【シンゾウとの距離・改造前夜】(06) 小泉進次郎…互いの価値を値踏み

20170804 05
先月25日夜、自民党農林部会長・小泉進次郎(36・左画像)の発言が注目を集めた。「借りた恩の返し方は色々ある」――。“恩”とは、同日投開票された横須賀市長選。横須賀市は小泉家のお膝元だが、市長選は父親の純一郎の時代から2回連続で敗北した。今回は自民・公明両党が推す新人が当選した。背景にあったのは、首相官邸や自民党が展開した国政選挙並みの総力戦だ。そのおかげで小泉は面目を保てただけに、恩の返し方への臆測が永田町で広がった。というのも、来月上旬に予定される内閣改造で、小泉の人事が1つの焦点となっている為だ。東京都議選の惨敗で、1強を誇った政権の足元は揺らいだ。局面打開には、人気者の小泉は格好の目玉人事となる。衆議院当選3回ながら、衆目が一致する“将来のリーダー”。嫉妬の渦巻く永田町で、謙虚さを前面に慎重にキャリアを積んできた。2015年に抜擢された農林部会長としては、票田である『全国農業協同組合連合会(JA全農)』の改革に切り込んだが、先輩である農林族議員らは徹底的に立てた。部会が終わると、必ず農林族幹部らに「今日もありがとうございました。おかげ様で無事に終わりました」と丁寧に頭を下げた。部屋には最後まで残り、JA幹部ら出席者の意見を聞いた。

3月末に党内の若手議員らと提言した子育て支援の財源案“こども保険”。党内からは、厚労族議員を中心に反発も出た。小泉は自ら厚労族幹部らの事務所に電話して、面会を打診。断られれば国会で待ち伏せし、一生懸命説明して回った。だからこそ、改造で噂される“異例の抜擢”には不安も拭えない。「周りは俺の失敗を待っている」。経験を積む好機である半面、要職を受けて失敗すれば非難の嵐となりかねない。一方、官房副長官等政権の中枢に入れば、政権を擁護せざるを得ず、これまでの政権批判も辞さない清新なイメージは壊れてしまう。首相の安倍晋三(62)とは微妙な距離感を保つ。「時間軸が違う気がするんだよね」。こう評したことがある。実際、遊説や党内論議でアベノミクスに触れたことはほぼ無い。金融緩和や財政拡大等のカンフル剤的な政策にも一定の同調は示すが、「日本の課題は2020年以降に一気に顕在化する」と構造改革の必要性を訴える。2012年党総裁選で元幹事長の石破茂(60)に票を投じたのも、石破が訴える“持続可能な日本”に共鳴したからだ。一方、安倍の側にも複雑な感情が滲む。ある党幹部との会食の席。出席者によると、安倍は“ポスト安倍”候補を披露していた。そこで党幹部が「進次郎もいますしね」と水を向けると、返ってきた答えは「まぁ、そうだね」。閣外からの歯にきぬ着せぬ発言にも、不快感は隠せない。「色々言っていて頼もしいね」と安倍は最近、皮肉にも似た感想を周囲に漏らした。政権浮揚のカードだが、引き立てた結果、自らの後継者とは言えない政治家を育ててしまう恐れもある――。首相周辺は、「進次郎は首相にとって諸刃の剣でもある」と語る。「フランスのマクロン大統領は39歳。カナダのトルドー首相は45歳。俺と殆ど年の変わらない彼らの活躍は、凄く意識するね」。小泉は最近、周囲にこう語った。小泉にとって、トップを目指す戦いは遠い未来ではない。ここから積むキャリアは、大きく勝負を左右する。安倍は“進次郎カード”をどう利用しようとし、小泉はどう対峙するのか? 現リーダーと将来のリーダー候補が、互いの価値を慎重に値踏みしている。 《敬称略》


⦿日本経済新聞 2017年7月20日付掲載⦿
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