難民で荒稼ぎするイタリアマフィア、新ビジネスは収容施設の“乗っ取り”――売春や麻薬密売の手先に、農業地帯では奴隷労働も

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記録的な数の難民が押し寄せているイタリアで、同国のマフィアが難民対策事業を新たな収入源にしていることがわかった。難民施設を運営する自治体の職員やカトリック教会の聖職者を抱き込んで、公費をごっそり横領するという極上の新ビジネスである。今年5月に摘発された横領事件は、マフィア慣れしているイタリア国民をも驚かせた。舞台になったのは、長靴に例えられるイタリア半島のアーチライン(土踏まず)前方部分にあるクロトーネ県の収容施設『聖アンナ収容センター』(※左画像)だった。イタリアに到着した難民は、当座の小遣いとして政府から1日当たり2ユーロ50セントが支給される。ところが、聖アンナを運営するカトリック教会の慈善団体『ミゼリコルディア』は、この小遣いを難民に渡さず、代わりに50セント相当の菓子を与えていた。難民にとって最低限の現金支給まで掠め取るのだから、食事・収容所内の衛生施設・各種サービスは誤魔化し放題だった。摘発前、地元の保健所職員が密かに収容センターの食事を運び出して調べたところ、肉・米・豆は何れも成人の1食分に遥かに足りず、品質も極めて粗悪だった。センターは公式には729人収容だが、ここ数年は常時1000人以上が滞在していた。摘発に踏み切った検察によると、2006年から2015年までの10年間で、同センターには合計1億300万ユーロの公費が投じられ、少なくとも3600万ユーロが“使途不明金”だった。食事・清掃・衛生等、施設の出入り業者は全て慈善団体かマフィアの関連企業や家族だったから、実際の誤魔化しは更に膨れ上がる。

施設運営の責任者であるレオナルド・サッコ容疑者(※右下画像左)は、ミゼリコルディアの地元組織総裁で、一時は“イタリア人の善意を代表する人物”として賞賛された。ローマ法王のフランシスコやシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相ら、各界の大物と握手した写真は、全国に配信された。しかし、この男は、イタリア南部を牛耳るマフィア『ンドランゲタ』の操り人形という別の顔も持っていた。同容疑者の指揮下に横領された公費は、ンドランゲタのボスに吸収されていた。5月の摘発では全国で68人が逮捕されたが、ンドランゲタ大幹部の名前は1人も含まれていなかった。多くは横領の実務を担った“フロント”たち。捜査を指揮した国家治安警察隊のジュゼッペ・ゴベルナーレ司令官は、「収容施設はマフィアのATMだ」と形容し、「マフィアが難民対策事業を格好の資金源にしている」と指摘した。手口も、小遣いや食費を横領するものばかりでなく、収容人数を水増ししたり(※“幽霊難民”と呼ばれる)、収容者への職業斡旋で仲介料を取ったりと様々だ。聖アンナでは、難民の生活必需品である携帯電話のSIMカード販売を職員の家族が独占し、割高な料金を徴収した。苦難の末に憧れの地ヨーロッパに着いた難民たちは、収容施設でしゃぶりつくされていた。難民搾取は、他の施設でも報告がある。シチリア島ミネオという小村にある収容センターでも、長らく現金支給が行われなかったことが、イタリアメディアの潜入ルポでわかった。この施設を牛耳るのは、世界に悪名をはせるシチリアマフィア『コーザノストラ』である。イタリアには、この他にも、ナポリ拠点の『カモッラ』やプッリャ州拠点の『サクラコローナウニータ』といった強大なマフィアが地域毎にあり、難民施設の支配も縄張り通りに分けている。2014年に逮捕されたローマの犯罪組織『首都マフィア』幹部は、「麻薬より実入りがいい」と認めた。捜査当局が公表した盗聴記録では、幹部は「今年の稼ぎは5000万ドルってとこだが、全部難民のおかげだよ」と誇らしげに語ったという。難民の数が増え、イタリア在住が長期化すればするほど、公費負担は膨らむ。このビジネスを牛耳ると、長期の安定収入が約束されるのだ。ローマの難民事業を巡る汚職事件では、首都マフィアが歴代市長を抱き込んでいたことも明るみに出た。民主党のイニャツィオ・マリーノ市長は2015年10月、市議会により解職された。昨年当選した『五つ星運動』のビルジニア・ラッジ市長は、マフィア一掃や難民事業の汚職追放を公約したものの、マフィア側の抵抗に遭っている。彼らはローマ市内の施設に難民を過剰に送り込み、難民事業を立ち往生させた。ラッジ市長は国に、「ローマはこれ以上、受け入れられない」と泣きついた。

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問題は収容施設ばかりではない。イタリアには、過去3年間で50万人もの難民が到着し、公式統計では、この内の約18万人がイタリア国内に留まっている。聖アンナのような専用施設だけでは到底対処できない為、イタリア政府は廃業したホテルや閉鎖された学校施設等、既存の建物に難民を割り振って、その施設の運営者に費用を支払う形で、難民収容を“民営化”している。この際に支払われるのは、成人1人につき1日35ユーロ(※未成年は1日45ユーロ)と施設の運用経費。マフィアがこれを見逃す訳がなく、フロント企業や非政府組織(NGO)を隠れ蓑に難民ビジネスに入った。捜査当局は公的施設の不正取り締まりで手一杯で、マフィアがどこまで牛耳っているかの全体像は全く掴めていない。但し、マフィアの難民行政乗っ取りがどんな結果を齎しているかは、シチリア島の観光地で見ることができる。シチリア州の州都であるパレルモ旧市街には、生鮮食料品や地域特産物を扱う青空市場が多く、その1つであるバッラロは、各国の旅行ガイドで“必見”とされる名所だ。オレンジや緑黄色野菜等、南国らしい強烈な色の食材と売り子の陽気さが人気を呼んでいる。ところが、この市場一帯は夕方になると、俄かに相貌を変える。売春組織と麻薬密売組織が公然と街頭を支配し、地元警察も容易に近寄れない“ノーゴーエリア(立ち入り禁止地区)”になってしまう。街頭で見かけるのは若いアフリカ系ばかりで、アフリカ大陸のスラム街のような情景になる。

在パレルモの地元イタリア人記者によると、夜のパレルモを押さえているのは、“ブラックアックス(黒い斧)”と呼ばれるナイジェリア人のギャング集団だという。「その上に君臨しているのは勿論、コーザノストラで、ナイジェリア人ギャングは“営業許可”を受けた形で街を支配している」。コーザノストラが銃の使用を禁止している為、凶器は専ら鉈と斧。だが、比類のない粗暴さで暴力を振るうので、殺傷事件が絶えないという。パレルモの警察が介入することは滅多にない。「コーザノストラはカトリック組織なので、売春には手を染めない。街頭での麻薬売買も危険過ぎる。これを全部ナイジェリア人が肩代わりしてくれる」(同)。イタリアに着いたアフリカ人たちは、職が無い上に、密航業者への借金支払いがある為、危険な街頭での仕事に就かざるを得ない。コーザノストラは、ナイジェリア人たちの命など何とも思っていない。パレルモのアフリカ人は、旧市街の一角だけで数千人いるとされる。シチリア州の都市部の公営住宅は今や、次々とアフリカ人居住区に変わっている。イタリアに到着する難民たちはアフリカ人が大半だ。ナイジェリアやガーナ等、サハラ以南の国々からは、サハラ砂漠を経由してリビアに至る密航ルートが確立している。数十日がかりの陸路、更にリビアからイタリアに向かう船賃は、合計で数百万円とされる。『ヨーロッパ連合(EU)』の移民行政担当者は、「アフリカ大陸を移動する時から、移住希望者たちの多くが、密航ギャング団や、それに連なる犯罪組織の支配下に置かれるのでは?」と推測する。こうなると、ヨーロッパの難民危機には、組織的な人身売買ビジネスが隠されていることも浮き彫りになってくる。イタリアの難民対策は、マフィアに牛耳られた点で破綻しているのだが、イタリアの社会・経済にこれを許す土壌があることも見逃せない。多数の流入する難民・移民は、長年の不況で空洞化したイタリアの労働市場、特に労働集約型の農業や手工業に貢献している。労働力不足が深刻だった農業地帯では、アジア系やアフリカ系の労働者が増加している。ローマ南東にあるポンティノ湿地帯は野菜や果物栽培で知られ、以前は“イタリアの温室”との異名を取った。だが、近年は低賃金と重労働ぶりが嫌われて、イタリア人労働者が寄り付かなくなった。代わって登場したのが、インド亜大陸からのシーク教徒。湿地帯の農場は、特有のターバン姿のシーク教徒が目立つようになった。この湿地帯に潜入したイギリス人記者は、「給料の遅配や踏み倒しは常態化しているが、シーク教徒たちはどこにも行き場所が無く、奴隷労働を耐え忍んでいた」と言う。シーク教徒たちを農場に斡旋するのは、犯罪組織のネットワーク。まさに魚心あれば水心で、農場主の需要とマフィアの供給が一致した。マフィアの難民ビジネスは最早、単純な善悪論で断じられないほど、イタリア経済の内部に深く根付いているのである。


キャプチャ  2017年7月号掲載

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