アメリカを蝕む巨額学生ローン、“100兆円超”財政と家計を壊す爆弾――不良債権化する連邦政府の資産、需要の先食いと将来の財政悪化

20170815 13
「多くの新入社員が学生ローンを抱えて大変そうだ」――。在米日系企業関係者は、心配顔で囁いた。相変わらず、アメリカの信用創造の質は低い。アメリカの家計債務残高は、今年の第1四半期末に12.73兆ドルを突破し、過去最高だったリーマンショック前の2008年第3四半期の12.68兆ドルを8年半ぶりに更新した。ただ、サブプライムローン問題が顕在化した8年半前と決定的に異なる点は、住宅ローンの家計債務に占める比率が厳しい規制で低下した一方で、学生ローンが構成比2番目となったことだ。今や、その債務総額は1.34兆ドルと、自動車やクレジットカードのそれを上回っている。我々が生きている“極端に金融依存化した現代”では、利息を支払う“経済成長の奴隷”を見つけることが必要だ。高等教育にそれを見出したアメリカでは、既に学生ローン利用者が4420万人に達している。しかも、膨張は止まりそうにない。アメリカの若者は苦しい。景気拡大により、失業率が5%を切り、完全雇用が近付いているが、25歳以下の失業率は9.9%、黒人で高卒の場合は26%だ。17歳から20歳までの高卒、且つ進学していない若者全体の不完全就業(※パート等能力以下の就業)率は、31%にもなる。“大卒”は今なお就職に有利であり、学生や親にとって投資価値があると言えよう。学費はどうか? 1978年から現在までの40年間で、アメリカでは292%のインフレが起こったが、同期間に自動車の価格が99%上昇したのに対して、大学の学費は1297%の上昇と、最早“学費のハイパーインフレ”状態となっている。アメリカの学歴社会と学費高騰が、現在の学生ローン問題の基本的な背景にある。

結果として、30歳以下の学生ローン利用者数は、2004年から2015年までに1.5倍、ローン残高は2.6倍に増えた。『ピューリサーチセンター』の調査では、40歳未満の若年世代の学生ローン利用者の純資産は8000ドル程度という結果が出ている。未利用者の7分の1しかない。解雇のような収入上のトラブルが起これば、忽ちホームレスにでもなりかねない状況なのだ。更に問題は、その上の世代。学生ローン利用者の内、30歳未満は1700万人で、総額3763億ドルである一方、30歳以上が2700万人もいて、しかも総額は1兆ドルを超えている。具体例を示そう。コロラド州に住む70歳と65歳の夫婦は今、2人合わせて学生ローン残高が18万ドルもあるという。無論、子供や孫のローンではない。軍に勤務していた夫は、50代の頃、IT技術を磨く為に大学へ入学。その際、7万ドルを借り、月々300~400ドルずつ、20年近く返済してきたが、現在は8万ドルと逆に残高は増えている。妻も同様で7万ドルを借り、残高は10万ドル近くになっている。利息も払えないこの夫婦は、「死ぬまで働き続けるしかない」という。これは特殊なケースではない。アメリカでは、学生ローンが残っている60歳以上が急増し、今や280万人(※2015年末時点)にもなり、全体の6.4%を占めている。60歳以上の債務総額は660億ドルと、60歳以上だけで『日本学生支援機構』の年間貸与総額1兆円の6倍に達している。2004年比で人数は4.5倍、債務総額に至っては11倍と、他の世代を大きく上回る膨張ぶりだ。次に、債務不履行者に占める年代別の割合をみてみよう。50歳未満が17%、50~64歳が29%、65歳以上が37%と、年齢に比例して債務不履行が多いことが分かる。つまり、60歳以上の学生ローン利用者の増加は、将来の債務不履行の増加に直結する。では何故、例に挙げた夫婦は、中年になってから学生ローンを借りられたのか? それは、貸し手が銀行ではなかったからだ。52.6%――。これは、連邦政府の金融資産2兆600億ドルの内、学生ローンが占める割合である。学生ローンの貸し手は、連邦政府(※州政府も多少はある)と民間の2種に大別できるが、政府は金融危機後に民間の貸し手への規制を厳しくする一方で、民間以上に政府自身が学生ローンを貸しまくった。その残高は、2007年末の1150億ドルから、今年第1四半期末には1兆850億ドルまで、実に9.4倍にも膨れ上がった。この出鱈目融資の結果、政府資産の半分が学生ローンという異常事態となっているのだ。民間がやるべきことを政府がやるとどうなるか? 中高年・女性・黒人等への貸し付けが増えていった。政府であるが故に、借りる機会を公平に提供しようとするからだ。だが、残念ながら就業率や給与水準でみると、現実の返済能力は平等ではない。つまり、連邦政府の資産の多くが、遠からず不良債権化するということだ。

20170815 14
昨年だけで110万人の連邦政府ローン利用者が、債務不履行と認定されている。1日3000人の計算だ。ある試算では、学生ローン利用者の4割が、クレジットスコア620点以下のサブプライム層だという。2006年の住宅ローン新規貸し付けのサブプライム比率でさえ2割近くだったと言えば、如何に異常かがわかるだろう。現在騒がれている自動車サブプライムローンでさえも2割だ。債務不履行者の多くがクレジットスコアの低い者であることが連銀の調査でわかっていても、現状は誰にも止められない。債務不履行となれば無論、連帯保証人が返済責任を負うことになる。アメリカの『消費者金融保護局(CFPB)』によれば、「連帯保証人の半数以上が55歳以上」だという。若年の債務不履行の増加は、肩代わりさせられる中高年世代に負担が飛び火することになる。実は、債務不履行の比率は、既にリーマンショック時を上回っている。つまり、本来なら現在のバブルは崩壊している水準なのだ。貸し出しの質の低下と量の急増は、学生ローンバブルが限界に達していることを物語っているが、貸し手が政府なので止める者がいない。ドナルド・トランプ政権は先月、多少のルールを変えたが、学生ローンの急増に歯止めはかからない。恐ろしいことに、学生ローン残高20万ドル以上は40万人にも達しているという。これらの重債務者は、未利用者より他にもローンを組む可能性が1.5倍高いとのデータもある。『連邦準備制度理事会(FRB)』は先月14日、今年2度目となる政策金利引き上げを行ったが、借金漬けの彼らはどうなるのか? 債務不履行者は累計800万人に達したが、あとどれだけ増えるのか? 金融機関であれば、金利状況によって貸し出し姿勢も守勢にシフトしていくが、そうはならない。需要の先食いと将来の財政悪化を齎しながら、連邦政府は今日もサブプライム学生たちに貸しまくっている――。


キャプチャ  2017年7月号掲載

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