【シンゾウとの距離・改造前夜】(04) 石破茂…モノ言い強める無役

20170804 03
東京都議選が投開票された今月2日の夜。前地方創生担当大臣の石破茂(60・左画像)は、鳥取市の自宅でテレビを見ていた。「やっぱりな」。20時に始まったテレビの開票速報は、自民党の獲得議席が過去最低の38を下回る予想を伝えていた。選挙期間中、連日のように都内で街頭演説に立った。聴衆から野次を受けることも多く、自民党への猛烈な逆風を肌で感じた。開票前に首相の安倍晋三(62)が財務大臣の麻生太郎(76)らとフランス料理店で食事していたことを知ると、「党の公認候補が当選を祈っている時に高級フレンチか。これでは候補者が立つ瀬がないな」。憤りを覚えた。昨年8月の内閣改造で、閣外に出る道を選んだ石破。安倍とはこの時に電話で入閣を固辞して以来、一度も話をしていない。「政権中枢と近いほうがポストは得られることはわかり切っている。でも、いざという時に俺がものを言わなかったら、自民党はどうなるんだ」。優等生のようで面白みに欠けるとの見方も永田町に多いが、都議選ショックを受け、徐々に舵を切り始めた。都議選後の10日間で受けた新聞やテレビの取材は10を超え、露出作戦を強める。無役は自由な半面、世間の注目度が下がる悲哀も味わう。テレビの出演料や講演料で構成される“雑所得”は、2016年で548万円と、前年の4割程度の水準に落ち込んだ。

2012年の自民党総裁選の決選投票で安倍に負けた時点では、党内の誰もが石破を“ポスト安倍”の最右翼とみた。石破派は今19人。身内を数えると、来年9月に見込む総裁選で、出馬に必要な20人の推薦人を確保できるかはぎりぎりだ。石破はどんな戦術を描くのか? 「総理と全面対決だ」と息巻くのが憲法改正だ。安倍は9条の1項と2項を維持したまま、自衛隊を憲法に明記する案を提起。石破は「戦力不保持を定めた2項の規定と矛盾する」と指摘するが、首相提案への反対論は党内で広がらない。「多くの人がおかしいと思っているのに、総裁の意図がそこにないと思って何も言わない」。石破は「戦争で大変な思いをした人たちがいる間に改正したい」と、早期の改憲そのものには賛成の立場を取る。問題視するのは、“2020年に新憲法施行”との日程が先行する議論だ。「機運が高まった今を逃せば、改憲は永遠にできなくなるかもしれない」とのジレンマも抱える。安倍との徹底抗戦を進言する周囲の言葉に、「これ以上、どう声高に主張すればいいんだ」とこぼす。地方行脚も続ける。2012年の総裁選では、地方票で安倍を上回った。だが、4年以上も安倍政権が続くと、地方の支持も安倍に靡く。「第1次政権の退陣後、安倍さんは半ば謹慎状態で露出度が低かった。だから地方票で上回れたが、5年前と今では全く環境が違う」と周囲に漏らす。石破が“ポスト安倍”を射止めるには、先ず安倍批判層の受け皿にならないといけない。だが、徹底した安倍批判の戦術は嫌う。「3選の阻止なんてしない。安倍さんがやるべきことをきちんとやってくれるなら、それで良いんだ」。次の総裁選へ勝機を探るが、安倍との違いを明確に、自分の政策の旗印を掲げて“安倍降ろし”を仕掛ける訳ではない。アベノミクスに警鐘を鳴らす財政規律派の勉強会に参加する等、首相官邸を牽制する動きはみせる。党内には「中途半端で評論家的な言動」と冷ややかな見方もある。無役の戦いは、“出口”が見えないままだ。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年7月17日付掲載⦿
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