【堅調景気の実相】(下) けん引役・米中、減速懸念

20170809 05
世界経済は堅調に推移している。『国際通貨基金(IMF)』は、今年の成長率が3.5%と、昨年の3.2%から高まると見込む。先進国が底堅く、新興国は3年ぶりの高い伸びになる。日本経済も外需に支えられ、輸出は1~3月まで3四半期続けて前期を上回っている。だが、牽引役の米中の成長の基盤には不安を抱える。1~6月に8年ぶりに前年を下回ったアメリカの新車販売。アメリカの銀行大手『ウェルズファーゴ』は、4~6月期の自動車ローンの新規実行額が前年同期比45%減。ティム・スローンCEOは、「今年後半も下がり続けそうだ」と慎重にみる。需要一服の他、低所得層での焦げつき増が、融資の厳格化を通じ、消費を抑える。4~6月期のアメリカの実質成長率は、前期比年率2.6%。悪天候に祟られた1~3月期の1.2%からは持ち直したが、賃金の伸びが鈍い。昨年末には回復の目安とされる3%を窺ったが、年明け以降は2%台半ばに逆戻りした。“完全雇用”の下でも、内需の歯車が力強く回らない。「家賃の上昇や医療費の増加が、可処分所得を圧迫している」。アメリカの運用会社『TCW』のタッド・リベレ氏は、アメリカの消費の先行き不安を強調する。中国も波乱含みだ。4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比6.9%増と高い伸びを保ったが、5年に1度の秋の共産党大会を意識したインフラ投資が支えた面もある。

6月下旬。雲南省昆明で2本の地下鉄を新設する槌音が響いていた。2020年の完成を目指す両線の総工費は約480億元(約8000億円)。官民パートナーシップ(PPP)と呼ぶ民間資本を活用した投資だ。PPPの事業総額は、計画段階を含め、3月末で14兆6000億元に達し、1年で7割増えた。投資マネーが企業を潤し、賃金増を通じて個人消費を下支えする。「ブームは党大会以降も続くのだろうか?」。ある鉄鋼メーカーの幹部は気を揉む。投資の過熱や無駄な工事も指摘され、「年末以降に景気の流れが変わる」との懸念がある。海運市況を示し、世界景気に先行するとされるバルチック海運指数は、3月の高値から3割下落した。『日本郵船』の内藤忠顕社長は、「想定より少し悪い」と語る。中国が輸入する鉄鉱石価格の下落が一因だ。「中国景気の冷え込みによる市況の腰折れ懸念は拭えない」(海運ブローカー)という。主要国が金融政策の正常化へ動いていることも、不安要素になり得る。6月末以降、ユーロ圏、イギリスの中央銀行総裁が緩和縮小に触れ、カナダは約7年ぶりの利上げを決めた。アメリカの『連邦準備理事会(FRB)』は、「利上げは急がない」としつつも、資産圧縮は秋にも始める意向だ。“カネ余り”の下で株高を謳歌するウォール街の関係者も、各国中銀の動きから目が離せない。正常化の試みは世界経済が安定してきた証しだが、拙速な動きは景気を冷やしかねない。金融緩和という“痛み止め”無しの安定成長に向け、政策の備えは心許無い。アメリカのドナルド・トランプ政権は医療保険制度の見直しに手間取り、10月までに必要な債務上限引き上げの目途は立たない。米中の包括経済対話は物別れに終わった。世界経済をリードすべき両国が、貿易摩擦で世界経済を撹乱するリスクさえ浮かぶ。日本経済はなお、海外頼みの構図が続く。安定成長の陰に隠れた火種への警戒は怠れない。 (取材・文/本紙景気動向研究班)


⦿日本経済新聞 2017年8月2日付掲載⦿
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