【熱狂!アニメビジネス最前線】(16) 職場で使える! ガンダムキャラクターの性格分析

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『機動戦士ガンダム』は、1979年のテレビ放映開始以来、息長く支持されているアニメだ。魅力の秘密は、架空の宇宙戦争ながら、戦時下における人間の心理と関係をリアルに描いた点にある。従来のアニメの類型には無い、多様で独特な性格・気質のキャラクターが絶妙な関係で配置され、物語と共に成長してゆく。人が物語を欲するのは、娯楽として楽しめるからだけではなく、キャラクターに自分を投影したり共感したりできるから。だから、ガンダムという物語に、世代を超えて大勢が魅せられるのだ。ファンにとって最も興味が尽きないキャラクターといえば、間違いなくシャア・アズナブル(※左画像)だ。主人公であるアムロ・レイのライバルで、赤いモビルスーツ(※戦闘用ロボット)に乗り、“赤い彗星”と呼ばれる。アムロよりも人格がダイナミックに描写されており、ガンダムはシャアの物語と言ってもいいほどである。彼の性格の最大の特徴は二面性だ。表面的には華やかで、知的な策士という印象だが、シリーズを通して見ると、実は極めて行き当たりばったりで行動していることがわかる。また、強い人間のようでいながら、非常に傷付き易い面があり、他者への依存心を持つ。アムロに精神的に依存しているようにさえ見える時期もある。こうしたギャップが、シャアにカリスマ性を齎している。カリスマ性とは、優れていれば備わるものではない。ガンダムでも、パイロットとしての資質はアムロが上だが、カリスマ性ではシャアに遠く及ばない。実在の人物で一例を挙げれば、早世したミュージシャンの尾崎豊氏はカリスマ性があった。豊かな音楽的才能に加え、折れ易さ・傷付き易さがあったからこそ、ファンはあれほどまでに熱狂したのだ。

ただ、注意すべきは、シャア的な人には所謂ナルシシストが多いこと。シャアが好んで赤という色を身に纏うのも、「赤という色の持つドラマチックで人の感情に訴える性質が、自分の人生を表現していると考えるから」と解釈できる。しかも、赤い軍服だけでなく、派手なマントを翻すあたり、ナルシシズムに酔っているとしか言えない。現実社会でも、シャア的な人は自分の人生に酔い、ルールを破ることそのものに快感やカタルシスを覚えるケースが多い。それでいて、誰か頼りになる後ろ盾がいないとダメで、単独では我が道を突き進めない。戦場の同僚や後輩にいると、周りは中々大変だ。また、このタイプが管理職だと、朝令暮改を連発する。部下はかなり苦労させられそうだ。一方、主人公のアムロは、ガンダムの能力を120%引き出せる唯一のパイロットで、物語のヒーローだ。だが、その性格は特に、物語の前半では非常に暗く、自分という砦から出られない人物として描かれている。暗さの一因は、父親との関係にあろう。アムロの父親は、自分が宇宙に魅了されたからといって、子供まで宇宙のコロニーに連れてきてしまう。要するに、自分の価値観の押し付けだ。アムロも子供として、父親の行動が自分への愛情に基づくものではないと無意識のうちに理解している。ただ、好きなことにしかエネルギーを注げない点では、アムロも父親にそっくり。だから、彼の内面では父親嫌悪と自己嫌悪とが一体になっており、それが暗さを生んでいる。アムロのように、好きなことをやると能力を発揮するタイプは、エンジニアや研究者に多い。例えば、トーマス・エジソンやスティーブ・ジョブズがこのタイプだ。アムロ型は、仕事の水準は極めて高い。シャアのようなルール破りによる鬱散には関心がなく、自分がこれと思ったことを、周りとの協調など気にせず、どこまでもやり続けてしまう。共同作業やチームワークは苦手な為、本人は誠実でも、他人からは自己中心的に見え、嫌われてしまう。こういうタイプに組織で力量を発揮させるには、「君に一任するから最後までやり抜いてほしい」と言って、全面的に任せるのが一番。バランスや協調を強いると能力を発揮できない。だが、日本企業はゼネラリストを求める傾向が強く、結果としてアムロ型の人間の資質を潰しがちだ。日本からジョブズのような異才が生まれないのは、ここに一因がある。敵側の総帥であるギレン・ザビは、所謂悪役であるが、見る者の記憶に残る人物だ。理知的に物事を判断し、原理原則で動く冷徹なリーダータイプ。外見的には細身だが、がっしりとしていて、上に伸びるように直立している。現実社会でも、この体型の人は理的な正しさを重視し、筋を通すことやルールの順守を自分にも他者にも求めることが多い。ギレンが父のデギンを殺したのは、囲碁のように周到に敵を撲滅することが正しい――つまり、原理だと信じて疑わない彼にとって、敵方と和平を結ぼうという父の政治家的な妥協は受け入れ難かったから。精神分析では、男児の父親殺しはエディプスコンプレックス、つまり父の支配に対する恐怖心の表れと見做される。ギレンの父親殺しは、彼の権威的で融通が利かない性格も手伝って、現実よりも理想や原理の完璧さのほうが優位だと見做した結果だ。

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だが、父を殺害したことで、ギレンは妹のキシリアの恨みを買い、射殺されてしまう。こういった自身の信じる正義には揺るぎなく従うが、それが故に理念に埋没し、現実の動きに関心を無くしてしまうタイプの人は、昨今の日本でも散見される。筆者が最も魅力を感じるのは、アムロ(※右画像)の隣人であるハヤト・コバヤシだ。アムロというスタープレーヤーの脇でぱっとせず、彼自身もアムロに対してコンプレックスを抱いている。だが、周囲に軽んじられながらも特訓を重ね、とうとう1人でガンタンク(※モビルスーツの一種)を操れるようになるのだ。アムロの幼馴染みの女性であるフラウ・ボゥは、アムロに思いを寄せていたが、結婚相手にはハヤトを選んでいる。「何故、アムロと結婚しなかったのか?」という議論がファンの間にあるが、これは現実社会でもまま起こること。フラウが現実を直視できる女性に成長し、「暗くて極端なアムロに振り回されては幸せを逃す」と直感的に判断したとしても不思議はない。そして、気質的には自分と似たものがあり、同じ世界に生きて自分を守ってくれそうなハヤトを伴侶に選んだのだ。ハヤトがいつも誠実に振る舞い、伴侶を得てどんどん男らしくなっていく姿こそ、人間の成長の軌跡そのものだろう。因みに、筆者は自分自身を、ややアムロ型と自覚している。彼ほどウジウジしてはいないが、シャアのような大舞台で見得を切るナルシシズムは持ち合わせていない。貴方は、自身や身近な人を、どのキャラクターに投影するだろうか? (精神科医 名越康文)

※本稿は筆者の分析に基づくもので、原作者・アニメ制作者の意図とは無関係である。


キャプチャ  2017年4月1日号掲載

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