【中外時評】 第2幕迎えるドローン競争

「ドローン(小型無人機)といえば深圳。町中をビュンビュン飛んでいるよ」――。知人の誘いに乗り、中国・深圳を訪ねた。中国最大の電気街『華強北路』。販売店の店員が、屋外で機体を器用に操っている。深圳には300社のドローン製造企業が犇き合うという。中でも圧倒的な存在感を示すのは『DJI』だ。汪滔CEOが大学院在学中の2006年に設立し、軍事用を除く民間向けで70%の世界シェアを握る。2016年の売上高は100億元(約1600億円)に達した。本社は内装にガラスを多用し、白を基調とした明るい雰囲気だ。どこか『Apple』の施設に似ている。実際、同社は“ドローン業界のApple”と呼ばれることもある。だが、共通するのはイメージ戦略だけではない。「当社はメイドイングローバル」。汪CEOの幼馴染みで日本法人を率いる呉韜氏は語る。電子機器の工場が集積する深圳で生産する一方、ソフトはシリコンバレーで開発。日本ではJR品川駅前に拠点を開き、近くに本社を置く『ソニー』や『ニコン』等から約70人の技術者を雇い入れた。画像を撮影するカメラの開発拠点と位置付ける。垂直統合型のビジネスモデルや世界的な分業体制等もApple流だ。Appleと同様にDJIの勢いも凄まじく、ドローンで世界3強の一角を占めた『パロット』や『3Dロボティクス』は人員削減に追い込まれた。DJIが一人勝ちの色彩を濃くしている。欧米大手が苦戦し、日本勢の勝ち目も薄いようにみえる。だが、ドローンを長年研究してきた千葉大学名誉教授で『自律制御システム研究所』(千葉市)の野波健蔵CEOは、「高度な自律飛行が実現して人の手を煩わせなくても飛べるようになると、ゲームのルールが変わる」という。

2020年代に実用化が見込まれるこうした技術により、土木工事の測量・送電線の検査・農業の支援・運輸といった専門的なサービスが一気に花開く可能性がある。「民間向けドローン機器の世界市場は、2020年頃に1兆円前後になる」との見方が多い。一方、『PwC』はドローンで代替可能なサービスの市場を約1270億ドル(約14兆円)と見積もる。ドローンを巡る最初の競争は、趣味や映像作品の制作等を目的とする製品の製造・販売で、DJIがほぼ制した。これからやってくる第2幕はサービスが主体となり、市場規模や応用範囲は遥かに大きい。「顧客が必要なのはドローンそのものではなく、課題解決だ」。ドローンを利用した土木測量サービスを提供する『テラドローン』(東京都渋谷区)の徳重徹社長は、「競争の軸が変わってきた」と実感する。2016年に発足した同社は、国内外に拠点を広げている。だが、課題もある。1つは、どう市場を作るかだ。土木分野では国土交通省等が旗振り役となり、一定規模の公共事業でドローン等の利用を義務付ける取り組みを進めてきた。少子高齢化に伴う働き手の減少は、農業や運輸への応用を後押しする。追い風を生かし、市場を育てる為のルール整備が急務だ。もう1つの課題は、独自性が高い技術やアイデアを持つ新興企業の支援だ。「このままでは日本のドローンのスタートアップが潰えると思った」。スマートフォン向けゲーム大手『コロプラ』の副社長等を務め、6月にドローンに特化したファンドを設立した千葉功太郎氏は話す。個人投資家として千葉氏が目にしたのは、ドローンの分野に有望なスタートアップがあっても、資金や経営ノウハウを注入する支援者の層が薄い現実だ。実質3ヵ月間の準備期間で、15億円のドローンファンドを立ち上げた。今後は大企業等を巻き込んだ幅広い取り組みが必要だ。製品の売り切りからサービスや問題解決へというビジネスモデルの転換は、日本の屋台骨を支えてきた電機産業等が経験している。ドローンを使ったサービスの競争も激しさを増すが、嘗ての経験や反省を生かして取り組む価値はある。巨大市場を諦めるのは未だ早い。 (論説委員 奥平和行)


⦿日本経済新聞 2017年8月3日付掲載⦿
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