【50歳のASEAN】(上) 経済第一、進む“親中”

『東南アジア諸国連合(ASEAN)』が今月8日、発足から50年を迎える。民族も政治体制も異なる国々が“緩やかな統合”を目指し、一体感と、国際社会での存在感を少しずつ高めてきた。ただ、多様性を認め合うが故に、「統一的な行動を取り難い」という“限界”も指摘される。ASEANの現状と課題を探る。

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「安全への責任は(中国の)泰山よりも重い」「契約を守り、良質なものを造ろう」――。好景気で建設ラッシュに沸くカンボジアの首都・プノンペン。ホテルやオフィスビル等、大規模工事の現場では、中国語の看板が目立つ。工事の大半を中国企業が請け負っているからだ。中国人労働者も多く、あちこちで中国語が飛び交う。「中国にいると錯覚するだろう?」。劉と名乗るへルメット姿の男性(37)は、そう言って笑った。2016年の中国によるカンボジアへの直接投資は、国別で最多の約5億ドル(約553億円)と、カンボジア向け全体の約22%を占める。2018年の総選挙を視野に、インフラ(社会基盤)整備で国民の支持を繋ぎ止めたいフン・セン首相。経済支援を足がかりに、中国の影響力を強めたい習近平国家主席。両者の思惑は重なる。中小国連合であるASEANは近年、日米中等の大国を取り込みつつ、相互に牽制させることで、地域で主導権を確保しようと腐心してきた。『ASEANプラス3』や『ASEAN地域フォーラム(ARF)』といった域外国との協力枠組みに象徴される。その大方針が今、揺らいでいる。アメリカのドナルド・トランプ政権の明確な東南アジア政策が未だ見通せない一方、南方への膨張を続ける中国が、経済力を武器にASEAN内で“親中派”を着々と形成しようとしているからだ。

実際、カンボジアは昨夏、南シナ海での中国の主権主張を否定したハーグの仲裁裁判所判決直後のASEAN外務大臣会議で、判決に共同宣言で言及することに強硬に反対。今年4月にはフン・セン首相が、習主席の演説等を纏めた本『習近平 国政運営を語る』のクメール語版出版式典で、「カンボジアと中国の関係は他の国々の良い手本になる」とまで語った。「カンボジアはASEANにおける中国の代弁者になった」。在東南アジアの中国外交筋は言い切った。中国がASEAN切り崩しの新たな標的としているのが、アメリカの同盟国にも拘わらず中国寄りの姿勢を取るフィリピンだ。中国は、国内経済を重視するロドリゴ・ドゥテルテ大統領が昨年訪中した際、フィリピンが仲裁裁の判決を棚上げする見返りに、インフラ整備等巨額の経済協力に応じた。6月にはミンダナオ島でのイスラム過激派掃討作戦に武器を無償供与。同大統領は、「比中関係の新たな幕開けだ」とぶち上げてみせた。中国がフィリピンとの関係強化を図る目的は、「南シナ海での天然資源の共同開発実現にある」(中国政府関係者)。南シナ海での自国の主権を主張するフィリピンとの協力が成功すれば、領有権問題で中国と対立するベトナムに共同開発受け入れを迫る圧力となり、南シナ海情勢の沈静化に繋がると中国は踏んでいる。ただ、ASEAN諸国の多くは、列強の植民地となった過去の経験から、大国が地域で覇権を求める動きには基本的に敏感だ。南シナ海問題に詳しいホーチミン市法科大学のホアン・ベト講師は言う。「過度な対中傾斜は、国の生殺与奪の権を中国が握ることを意味する。アメリカのASEANへの関与が低下する中、ASEANの大勢は、日本がその穴を埋めることを期待している」。


⦿読売新聞 2017年8月1日付掲載⦿
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