「個を活かす川崎のスタイルで優勝したい」――中村憲剛選手(川崎フロンターレ)インタビュー

勝てそうで勝てないシーズンが続く。だが、希望は失っていない。寧ろ闘志を駆り立てている。川崎一筋の偉大なキャプテン・中村憲剛が、15年目に向けて熱く語った。 (聞き手/スポーツライター 熊崎敬)

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――オフはどう過ごしました?
「天皇杯の2~3日は、娘が体調を崩したんで、自宅に缶詰めだったんです。外出できなかったので、去年の最後2ヵ月のことを考えちゃって。チャンピオンシップも天皇杯もチャンスはあったのに、どっちも向こうに転がっていった。『鹿島に習わなきゃいけないところもあるな』って感じていました」

――習う、というと?
「良くないなりに勝つということ。苦しい時間を耐えて、セットプレー1発で持っていくような。昨シーズン、そういう試合は増えたんですけど、勝負どころでできなかった。自分たちのボールを持つサッカーには勿論、自信があります。でも、そこにプラスαができなかった。やっぱり、一発勝負のトーナメントで勝つには、試合を殺すようなことも必要になる。『もう1つ上に行くには、もっとあからさまにやってもいいんだ』と、自分の中で感じたんです」

――なるほど。
「鹿島だって、自分のリズムで試合をしたい筈なんです。でも、それができない時の割り切り方が凄い。『今は守って逆襲でいいじゃん』というね。チャンピオンシップと天皇杯で、それを痛感しました。あともう1つ、メディアも含めて『やっぱり鹿島だ』と思わせる力もある」

――私もそれに加担していますね。
「それが伝統の力なんですよ。常勝といっても、黄金時代を知っているのは(小笠原)満男さんとソガ(曽ヶ端)さんくらい。若い選手の多くは知らないんです。でも、周りから『強い』『勝てる』と言われるから、『最終的には自分たちが勝つだろう』と思って試合ができる」

――鹿島と違って、「川崎は肝心要で勝てない」と思われている。
「それは自分たちが招いたこと。勝てば空気も変わると思う。俺はそれが去年だと思っていた。風間さんが4年かけて築いたチームの集大成だったんですよ。だから本当に悔しい。いや、悔しいって言葉じや陳腐過ぎる。振り返ると、2003年に入団して3~4年で優勝争いするようになって、『これなら直ぐ獲れるんじゃないか?』と思っていました。でも、何も獲らないまま15年目を迎えている訳で…」

――ただ、チームの完成度は高まっている。その手応えはありますよね。
「えぇ。相手を自陣に押し込んで逆襲すら許さない、そんな試合が去年は何回かできました。風間さんは選手の個性を大事にしていたので、誰が出ても同じというチーム作りはしなかった。だから、就任2~3年までは、誰かが欠けると結果が出なかったりしたんです。でも、去年は層が厚くなって、誰かが欠けても勝ち切れる試合が増えましたね」

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――川崎のサッカーは見ていて楽しいですから、選手もプレーしていて楽しいでしょう?
「相手は何してくるかわかんないんじゃないですか。多くのチームはある程度先が読めるけど、俺らは瞬間の即興でやりますから。だから、皆が意識を研ぎ澄まさないと成り立たないんです」

――即興性満載ですね。
「即興に呼応できる選手が周りを固めてくれたから、去年は楽しかったですよ。ボールは取られないし、敵が守りを固めていても崩しに行ける。ただ、(大久保)嘉人や(小林)悠、(大島)僚太のイメージに応えようと必死ですよ。一瞬でも遅れたらオフサイドになるから。これは緊張感のある楽しさなんです。セッションみたいなんですよね。誰かがドラムを叩いた後に、誰かがギターを弾いて、次は誰かが歌い出して…という。それが、見る人を惹き付けるサッカーになったと思います」

――川崎は、互いに意図を伝えながら試合をしている感じがありますよね。何気ないパスで敵を動かしたり。
「その3mの横パスの価値がわからない人が多いんですよ。『早く縦に入れろ』と言う人は多いけど、入れた後に潰されるリスクもある。だから、横パスを入れて、敵の足と視線を動かすんです。そういうのを去年は周りが理解してくれた。皆、俺に意図があることを知っているんで」

――意図が伝わる楽しさですね。
「風間さんのチームも、最初は皆、バラバラの方向を向いたところから始まったんです。でも、それが1つに集約されていくと、こんなに面白いものができるんだなと」

――川崎の試合運びは独特だから、力量が無い選手がいるとあからさまにわかる怖さがある。
「俺は、無数にある解決策の中でベストな判断を続けられるのが、いいチームだと思うんです。いい攻撃ができないチームは、その解決策を自分じゃなくてチームが持っているというか、チームとしてやるべきことが先に立ってるんですよ。だから、敵が潰しに来たら困ったことになる」

――川崎のサッカーは距離・タイミング・スピード等、全て微妙な感覚で成り立っていますよね。
「だから、『敵がいるからパスはいらない』という選手が1人でもいると成り立たない。『敵がいるけどくれよ』という11人じゃないと、敵を圧倒するサッカーはできないんです。組織に埋没する個では、ウチではできないでしょうね」

――その中で中村さんは、敵の急所を突くような役目を担っている。
「だから超楽しいんです。これだけ自分にポールが集まり、周りが動いてくれて、しっちゃかめっちゃかになって削りに来る敵をいなし、尚且つ敵のえぐられたくないところをえぐる。これをやらせてもらっているんですから楽しいですよ」

――そう言えるのは幸せですよね。今までの話で、川崎のサッカーは個が大切なことがよくわかりました。
「サッカーはやっぱり、1人ひとりが解決策を持っていないと。それをチームに委ねるのは悪くないですが、危険だと思う。チームの枠組みに選手の個性を当てはめていくと、ある程度のところから先には行かないですから」

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――これ、とても大事なことを語っていますね。
「多分。ですから、“組織と個”と言うけど、組織は勿論大事ですが、僕は断然、個だと思う」

――川崎はそういうサッカーを実践していると。
「はい。それをやって数字上、いいものを叩き出している自負はある。周りからの評価も頂いている。結果が出ないから、最終的に説得力に欠けるのは悔しいですけど」

――でも、堂々と誇りを持ってプレーしている訳ですね。
「勿論。うちのようなサッカーは、自分たちが自信を無くしたらあっという間に崩れる。俺は最終的に“サッカー”で優勝したいんですよ。『また言っている』って言われるかもしれないけど、それを覆す過程を楽しむのも醒醐味ですし。この4年間を振り返ると、俺も懐疑的になったこともありました。勝てない試合が続くと『路線変更したほうがいいのかな?』って。でも、そこで折れていたら、去年の勝点もなかったと思います」

――今年は移籍が多くて、ファンの期待も高まっています。
「こんなに大駒が動いた年って、今まであったかなぁ? 自分がJリーガーじゃなかったら、めっちゃワクワクすると思う」

――敵・味方の顔ぶれが変わりますね。
「俺は今まで受け入れる側でいたから、『新しく加わる選手を活かしたい』と思っている。これはずっとやっている楽しい作業なんですよ」

――『FC東京』に移籍しましたが、大久保さんが来た時はどうでした?
「嘉人のことは不安でした。『うちでできるのかな?』と。でも、実際は誰よりも上手くやっていた。それを見て、『環境って面白いな、周り次第で人は化けるんだな』と実感したんです」

――大久保さんが抜けて、新しく家長さんが来る。彼のイメージは?
「天才肌。パスが出せて、点が取れて、ゲームメイクもできる。だから逆に、のびしろが未だあるかもしれない。大宮はアキのチームだった。でも、今年はフロンターレに変わる。アキの良さを大宮以上に引き出すことができたら、もっと面白い家長昭博を見せられるんじゃないかな? 楽しみにしています」

――最後にファンにメッセージを。
「ファンのことで思い浮かぶのは、ブラジルW杯のメンバーから落選した次の試合、等々力で“GO KENGO”という横断幕を出してくれたこと。一生忘れない光景です。その試合を0-3で負けちゃうのが、俺のダメなところなんですけど」

――特別な絆があるんですね。
「俺はJ2の頃からの選手だから、お客さんが5000~6000人の時代を知っています。サポーターの皆は共に歩んできた仲間であり、家族。だから俺は、皆に優勝してほしいんです。フロンターレは皆で一緒に大きくなったクラブ。その成長を優勝という形にしたい。でも、俺が言い過ぎると重くなるので、この辺で止めときます(笑)」


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