【安倍改造内閣再浮上なるか】(上) 崩れた“1強体制”

20170808 05
「国民の声に耳を澄まし、謙虚に丁寧に国民の負託に応える為、全力を尽くす」――。安倍晋三首相は、内閣改造直後の今月3日の記者会見で8秒間、目を閉じて頭を下げた。首相から見える政治風景は、この数ヵ月で変わった。高支持率を背景に異論を封じてきた“安倍1強”体制は崩れ、内閣改造後の緊急世論調査でも小幅上昇に留まった。嘗てなく人選に悩んだ。「世論の空気をわかっていない」。自民党三役に盟友の元経済財政再生担当大臣・甘利明氏を起用しようとすれば、献金疑惑での辞任を引き合いに反対された。挙党態勢を訴える為に起用した野田聖子総務大臣は、足元を見るように同日の就任の記者会見で、来年の党総裁選への出馬に意欲を示した。高い支持率と、2012年の政権交代前の衆院選を含む国政選挙で4連勝という選挙の強さが、安倍1強の基盤だった。ところが、学校法人『森友学園』・『加計学園』の問題への対応や、今月の東京都議選の惨敗で、首相はそのどちらも失った。つい数ヵ月前まで無風と言われた来年秋の党総裁選での3選も見通せない。首相は経済分野で実績を重ね、支持率が回復するのを待つ戦略だ。先ずは党内の不満を鎮める為、融和の人選に腐心した。

憲法9条改正に慎重な岸田文雄前外務大臣を党政調会長に充てたのも、その一環だ。首相は5月に2020年までの新憲法施行を目標に掲げたが、4日の日本テレビの番組では、「スケジュールありきではない。私の考えは申し上げたので、後は党で議論して決めてほしい」とトーンダウンした。これまでのトップダウンの政治手法を改め、表向きは積み上げ型の意思決定に映る。首相と距離を置く元党幹部も、「以前の首相なら、異論封じで盟友重用の人事にした筈。反省は感じられる」と話す。尤も、これで再び政権基盤が安定軌道に戻る訳ではない。最大の関門は野党だ。安倍内閣の支持率低迷に反比例するように、民進党も代表選の実施等、生気が出てきた。野党が秋の臨時国会で対決姿勢を強めるのは必至だ。与党内では追い込まれる前の早期解散論も囁かれる。首相は「旧民主党政権よりマシ」と、野党との違いを際立たせた対決型政治で、政権と自民党内に求心力を生んできた。今ではその対決型が非難され、支持率急落の一因になっている。今後、国会では採決強行を繰り返す従来の対決型の手法は取り難い。臨時国会は、働く時間ではなく成果に応じて賃金を払う“脱時間給制度”を含む働き方改革関連法案が焦点となる。政府と一旦、修正案で合意した連合執行部が、内部で「政権と対峙する姿勢に欠ける」等の批判を受けて撤回した。衆議院解散は来年12月までにはある。与野党対決法案となれば、野党と共通点を探って法案成立を目指す熟議の政治は難しい。対決を避ける為に法案成立を先送りすれば、改革の停滞を招く。政争に傾斜せずに、経済分野で着実に成果を上げる知恵を絞るしかない。日本を取り巻く安全保障環境は厳しい。弾道ミサイルを発射し続ける北朝鮮や、台頭する中国等、北東アジア情勢は緊迫の度を増す。経済を活路に政権立て直しを急がなければ、地域の安定もままならない。 (政治部 島田学)


⦿日本経済新聞 2017年8月5日付掲載⦿
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