【Global Economy】(49) 人口減、日本の成長シナリオ…現状打破には技術革新

人口減が進み、最早、経済成長は期待できないのか? 成長を諦める悲観論は危うい。厳しい現実を直視した上で、成長シナリオの実現に力を注ぐべきだ。 (本紙編集委員 黒川茂樹)

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「日本は急速な高齢化と労働力の競少に直面し、改革をより急ぐ必要がある」――。『国際通貨基金(IMF)』は、先月31日に公表した審査報告書で強調した。「現状維持で良い」という風潮に警鐘を鳴らすものだ。社会を支える15歳から64歳までの生産年齢人口は、1997年までは8700万人台だったが、2016年は約7600万人と1000万人以上減った。今後も年1%近いペースで減少する(※グラフ①)。人口全体でみると、ピーク時からの減少は100万人ほどだが、少子高齢化が進んだ為、生産年齢人口の落ち込みが著しい。一方、日本経済の規模を示す名自国内総生産(GDP)額でみると、2016年度は537兆円と、ピークだった1997年度(533兆円)を上回り、史上最高の水準になった。立正大学の吉川洋教授は、「人口減少ペシミズム(悲観主義)が行き過ぎている」と主張する。働き手が少し減っても、生産性を高め、1人あたりの労働者が作り出すモノやサービスが増えれば、成長率はプラスにできる。カギを握るのは、成長力を高めるイノベーション(技術革新)だ。現在、日本経済の実力を示す潜在成長率は、年0.8%程度だ。生産性の伸びを2%に高めることができれば、人口減による押し下げ要因が1%程度あっても、実質1%のプラス成長ができる(※グラフ②)。政府は、実質2%以上の成長で“名目GDP600兆円”の実現を目指すが、人口減による負の圧力が働く中では楽観的過ぎる。2015年度・2016年度の実質成長率は、共に1.2%だ。

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成長は何故必要なのか? 『世界銀行』で長く主任エコノミストを務めたブランコ・ミラノビッチ氏は、話題作『大不平等』(みすず書房)で、「経済成長は、世界の貧困と不平等を削減するための最も強力なツールだ」と断言する。「豊かな国の豊かな人たちが『これ以上の経済成長無しでもやっていける』と考えているが、それなら不況から抜け出そうとしないで祝福すればいいのではないか?」と手厳しい。欧米各国は、若者層と富裕層の格差拡大が問題になるからこそ、成長を重視する。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、5月の就任演説で、「フランスの活力と繁栄に貢献する全てを実行する。文化と教育、更にイノべーションが私の行動の核心だ」と力説した。若者層の失業率は20%を超え、競争力強化に繋がる雇用市場改革に挑戦する。日本企業が海外市場で攻勢をかけるのは理に適う。M&Aの助言会社『レコフ』によると、日本企業による海外企業のM&Aは2016年、件数は前年より13%増え、金額は約10.5兆円になった(※グラフ③)。国連の予測をみると、日本の人口は2050年、今より15%減って1億人強になる一方、世界全体は約76億人から約98億人に増える。経済成長で所得が伸び、アジアやアフリカの購買力は高まるだろう。但し、市場の変化は激しく、成長に結び付けるのは簡単ではない。『東芝』はイギリスの原子力発電子会社のせいで苦境に陥り、『日本郵政』はオーストラリアの物流会社の買収で巨額損失を出した。日本企業は、高値掴みし、買ってからは現地任せで、海外子会社を掌握できていないケースが多い。50件以上のM&A全てを成功きせてきた『日本電産』の永守重信会長兼社長によると、買収の際には①先ず高く買わない②買収した会社の経営改革をしっかり進める③相乗効果を発揮させる――の3条件を満たす必要があるという。

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日本国内で技術革新を進めることも重要になる。海外売上高が約8割を占める建設機械大手『コマツ』の野路国夫会長は、「既存の事業だけでは新興国に追いつかれる。日本の中に新事業・新産業を生まないといけない」と強調する。人口減時代には、日本経済が右肩上がりだった頃の成長は期待できない。地方都市は発想の転換が求められる。例えば、鉄鋼の町として知られたピッツバーグは、ピーク時に70万人近かった人口が半減したが、へルスケアや先端技術産業が盛んになり、1人あたり所得は全米平均を上回る。ドイツは、世界遺産都市・レーデンスブルクのように、産官学連携で競争力を高めた地方小都市が多い。海外企業にとって、日本市場はなお魅力的だ。『日本貿易振興機構(JETRO)』の2016年対日投資報告によると、対日直接投資残高は過去最高となり、8割近くの外資系企業が「投資拡大を図る」と回答した。吸引力の高い掃除機の『ダイソン』に、ロボット掃除機『ルンバ』で知られる『アイロボット』等は、消費者の目が厳しい日本市場で売り上げを伸ばして飛躍した。『日本銀行』の統計では、個人が持つ“現金・預金”は3月末で932兆円と、10年前よりも150兆円近く増えた。高齢化社会の需要を掘り起こす余地はある。日本を訪れた外国人の旅行消費額は、今年1~6月だけで2兆円を超え、地方都市は観光需要を取り込む戦略が問われる。2016年の日本の1人あたりGDPは3万8917ドル(約428万円)で、シンガポールより3割近く少ない(※グラフ④)。サービス産業の生産性の低さ、流動性に欠ける雇用市場、IT人材の不足等、課題は山積みだ。世界で最も速いスピードで高齡化進む日本が、人工知能(AI)や先端技術を活用した社会構造に変えられるか? 「実質1%成長は簡単でない」と認識し、具体策を急ぐ必要がある。


⦿読売新聞 2017年8月11日付掲載⦿

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