【労基署ショックが日本を襲う】第2部(07) 『ヤマト運輸』の超高等戦術…5年をかけずに間に合わせる決意表明

セールスドライバーの反乱から始まった『ヤマトホールディングス』のピンチ。だが、巧みな情報戦術により、すんでのところでブラック企業落ちを免れた。ヤマトが防衛できた原因とは?

20170807 07
宅配業界のガリバーこと『ヤマト運輸』を中核子会社に持つヤマトホールディングスは、用意周到だった。全ての発端は昨年8月、横浜北労基署から是正勧告を受けたことだ。勧告を受けたのは神奈川県平川町支店。同支店に勤務する元セールスドライバー2人が、「自分の労働実態が違法なのではないか?」と労基署へ駆け込んで申告したのだ。元ドライバーの1人の“36協定”(※労使で締結)では、所定労働時間(※1日8時間)を超えて働ける労働時間の上限を、月95時間且つ年間521時間とされていた(※2016年2月時点)。ところが、実際の残業時間は年間900時間前後あったとされている。この件自体は今年3月に調停が成立しているが、これがきっかけとなってヤマトHDは、全社的に未払い残業代190億円を支払う羽目になった。最初は様子見を決め込んでいたヤマトHDだったが、経営陣は労働問題が火を噴くことの恐怖を承知していたのだろう。3月から4月にかけて、「遅きに失したところはあったが、経営陣が『働き方改革をしっかりやる』と腹を括ってからの情報戦術は、見事であるとしか言いようがない」(あるメーカーの人事担当)。実際、矢継ぎ早に重要な意思決定をアナウンスしていった。ヤマトHDが並行して進めたのは、以下の3つである。第1に、労働組合を巻き込んで、労使協調で足並みを揃えたこと。第2に、大口顧客である『Amazon.com』を“仮想敵国”として設定し、(後に値上げを呑んでもらう為に)消費者の同情を集めたこと。そして最後の第3に、働き方改革の3点セット(※①27年ぶりとなる宅配便基本運賃の値上げ、②宅配便の総量コントロール方針を決定=社員の総業務量の減少、③社員9200人の増員)を表明し、社員を大事にする方針を鮮明にしたことである。

組合・消費者・社員…。関係者の其々に配慮した超高等戦術を駆使したと言っていい。ともすれば、ヤマトHDはブラック企業へ転落していたかもしれなかった。本はと言えば未払い残業代のトラブルである。しかも、「労基署から複数回是正勧告を受けていたのだから、“真っ黒”と批判を受けても反論し難い筈。しかし、巧みな情報戦術と、少なくとも3桁億円の持ち出しを決めたことで、世間の納得感を得られた」(厚生労働省幹部)。実際、2018年3月期は社員給料が前年同期に比べて約160億円増える。その上、労務管理システム等のIT投資に約90億円を投じることも決めている。労基署対策としては十分過ぎるくらいの人事部の防戦だ。この決断ができたのは、ヤマトHDに確かな自信と財務余力があったからに他ならない。2015年度の宅配便市場シェアでは、ヤマト運輸が47%、『佐川急便』が32%、『日本郵便』が14%となっており、上位3社で9割強を占める寡占市場だ。3社の中でも圧倒的首位に立つヤマト運輸が値上げに踏み切れば、競合も追随することは目に見えていた筈だ。結局、競合他社が値上げに追随する方針を示し初めており、国内市場における競争条件がヤマトHD(ヤマト運輸)に不利に働く訳ではない。尤も、これで一件落着なのかと言えば、そう簡単な話でもない。政府の働き方改革では、自動車の運転業務(※運送業界)には5年の猶予期間を経た後に、“年960時間以内の規制を適用”等の上限規制が課されることになった。「簡単ではないが、5年をかけずに間に合わせたい」と、ヤマト運輸人事戦略部の渡邊一樹部長は意気込みを見せる。また、ある労働基準監督官は、「ヤマト運輸らのドライバーが朝から晩まで走り回っている状態は解消されていない。これが無くならないと、労働条件が完壁に改善されたとは言えない」と言う。別の監督官は、「業界首位に君臨し続ける企業には、競合に抜きん出る“何か”がある。監督官がそこに目を付けることもある」と言う。その“何か”が、過重労働の下に成り立っている何か――人繰りやコスト削減だったならば、監督官は容赦なく飛んでくる。只でさえ、大企業への臨検は増える傾向にある(※左上画像)。実際、5割超の企業が勧告・送検を受けている。いつの時代も、人事部にとって労基署がプレッシャーを与える存在であることに変わりはない。


キャプチャ  2017年5月27日号掲載
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