【ここがヘンだよ日本の薬局】(13) 卒業試験は超難関! 薬剤師への道

医師ほどではないが、薬剤師になるには難関な卒業試験と国家試験をパスしなければならない。大学が6年制となり、果たして薬剤師のレベルは上がっているのだろうか? 現役の薬剤師たちが、大学卒業後のメリットを語ってくれた。 (取材・文/フリーライター 鈴木光司)

20170807 02
患者を含めた一般の人間にとって、医療関係の各資格は縁遠いものにも思える。それだけ専門性が高いということだろうが、これらの資格は大きく次のように分かれる。医師・歯科医師・薬剤師・看護師だ。どの資格も、然るべき教育機関で正規の講義を受けた後、初めて国家試験(※准看護師は都道府県知事によって免許が交付される)を受けることができるものである。よく知られた例を挙げれば、「医師の国家試験は大学の医学部に6年間通って受験資格を得られる」という具合に。薬剤師も当然、国家試験に受からなければいけない訳だが、実は2006年を境に大きく状況が変わっている。東京都内に勤務する30代の薬剤師が言う。「僕らの時代は4年制の大学でしたが、2006年に医学部同様、6年制が取り入れられることになりました。理由としては、医師が医学のスペシャリストであるように、薬剤師は薬のスペシャリストであるということを明確にする為です。薬剤師サイドからすれば、社会的地位の向上ということも考えていたと思います。当然のことながら、国家試験を受験する資格も、6年制の薬学部を卒業しなければ与えられません。ここ10年弱で、薬剤師にとって一番変わった点はそこに尽きますね」。4年制から6年制への移行というのは、かなり大きな変化だろう。ところが、現状は4年制の薬学部も残っていたりするから、部外者から見れば少しややこしい。「6年制じゃなければ薬剤師になれない訳ですから、殆どの人が6年制を目指すと思います。『どうせ薬学部に行くなら、資格はきちんと取っておこう』と。でも、4年制の薬学部で、しかも一般的にハイクラスと言われている大学だと、事情は変わってきます。抑々、そのような大学の薬学部に進学する人は、『薬剤師になろう』とは思っていない。基本的に研究者か、或いは大手企業への就職を念頭に置いている。ですから、ざっくりとですが、今、6年制の薬学部に通うのは薬剤師の資格を得たい人。4年制の薬学部に通うのは、研究職等学術の世界に行きたい人と考えればいいと思います」(同)。

この4年制から6年制への移行は、未だ10年しか経っておらず、国としても、4年制の大学を卒業した人の為に薬剤師の受験資格への道を開いている。修士課程や博士課程の修了者(※2年以上の在籍が必要)、或いは薬剤師に必要な6年制大学と同等に実務学習を含めて単位を取得していること…等を条件に、国家試験を受けることができるのだ。一義的には、薬剤師の社会的地位の向上、そして研究者等専門職を充実させる為の改革であるが、未だ多少の試行錯誤は続くということだ。薬剤師になるには、当然のことながら、大学で専門教育を受けなければならない訳だが、やはり国家試験、それも人の命を預かる医療の資格とあって、在学中の努力も並大抵ではないようだ。首都圏で勤務する男性薬剤師は、こう話す。「私の場合は私立大学だったのですが、大学の勉強に対する締め付けが凄かった。兎も角、合格率を気にするので、国家試験の前提となる卒業試験がめちゃめちゃ難関なのです。つまり、国家試験を成績不良で落ちそうな学生は出口を締めて卒業させない。中には卒業試験に比重を置き過ぎて、肝心の国家試験に落ちた学生もいる(笑)。それくらい大変です」。薬学部もそうだが、医療系の資格を取れる私立大学は合格率を実に気にする。理由は簡単で、それによって入学希望者が増えるからである。それこそ、合格率100%等と入試案内に謳えば、志望者が殺到することもあるからだ。因みに、平成27年度の薬剤師国家試験の合格率は76.85%。同年の医師の国家試験の合格率が91.5%である。前出の男性薬剤師の時は「80%以上だったとは思う」というから、大学側としても「少しでも合格率を上げたい」と思うのは仕方ないかもしれない。「私の大学では、3年生の時に研究室に配属されるのですが、成績が悪い下位50名は配属こそされますが、実際には研究はさせてもらえませんでした。何をしているか? そりゃ、勉強ですよ。まるで予備校のような勉強室に集められ、ひたすら勉強、勉強の毎日です。勿論、遊んでいる暇なんてありません。下手したら、大学受験の時よりハードな勉強かもしれません(笑)」(同)。日本の大学は入り口こそ狭いが、出口は緩いという印象もある。そう考えると、やはりタイトな学部だとは言えるだろう。そんな薬学部だが、どんな学生が集まるのだろうか? 「中には、医者の息子だけど、医学部に行くには学力が足りなくて、3浪・4浪してから薬学部に入ったという学生もいました。そういう滑り止め感覚の人もいるのは確かです。こう言っちゃ何ですが、看護師(看護学科)には合格できても医学部は無理…みたいな中途半端なところがあるのは否めません。但し、めちゃめちゃ学費が高い歯学部ほどじゃないにしても、私大の薬学部は学費も高いから、親の負担は相当なものだと思います。親に負担をかけない為には、奨学金を得るか、国公立の薬学部に行くしかない。それだけに、薬剤師として生きていくのか、研究職等に就くのか、それなりに将来の目的意識は持っていないとダメでしょう」(同)。医師ほど大変ではないが、さりはさりとて医療系の学問であるから、勉強のレベルは低くない――。薬剤師志望者のジレンマが見て取れるようだ。

薬剤師を取り巻く環境が、ここ10年ほどでドラスティックに変化している状況で、当の薬剤師志望者たちは自らの行く道を模索している。そんな状況下で国家試験に通り、薬剤師の資格を手にした彼らは、社会をどのように生きるのだろうか? 「確かに色々大変なこともありますけど、薬剤師になればそれなりのメリットはあります。その内の1つが、薬剤師の資格が現行では一度取れば一生ものということです。医師免許同様、何か重大なトラブルでも起こさない限り、それを失うことはない。不確かな世の中だけに、その点は魅力的だと思います」(首都圏で勤務する薬剤師)。日本人は特に資格信仰が顕著であるが、この薬剤師が言うように、実利的という意味では、医師免許は勿論、薬剤師の免許も資格としては有益であろう。そんな薬剤師資格を象徴するような話がある。「大学を卒業して薬剤師の資格を取ってから、比較的現場に入るまでが長いのが薬剤師の特徴でもあります。正直、『薬剤師にはいつでもなれる』という感覚がある。資格を持っているのだから当然と思うかもしれませんが、これを医師免許で考えて下さい。医師免許を取ったら、普通はそのまま医学の道に進みますよね? 勿論、研修医制度等、医師には医師の理由がありますが、薬剤師にとっては資格を持っていることが大切で、資格即薬剤師として現職に就く必要性はあまりないのも事実なのです」(30代の薬剤師)。第11回でも触れているが、このある意味の余裕というかゆとりは、医療系の仕事の中でも独特のようだ。実際、こんなケースが多いという。「薬剤師として働くことは、いつでもできる。でも、新卒で企業に入ることは人生で一度しかできません。それだけに、『先ずは普通の企業に入ってみよう』と思う薬剤師は少なくない。それと、製薬会社や研究機関等、一見、薬剤師資格が有利そうな業種でも、年度や社の方針によって薬剤師資格があまり意味をなさない時もある。かといって、研究者になるには修士程度のレベルは最低でも必要ですからね。それだけに、薬学部を出て薬剤師になったばかりの人間は、より幅広い視野で職業選択をするようになるのです」(同)。実際、薬学部卒業の薬剤師の就職は多様で、中には「厚労省麻薬取締部に就職する人間もいる」というが、それはやはり限られた人たちだ。難関な専門職であるのに、当事者たちはそれをあまり意識していないようにも見える。不思議なことだが、前出の30代薬剤師は、最後にこう語る。「一言で言えば、つぶしがきくのですよ。いざとなればパートでも食っていける。そういう意味では重宝する資格ですね」。確かにそのようである。


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