【誰の味方でもありません】(14) ペンライトを振りながら

応援上映が話題だ。応援上映とは、映画館で登場人物を応援しながら映画を観ること。観客たちはペンライトを振りながら、「頑張って!」「その調子でいこう!」といった具合に、作中の人物に大声で声援を送るのだ。コスプレをした観客も多く、雰囲気は宛らライブ会場である。マスコミが応援上映に注目し始めたのは、2016年に公開されたアニメ映画『KING OF PRISM』のヒットから。別アニメのスピンオフ作品で、僅か14館で公開が始まった映画にも拘わらず、最終的に興行収入は8億円を超えた。キンプリが設けた応援上映会は、新しい映画の鑑賞スタイルとして“画”になり易いこともあり、テレビでも特集が組まれていた。何を隠そう、僕もNHKの番組に“応援上映の専門家”として呼ばれたことがある。いやぁ、“専門家”って名乗った者勝ちなんですね(※本当は何百回も応援上映に通い詰めている猛者のほうが“専門家”だけど)。但し、応援上映は全く新しい発明という訳ではない。例えば、1975年公開のホラー映画『ロッキーホラーショー』では、観客が歌い踊ったり、紙吹雪を投げたり、参加型形式で上映されることがあった。現代的な応援上映の発祥は、定義によるのだが、有力なのは2007年に公開されたアニメ映画『Yes!プリキュア5』(東映)のミラクルライトという説だ。

ミラクルライトは、子供を飽きさせない為に考案された来場者プレゼント。上映中、ライトを使ってプリキュアを応援する。ミラクルライトは純粋に子供向けのものだったが、次第に応援上映は“大きなお友だち”にも広がっていく。大きなお友だちとは、本来は子供向けだったアニメや漫画等に夢中になる大人のことだ(※今回のエッセイ、無駄に情報量多いですけど大丈夫ですか?)。何故、応援上映はここまでブームになったのだろうか? よく言われるのは一体感。スマホでいくらでも映像作品を観られる時代だが、応援上映を体験したければ映画館に行くしかない。それに加えて、禁忌を破る気持ち良さもあるのかもしれない。本来は静粛であることが求められる映画館内で大声を出すのは楽しい。無邪気に誰かを応援するのは、童心に返ることでもある。興味深かったのは、作中に悪の組織が登場した時の観客たちの反応だ。彼らは一斉に敬礼のような動作をした。「そっちまで応援するのか」と驚いた。しかし、敬礼は世界中の軍隊や政治イベントで採用されてきたくらい、人間が好きな動作だ。有名なのはナチス式敬礼だが、敬礼は彼らの専売特許ではない。ナチスに対抗したドイツ社会民主党も、躍進のきっかけはカリスマ創設者による挙手の宣誓や、身体儀式を組み合わせた祝祭型の演説だった。集団で何かに陶酔するのは気持ちいい。だが、現代人はその怖さも知っている。このバランスの上に成立しているのが応援上映なのではないか――と、“専門家”っぽく真面目に解説してみた。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。近著に『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』(文藝春秋)。


キャプチャ  2017年8月10日号掲載
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