【安倍改造内閣再浮上なるか】(下) 問われる“経済最優先”

20170808 06
安倍晋三首相は今月3日、政権の原点である“経済最優先”に立ち戻ると強調した。金融緩和と財政出動に始まるアベノミクスが一定の成果を上げたのは、日経平均株価が4年7ヵ月の安倍政権で倍になったことでも明らかだ。求められるのは、経済の好循環を後押しする構造改革に取り組む強い覚悟。その本気度が疑われれば、市場は賞味期限切れを察し、“アベ離れ”で応じるだろう。「アベノミクスは前進したが、目標は未達だ」――。今月末、『国際通貨基金(IMF)』はこう報告書で指摘した。中々デフレ脱却宣言に辿り着かない日本への視線には、もどかしさが滲む。企業は、世界経済の成長も追い風に最高益を記録し、設備投資にも前向きだ。完全失業率は3%を下回るほぼ完全雇用状態にある等、好条件も増えており、賃上げと消費増という自律回復の波に乗る一歩手前まで来た。この流れを止めず、本物にするのが改造内閣の大きな政策課題だ。人口減で労働供給の制約が強まる中、成長率底上げには、あらゆるモノがインターネットに繋がるIoTや人工知能(AI)を活用した生産性の向上が不可欠。報酬引き上げで従業員に報いる企業に、政府は税制等で支援する構えだ。「官民が呼吸を合わせられるかの分岐点にある」と、経済官庁の幹部は力を込める。

アベノミクスは、金融緩和と財政出動に続く“第3の矢”として、規制緩和を含む成長戦略を謳っていた。だが、農業や医療で岩盤規制は残る。学校法人『加計学園』の獣医学部新設を巡る問題では、国家戦略特区を認定するプロセスに疑惑が浮上したが、「特例を認めて改革の突破口にしよう」という特区の発想は、構造改革に必ず資する。既得権や省庁縦割りにメスを入れ、規制の岩盤を刳りぬけるのは、何といっても首相の強力な指導力だ。成長戦略の旗印だった『環太平洋経済連携協定(TPP)』が、アメリカの離脱で不透明になる中、安倍政権は『ヨーロッパ連合(EU)』との経済連携協定(EPA)合意で、自由貿易堅持の意志を示した。これを弾みに、アジアを軸とした自由貿易圏作りを主導すれば、成長戦略が再びはっきり見えてくる。地方創生・女性活躍・1億総活躍・働き方改革…。安倍政権は、毎年のように経済政策の看板を掛け替え、次は“人づくり革命”だという。教育や育児支援は大事だが、将来不安の根っこにある社会保障や財政の問題を避けて通れない。国は国内総生産(GDP)の倍の借金を抱えるのに、社会保障費膨張等で年30兆円以上の新たな借金を重ねる。公的保険から医療サービスに支払う単価である診療報酬と介護報酬は来年春、同時改定というタイミングだ。長期入院の患者が制度を跨いで介護に移り易くなるような仕組みを作り、広い視点で見直す好機になる。「2019年10月へ再延期した消費増税を、これ以上先送りすべきではありません」。今月中旬、安倍首相を囲む夕食会で経済界首脳が直言した。首相は昨年春、「世界経済はリーマン危機前に似ている」と唐突に表明。財政の苦境を改善する為の消費税率10%への引き上げを再び延期し、経済界を失望させた。税収で政策経費を賄えるかを示す基礎的財政収支を、2020年度に黒字にする――。そんな約束が絶望的になったのに、「経済成長で自動的に上向く楽な目標に切り替えてやり過ごそう」というムードが政府内に漂う。安きに流れるばかりでは不安は拭えず、首相の言葉も企業や個人に響かない。 (編集委員 上杉素直)


⦿日本経済新聞 2017年8月6日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 政治のニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR