【50歳のASEAN】(下) 対IS連携模索

20170810 03
インドネシアのスラウェシ島北部マナドに先月29日、同国とフィリピン、マレーシア、ブルネイの他、『東南アジア諸国連合(ASEAN)』域外のオーストラリアやニュージーランドも加えた6ヵ国の外務大臣や治安当局幹部らが集まった。会議では、イスラム過激派組織『IS(イスラミックステート)』を支持する勢力の地域での拡大阻止に向けた情報共有等で一致。地元メディアによると、インドネシアのウィラント政治治安調整大臣は会議後、「劣勢に立たされたISが、今度は東南アジアに拠点を築こうとしている」と述べ、危機感を露わにした。この日、出席者らの念頭にあったのは、マナドからセレベス海を挟み、対岸にあるフィリピン南部・ミンダナオ島の深刻な状況だ。ISに忠誠を誓う武装集団約500人が5月23日、同島西部マラウイの一部を占拠。ロドリゴ・ドゥテルテ政権は島に戒厳令を敷き、掃討作戦を続けているが、未だ鎮圧できていない。これまでの戦闘で軍兵士111人、過激派戦闘員460人が死亡。過激派に殺害された民間人は45人に上る。インドネシアとマレーシアでは昨年来、ISによる爆弾テロやテロ未遂が断続的に発生しているが、マラウイの様相は過去の事例とは異なる。規模が大きい上に、推定約40人の外国人戦闘員が含まれ、テロリストの国際ネットワークの存在が示されたからだ。

フィリピン軍が殺害し、確認した戦闘員の出身地は、インドネシア、マレーシア、サウジアラビア、イエメン、ロシア南部チェチェン共和国と様々だ。ミンダナオ島やタイ南部等には以前から、反政府武装勢力が存在する。多くは小規模で活動もバラバラだが、ISがそれらを結び付ける可能性がある。イスラム過激派の動向に詳しい『紛争政策分析研究所』(ジャカルタ)のシドニー・ジョーンズ所長は、「マラウイを鎮圧しても、東南アジアでのIS問題の解決にはならない。別の場所でテロはまた起こり得る」と警告する。マラウイ情勢の緊迫化を受け、過激派対策にASEANが一体となって取り組もうという機運は高まっている。フィリピン、マレーシア、インドネシアの3ヵ国は6月、過激派による海賊行為が問題となっているスールー海で合同巡視を開始。6月上旬にシンガポールで開かれた『アジア安全保障会議』でも、過激派の動向等の情報を各国が共有する必要性が議論された。東南アジアでは21世紀に入り、イスラム過激派『ジェマアイスラミア』が先鋭化し、2002年に発生したバリ島での爆弾テロでは、邦人を含む202人が死亡した。フィリピンでは、マラウイの占拠にも関与するイスラム過激派『アブサヤフ』の活動が活発化した。それでも、各国が自国内のテロ対策に追われ、ASEANとしての連携は不十分だった。そのような経緯もあり、協力態勢の構築は未だ手探りの状態だ。例えば、合同巡視を始めた3ヵ国の間で、情報共有は必ずしも進んでいないという。ある関係者は、「テロリストへの内通者が軍内部にいるような国もある。機微に触れる情報は提供できない」と語った。イスラム教徒の人口が少ないカンボジア等は危機感が相対的に薄いとされ、加盟国間の温度差もある。インドネシアのルトノ・マルスディ外務大臣は、本紙の取材にこう語った。「テロリストの脅威はASEAN全体に迫っている。ドアの前か、既に家の中に入ってきているかもしれない」。50歳を迎えるASEANに、新たな重い課題が突きつけられている。

               ◇

吉田健一・杉目真吾・一言剛之・大重真弓・浜砂雅一が担当しました。


⦿読売新聞 2017年8月3日付掲載⦿
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