【50歳のASEAN】(中) 域内で分業、残る格差

20170810 02
1976年に域内の経済協力をスタートさせた『東南アジア諸国連合(ASEAN)』は2015年末、ヒト、モノ、カネの移動に対する国境の“壁”を取り除き、共に成長を目指す『ASEAN経済共同体(AEC)』を発足させた。戦後日本が、首都圏から九州を結ぶ太平洋ベルトの下で輸出産業を発達させて経済発展したように、域内人口約6億2000万人の巨大市場を擁するASEANもまた、国境を超えた生産ネットワークを構築し、生産基地としての魅力も増している。バンコクから車で約4時間かかる力ンボジアとの国境の町・アランヤプラテート。1970年代半ばに、国を逃れたカンボジア人向けの難民キャンプから始まった町には、安価な衣料や日用品等が集積し、東南アジア最大級の国境市場が広がる。国境付近では、通関に向かう巨大トレーラーの車列が約1㎞も続いていた。域内でも人件費が安いカンボジアには、先進各国の企業が相次ぎ工場を進出させているが、輸出に必要な貿易港が整備されていない。その為、国内で作った部品や製品は隣接するタイやベトナムに運ばれ、組み立てられる等して国際港から輸出される。こうした国際分業に欠かせない輸送路や通関制度の整備も進んでおり、「何れ1日あたりの処理量は倍増する」(カンボジア税関)見込みで、域内貿易の増加にも期待が高まる。ただ、「国際分業は、高度な産業が集積する地域と、労働力を供給する地域との間での格差固定や拡大に繋がる」との懸念もある。

6月下旬、この町にタイ出国を目指すカンボジア人が殺到した。タイ政府が不法就労の罰則を大幅に強化した為で、僅か2週間で4000人超が出国した。バンコクで清掃員をしていたチュアン・ヤサさん(51)も、その1人だ。10年以上真面目に働いたが、「『正規の資格が切れているから』と突然解雇され、給料も貰えなかった」と言う。タイは、ミャンマー、カンボジア、ラオス等といった、貧困層が多く、求職者が多い国からの移民労働者の受け皿になってきた。賃金高騰で、建設現場、介護、飲食店等の職場は、「ミャンマーやカンポジア等からの労働者がいなくては成り立たない」(『タイ飲食業協会』のラッダー・サムパウトーン会長)状況だ。結局、タイ政府は規制の実施を延期しているが、ラッ ダー会長は「飲食店約2300軒が廃業に追い込まれる恐れがある」と指摘する。建設現場で働くミャンマー人のオウン・ウインさん(45)の月収は200ドル(約2万2000円)。オウンさんは、「同じ職場のタイ人より少ない。タイを出たいが、そのお金も無いので無理だ」と嘆く。『国際移住機関(IOM)』の調査では、ミャンマー人労働者の約8割が母国での就労を望んでいた。オウンさんも、「ミャンマーが発展した国になれば、直ぐにでも戻りたい」と話す。プノンペンに2014年開業した日本の『イオンモール』は毎週末、多くの家族連れで賑わう。ただ、殆どはウィンドウショッピングで、電気技師のスーン・チャントルさん(52)も「今は未だ買えるものは少ない。経済が良くなって、給料が上がれば、先ずは電化製品を買いたい」と話す。ASEANの貿易額は、この30年で約15倍に伸び、海外からの投資も増えている。ただ、1人あたり国内総生産(GDP)では、最も高いシンガポールと最も低いカンボジアとの差は約43倍。城内格差をどう乗り越え、結束していくのか? “世界の成長地域”アジアで進む経済統合の課題は大きい。


⦿読売新聞 2017年8月2日付掲載⦿
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