【平成の天皇・象徴の歩み】(10) “老い”や“過疎”向き合い

20170802 05
「陛下も一緒にどうぞ」――。 天皇・皇后両陛下は1997年9月、敬老の日を前に、東京都板橋区の特別養護老人ホーム『いずみの苑』を訪問された。視察中に突然、じゃんけんで負けたほうが相手の肩を揉むというゲームに誘われた。予定に無いことだったが、誘われるままに輪に加わった天皇陛下は、70代の女性に負けてしまい、笑顔で女性の肩を解された。にこやかに見守られる皇后さま。ホームの関係者らは驚き、感動した。当時、厚生省の老人保健福祉局長で、後に宮内庁長官に就任した羽毛田信吾さん(75)も、その場にいた。初めて見る陛下の姿に、「こういう形でお年寄りと心を交わされるのだな」と驚いたという。「あそこまでなさらなくても…」という声もあったが、羽毛田さんは長官として陛下の公務に随従するようになると、「パフォーマンスでなく、象徴天皇の有りようから自然になさったことだったのだ」と確信したという。「障害者や高齢者に心を寄せていくことは、私どもの大切な務めであると思います」。即位10年の記者会見でこう述べた陛下は、皇太子時代から各地を訪れると、必ずと言っていいほど老人ホーム等の福祉施設に足を運ばれてきた。

宮内庁関係者によると、高齢者の自立を促すグループホーム・リハビリ専門施設・職業紹介所等で、社会の高齢化に対応する試みがあると知ると、積極的に視察を望まれた。「社会の高齢化が進む中、天皇もまた高齢となった場合…」。昨年8月のお言葉で、自身の老いに言及された陛下。65歳以上の高齢者は、1950年に日本の総人口の4.9%だったが、2015年には26.7%に増加した。2035年には3人に1人となる見通しだ。日本が避けて通れない問題に早くから向き合われてきたのが陛下だった。過疎化が進む地方都市の高齡化も、「大変深刻な問題」と捉えられた。2014年の記者会見では、屋根の雪下ろし中の高齢者の事故が多発していることに言及し、「私自身、高齢になって転び易くなっている」と我が事のように心配された。陛下の関心は、僻地での高齢者医療にも向けられた。側近によると、陛下は過疎地域等で働く医師を養成する自治医科大学(栃木県下野市)の視察を長年、希望されてきた。2007年12月に実現すると、卒業生に「お仕事はどうでしたか?」と離島や山間部の実情を尋ね、赴任前の学生を「地域医療に力を尽くされるよう願っています」と激励された。高齢化社会を見据えた陛下の視察は、お年寄りを支える側の意識も変えた。あの“じゃんけんゲーム”を目の当たりにした当時のいずみの苑職員・中山真知子さん(69)は、「両陛下と触れ合い、初めて人前で涙を流したお年寄りを見て、入所者の人生を考えるようになった」と明かす。ホームでは、陛下の訪問を機に、昔の思い出を話す入所者も増えた。「1人ひとりが生きた歴史を把握し、寄り添い続けよう」――。職員からそんな声が上がり、両陛下の視察の翌年から、一般の入所者を介護するだけでなく、回復の望みが無い人も受け入れ、最期まで看取ることになったという。


⦿読売新聞 2017年6月25日付掲載⦿
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