【霞が関2017夏】(09) 総務省、“月でクレーンゲーム”に見る本気度

「不安な個人、立ちすくむ国家」――。経済産業省の若手職員30人が執筆したリポートが、インターネット上で話題になった。日頃、社会の屋台骨を自負する官僚たちは、発信は慎重になりがちだが、時に世に問おうと大胆に振る舞うことがある。総務省で広がっているのは、未来予想図を示すことによる社会への提言だ。「地球上で通信装置を身につけ、月面アミューズメントパークのクレーンゲームを操作」「ロボットが月面でサッカー。地球上の高画質テレビで観戦」――。2030年の近未来社会はこうなっているとして、イラストと共に掲載されているのが、総務省の有識者会議『宇宙×ICTに関する懇談会』が準備している6章立ての報告書案の第4章。月面で資源を採掘して工場で生産、ロケットで打ち上げて火星の居住区に送る…等といった産業の未来予想図も、イラストを交えて描く。章の冒頭では、「昭和の時代には、我が国のマンガやアニメが近未来の世界観を発信した」とした上で、「行政府における会合の報告書としては非常に先進的に」や、「自由な発想で大胆に描き出した」といった文言が躍る。その通り、これから十数年後の未来として考えると、「やや突飛では?」と思えるものばかりが並ぶ。会議は、宇宙での情報技術の発展について議論するもの。宇宙空間で大容量・高速の無線通信の環境を実現する為の方法と、実現した時に人工知能(AI)等他の最先端技術と組み合わせてどんな産業や娯楽が登場するか…という未来の社会を話し合った。先月に報告書案を提示して意見募集を実施しており、総務省のホームページで見ることができる。今月末に最終的に取り纏める。

「荒唐無稽な姿を示した訳ではない」と担当者は言う。会議では、大学教授や企業の技術者を交え、イラストを囲んで話し合った。「衛星通信とドローンで、遠い国で家庭菜園を運営できるなら、過疎地の林業再生も可能だろう」等と盛り上がったという。未来予想図を打ち出したのは、ウケ狙いではない。宇宙ビジネスを手掛ける企業は、重機メーカー等これまでロケットや人工衛星を手掛けてきた大企業に偏ってきた。宇宙に携わってこなかった企業やベンチャー企業にも参入を促すのが真の狙いだ。将来像がイメージできれば、「若しかしたら我が社にもビジネスチャンスがあるかもしれない」と気付いてもらえるかもしれない。総務省では、宇宙関連の情報産業の市場規模を、2014年の8000億円から、保守的に見積もっても2030年代には1兆7000億円程度に倍増、大幅成長の場合は2兆7000億円程度と、3倍以上にするとの目標を設定している。その為には、幅広い企業にビジネスの可能性を感じてもらうことが肝心だ。勿論、総務省の担当者が「尖った提言をしたい」という欲求に駆られなかった訳ではない。経産省の若手報告が話題になったことを振ると、「意識しなかった訳ではないですね」と返ってきた。総務省の他の部局にも、未来予想図作りが広がっている。自動車をインターネットに繋いで、自動運転や車両管理に役立てる“コネクテッドカー(繋がる車)”の有識者会議が、今月13日に開かれた。この席でも未来予想図が登場し、参加者からは「わかり易い」との感想が相次いだ。民間を煽ろうとするその動きを見て、官僚の傲慢と考えるか、民間企業の想像力が足りないと嘆くか――。どう反応するかは別として、イノベーションを興す為に想像力逞しく挑戦的になることは、決して無駄な行為ではない筈だ。 (秋山文人)


⦿日本経済新聞電子版 2017年7月18日付掲載⦿
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