敢えて言おう、政治家が口利きをして何が悪い!――利益誘導は政治の本質、“権力は必ず腐敗する”という真理

学校法人『森友学園』・『加計学園』、そして『国際医療福祉大学』医学部を巡る安倍首相周辺の“ご意向”騒動。ここぞとばかりに野党やマスコミは追及しているが、政治の中では決して珍しいことではない。 (取材・文/編集プロダクション『清談社』 常盤泰人)

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世間もマスコミも、一体何故、こんな大騒ぎを続けているのか? ここ数ヵ月、国会審議の中心となっている安倍晋三首相を巡る数々の疑惑のことである。「何を今更ですよ。政治家が口利きをするなんて当たり前のこと。地方自治体の公共事業を巡る予算配分等が典型ですが、自分たちの利益の為に行政を動かそうと、権限を持つ政治家に働きかけるのは、日本中の企業や団体が日常的に行っていることでしょう。今回は、当事者が国のトップである安倍首相ということで話題を集めていますが、この疑惑のせいで、他の重要問題の審議が蔑ろにされてしまっている。劇場型政治の悪い側面が出ていますね」。反安倍陣営の政界関係者からですらこんな嘆きが聞こえてくるほど、今の国会は安倍首相のお友だち疑惑で持ち切りだ。改めて整理しておくと、先ず最初に浮上したのが、森友学園グループに纏わる不透明な国有地払い下げ問題だった。同グループが設立を目指していた“安倍晋三記念小学校”の建設予定地として払い下げられた国有地が、市価から8億円近くも安くなっていた事実が発覚。安倍首相だけでなく、昭恵夫人が同学園グループである『塚本幼稚園』の名誉校長となっていたことや、森友学園グループの籠池理事長夫妻の特異なキャラクターも相俟って、テレビや新聞が連日のようにこの問題を取り上げ始めた。その最中、同様の構図として注目を集め始めたのが、安倍首相と加計学園グループとの関係だ。こちらも、加計学園傘下の岡山理科大学獣医学部の早期開設に際し、「首相の意向」「官邸の最高レベルが言っている」等と記された文書が残されていた通り、内閣府から文部科学省に対して不透明な力が働き、“国家戦略特区”として認められる等、様々な便宜が図られたのではないかという疑惑である。

同グループの加計孝太郎理事長と安倍首相は、共にアメリカの大学に留学して以来、家族ぐるみの付き合いを続けてきた無二の親友という関係である。更に、ここにきて“第3の忖度問題”として囁かれているのが、今年1月4月に報じられた、『高邦会グループ』(高木邦格理事長)が千葉県成田市に開設した国際医療福祉大学医学部に纏わる問題だ。加計学園と同様、同大学も国家戦略特区として認可されており、成田市から23億円相当の土地を無償貸与された上、成田市と千葉県が建設費用の約半分に当たる約80億円の補助金を負担している。「同大学の高木理事長は、政界に豊富な人脈を持ち、安倍首相の側近たちにも食い込んでいます。キーマンとして名前が挙がっているのは、安倍首相と親しい元フジテレビアナウンサーで現神奈川県知事の黒岩祐治。黒岩はフジを辞めた後、同大学グループに関連する国際福祉総合研究所の副社長になっていたこともある」(地方紙政治部記者)。まさに、次から次へと疑惑が浮上している状況だが、何れのケースでも問題視されているのは、利益を得た学園側のトップが安倍首相やその周辺と近い関係だったことにある。つまり、「安倍首相が、私的に交流のあった“お友だち”に便宜を図る為、行政側に指示、或いは行政側が首相の意向を忖度した結果、国民の税金が注ぎ込まれたのではないか?」という疑惑だ。だが、果たしてこれらは本当に大騒ぎをするほどの“疑惑”なのだろうか? 道義的に問題はあるのだろうが、かといって安倍首相側が何らかの利益を受け取っていた訳ではない。法の範囲内での政治献金は行われていたにしても、それは一般的なものでしかない。少なくとも現時点で、公職選拳法や政治資金規正法に触れるような違法性は証明されていない。ここにきて森友学園問題では、塚本幼稚園のPTA収支決算報告書の“社会教育費40万円”の摘要欄に、昭恵夫人の名前が書いてあったということが根拠となり、「夫人にカネが渡っていたのではないか?」という疑惑が浮上している。また加計学園問題でも、「安倍首相が年間14万円の役員報酬を受け取っていた時期があった」とも報じられている。「但し、森友学園側の証言はコロコロ変わっていますし、一方的に名前が使われたという可能性もあって、信憑性には疑問符が付きます。仮に事実だったとしても、摘要欄には他に4件の項目も列記されており、全額が昭恵夫人に渡った訳でもない。加計学園の件にしても、役員報酬を受けていたのは1993年からの数年間という昔の話です。第一、億単位の“便宜”の見返りがこんな少額だったとは、誰も本気で考えてはいないでしょう」(週刊誌記者)。指摘された以上、国民に対する説明責任は果たされるべきだが、だからといって、“疑惑”と呼ぶには、あまりにもお粗末な代物でしかないだろう。

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実は、政治関係者の間では、一連の批判が“安倍攻撃”の為のものであることは、とっくに承知されていることである。「安倍首相は、自分の知り合いだから便宜を図ったとして批判されていますが、これは逆で、企業側が便宜を図ってもらう為に、安倍首相に近付いたという構図のほうが強い。加計学園にしても、偶々昔から親しかったというだけ。できる限り多くの支援者を作ろうとする政治家にしてみれば、来る者は拒まずで、そこに付き合いの深さは関係ない。無二の親友であろうが、自分の名前を利用しようとした籠池理事長のような人物であろうが、自分にメリットさえあれば分け隔てなく便宜を図るものですよ。勿論、合法的にね」(政治評論家)。加計学園や高邦会の疑惑を生み出した元凶のように論じられている国家戦略特区にしても、それ自体は首相の直轄で物事をスピーディーに進める為に打ち出された政策である。「今の日本では、既得権益を持った事業者の強い反対や、それを監督する省庁間の縄張り争い、それに伴う厳しい規制等もあって、何をやるにしても実現に時間がかかってしまう。国家戦略特区は、その問題を解消する為のものであり、安倍首相の指示で行政が動いたのは当然のこと」(同)。問題になっている学校法人の新設のケースでいえば、文部科学省に加え、農林水産省や厚生労働省等の利権が複雑に関係しており(※森友問題では国土交通省も)、新設の許認可・用地取得・補助金の申請等、手続きも多岐に亘る。その手続きをスピードアップできる権限を持った政治家に働きかけるのは、企業としては当たり前のことである。その働きかけには、単なる陳情から多額の政治献金まで、レベルに濃淡はあるものの、結局のところ、その目的は“利益誘導”だ。

「政治家の仕事を突き詰めれば、如何に予算を確保し、それを配分するかということに尽きます。これが権力の源泉になっている訳ですが、だからといって政治家が好き勝手にやれる訳ではない。選挙によって選ばれた議員は、自分に投票や献金をしてくれる支持者に対して政治的便宜を図る。具体的には、支持者に対して公共事業や補助金等のカネを落とし、規制の設定・緩和・撤廃等を使い分けて、特定の企業や業界に有利となるルールの設定をする。情報提供も重要な要素です。一方の支援者たちは、組織票・政治献金・情報提供等を行っています。政治家と支持者は、本質的にギブアンドテイクで利用し合う関係なんです」(前出の地方紙政治部記者)。支持者となるのは地元の有権者だけではない。企業・業界団体・財界・官僚・宗教団体等、様々に分類することができる。彼らは其々の利益となるよう、政治家に票とカネを提供するのだ。政治学の世界でも、「議会制民主主義と政治家による利益誘導は切っても切れない関係にある」とされる。「社会を形成する者同士で意見の対立が生まれるのは仕方のないこと。だからこそ、意見の異なる者同士が、同じ選挙によって代表者を選び、其々の利益を代弁する形で議会を形成し、政治を行う訳です。必然的に、代表者は自分を支持してくれた人たちにとって有利な判断を下し、時には法律を作って政策を実行する。実行されなければ次の選挙で落とされることになる。議会制民主主義を採っている殆どの先進国で認識されている政治学のイロハです」(政治学者)。これは日本に限った話ではなく、例えばアメリカでは、利益誘導政治は“pork barrel(豚肉入りの樽)”と呼ばれており、必ずしも絶対的な悪とはされていないという。「porkは地元利益を指しており、地元利益とは突き詰めれば予算のことで、pork barrelは国家予算に議員たちが群がる様子を表しています。批判的な意味はあるのですが、半分は民主主義を行う上での必要悪という認識です」(同)。実際、アメリカでは多くの有権者が、自分たちの選出した議員が地元の為に働くことを望んでおり、そのこと自体を不正とも考えていないという調査結果が出ている。地元の為にどれだけ多くの予算を確保できるかが、議員の評価に直結しているのだ。「自己主張をする個人主義がベースになっている欧米ならではかもしれません。その点、“和を以て貴し”と考える日本人は、建前上、クリーンな政治を良しとする傾向があるようです」(前出の政治評論家)。

尤も、日本人も本音では利益誘導政治を受け入れてきたと言える。戦後、数十年間に亘って自民党支配が続いたことからも、有権者が何を求めてきたかは明らかだ。例えば、“歴代最高の名宰相”と称されることも多い吉田茂。サンフランシスコ講和条約を締結する等、戦後の復興に尽力し、“吉田学校”と呼ばれた派閥からは池田勇人や佐藤栄作等の総理大臣を輩出した大政治家だが、その政治家人生の晩節は造船疑獄等数々の汚職事件に塗れている。その吉田の教え子の一人でもある田中角栄もまた、象徴的な存在だ。田中がブチ挙げた“日本列島改造論”等は、まさに地方への利益誘導を促進した政策である。道路・橋・鉄道等、あらゆるインフラから公共施設に至るまで、その開発候補地に挙がった地域では土地の買い占めが行われ、地価が上昇する一大ブームとなった。その田中は1974年、金脈問題で退陣に追い込まれ、その後、ロッキード事件で有罪判決を受けることになる。他にも、リクルート事件、佐川急便事件、明電工事件、燃糸工連事件等、政治家絡みのスキャンダルは枚挙に暇が無い。自民党が“権力は腐敗する”という真理を身を以て証明したにも拘わらず、国民は長期間に亘ってその自民党政権を選び続けたのだ。この自民党支配に対するアンチテーゼとして誕生した民主党政権にしても、利益誘導と無縁ではない。民主党(※現在の民進党)最大の支持母体が『日本労働組合総連合会(連合)』なのは、誰もが知る事実である。「支持層が労働者か企業側かという違いがあるだけで、どちらが正しいという訳ではありません。結局のところ、万人に公平な政治などあり得ず、政治家の判断が公共の利益になったかどうかは、単なる結果論でしかないんです。更に言えば、民主党が政権を取ったのは、既得権益をがっちり握る自民党の利益誘導政治に嫌気が差した有権者が変化を望んだからですが、その結果がどうなったか? 鳩山政権の失態を見れば、クリーンなイメージだけで政治はできないということを、我々国民は嫌というほど知らされた筈です」(前出の政治評論家)。安倍疑惑を追及し、清廉潔白の代表格として評価されている日本共産党にしても、自分たちの支援者に有利な政策を主張しているだけのこと。議席数を見れば、その主張に賛同する国民の少なさは一目瞭然だろう。良くも悪くも、日本の政治はこうした考え方をベースに行われてきた。有権者も、政治家の習性を理解した上で受け入れ、投票し、利用してきたのだ。アベノミクスが流行語となった2014年前後からは、自民党に対する大企業の献金額が急増しているというが、権力を持つ政治家に人やカネが群がるのは世の常で、一連の疑惑も、この政治風土の中で行われてきたありふれた事象に過ぎない。何れにせよ、そんな安倍政権に権力を負託したのは、我々有権者だ。その選択を棚に上げて正義感を振り翳すだけの安倍批判は、単に自分たちの後ろめたさを正当化する為のガス抜きでしかないだろう。 (写真提供/政治ジャーナリスト 小川裕夫)


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