に要請する等の経営努力を尽くしたのか?」と疑問を投げる。株主総会直後、いきなり株主の権利を毀損する増資を選んだことは、「善管注意義務違反の可能性もある」(企業法務に詳しい弁護士)。出光関係者のみならず、市場や法曹界までもが出光の増資に注目するのは、「今回のような借金返済という理由があれば増資が認められる」という“前例”が生まれたことによる。「多額の借金が存在すれば、いつ株主の権利が希釈されるかわからない」(同)。出光の支配権を巡る争いは、“株式会社の在り方”に関する議論に発展する可能性をはらんでいる。 (取材・文/本誌 松浦龍夫・飯山辰之介)


キャプチャ  2017年7月31日号掲載
スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR