福島廃炉は今世紀中に終わらない、“40年・8兆円プラン”の虚妄――“石棺方式”に込められた思惑、チェルノブイリ型の鉄の楼閣

20170816 01
「1Fは、このままでは“サグラダファミリア(聖家族教会)”になるぞ!」――。福島県民は多くを知らない。そのことに、一部の原子力関係者の不安と義憤は募る。“1F”こと『東京電力』福島第1原発の廃炉を巡り、『原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)』が今月に発表する技術戦略プランの策定が大詰めを迎えている。プラン策定は3度目であり、今回は2021年の燃料デブリの取り出し開始に向け、メルトダウンした1~3号機の号機毎の工事計画が固まる。ロボットやマニピュレーターの開発も本格化し、まさに廃炉の実践プランとなるものだ。しかし、肝腎の期間と費用はざっくり40年・8兆円と曖昧なままであり、逆に喧伝されているのは燃料デブリの“全量取り出し”の方針だ。恐らく、福島県民の大半は「40年・8兆円を費やせば、1Fは綺麗に“更地”になる」と思い込んでいるだろう。しかし、原子炉格納容器の底部に飛び散った燃料デブリの回収は、前人未到の事業なのだ。あるNDF関係者は打ち明ける。「3基合わせて約880トンのデブリの内、回収できるのは精々半分。が、そのことを県民に知らせていないので、40年が80年・100年かかっても全量取り出しを続けることになる」。つまり、建築家のガウディが設計したバルセロナの世界遺産宛ら、世紀を跨いで石積みプロジェクトが続くという訳だ。しかし、NDF事務方の経済産業官僚は、そのことを意識していた形跡がある。前回、2016年版プランには、“石棺方式”の4文字を忍ばせていたからだ。

「こんなこと、書く必要ないだろ」――。昨年6月、2016年版プランを審議していたNDFの廃炉等技術委員会は、1人の専門家から原子炉をコンクリートで覆う“石棺方式”に不審の声が上がった。旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原発の事故処理と同じ方式であり、下手に触れれば地元の反発を招く。事務方は「石棺を採用しない方針を明記する」と押し切ったが、その書きぶりは微妙であり、「今後、柔軟に見直しを図る」とも追記されていた。発表当日の7月13日、NHKが「廃炉計画で初めて“石棺”に言及」と報じると、案の定、地元は大騒ぎとなった。翌日上京した福島県の内堀雅雄知事は、経済産業省の高木陽介副大臣、NDFの山名元理事長に抗議。政府側は陳謝して、文言を削除した。石棺方式を忍ばせたのは、経産省原発事故収束対応室の湯本啓市室長と、同省出身であるNDFの池上三六執行役員である。両氏の周辺からは、こんな声が聞こえる。「経産省は、デブリを全量取り出せない場合を想定し、“石棺”の選択肢も残しておきたかったのではないか?」。当時、1F事故債務の負担スキームを議論する経産省の有識者会合が始動する直前だった。その後、事故債務は約22兆円へ倍増。この内、廃炉費用も約2兆円から8兆円へ膨らみ、東京電力ホールディングスが全額負担する枠組みが決まった。が、当初は国民負担を主張する声もあり、その場合の世論の反発を恐れ、経産省は廃炉費用の膨張を防ぐ石棺方式に言及したとも受け取れる。8兆円は腰だめの数字に過ぎないが、それでも、東電HDはNDFが創設する基金に毎年3000億円ずつ積み立てていく。廃炉費用は1兆円引き当て済みなので、残る7兆円を毎年3000億円で割ると約23年。燃料デブリの取り出しは、遅くとも2045年には完了していなければならない計算だ。しかし、最新の調査によると、1F2号機の原子炉格納容器内の放射線量は、毎時530Sv。人間が1分で致死量に達する高線量であり、その中でロボットを駆使しつつ、足場にこびり付いたり、配管に入り込んでいる燃料デブリを回収するのは容易ではない。仮に、取り出し開始から10年が経って、半分は回収できたものの、半分の回収見通しが立たず、積立基金も底を突いたらどうするか? しかも、あと20年もたない原子炉建屋の老朽化も進んでいるはずだ。内閣府関係者は、1F事故当時を振り返り、こう指摘する。「最初のボタンの掛け違いが今になって影響している。公的な廃炉機関を作るべきだった」。1F廃炉の中長期ロードマップが2011年12月に策定されたのを受け、当時の原子力委員会は廃炉の第三者機関の設立を訴えていた。イギリスの『原子力廃止措置機関(NDA)』をモデルとしたその構想は、“国が事故処理に責任を持つ”ということだ。しかし、財政負担を嫌う財務省は黙殺し、電力業界も国の関与が深まる日本版NDA構想を敬遠した。つまり、事故処理を東電の無限責任に帰したのである。

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唯一の例外は、安倍晋三首相の“アンダーコントロール”発言だ。東京オリンピックを招致する為、1Fの汚染水対策には国費が投じられたが、研究開発を名目とした為、効果も定かでない新技術の凍土壁方式が採用される愚を犯した。何れにせよ、廃炉の事業主体である東電HD、それを支援する立場のNDFが、「デブリは全量取り切れません」と言える訳がない。昨年7月の石棺方式騒動で火が点いた地元は、今回の2017年版プランに神経を尖らせている。“更地”になるまで廃炉作業を求めるだろう。その間、東電HDは毎年3000億円の積み立てを続けるのだ。NDFは、燃料デブリの回収工法として、①『東芝』の“冠水・上アクセス工法”、②『日立製作所』の“気中・上アクセス工法”、③『三菱重工業』の“気中・横アクセス工法”の3案を挙げているが、とりわけ三菱重工案が有力という。同社はマニピュレーターを公開する等、膨大な廃炉特需の獲得に躍起だ。造船事業や国産航空機『MRJ』の赤字が続く中、「一息吐ける」と安堵の声が漏れる。しかし、東電HD幹部はこう言い放った。「3000億円の拠出は、今後20年以上の年平均額。キャッシュが必要になるのは未だ先の話だ」。東電HDに20年先を想定している経営者は誰もおらず、燃料デブリの取り出しが始まっても、成績が上がらなければ、積立金は済し崩し的に縮小されかねない。その時、1F廃炉の行方を誰が判断するのか? ある原子力関係者は、ポツリと呟く。「恐らく、チェルノブイリ方式しかないだろう」。同原発は石棺から30年が経ち、老朽化が著しく、高さ108mの鉄鋼シェルターで被われたばかり。100年は安全を維持できるという。しかし、ウクライナ政府にその資金(約1700億円)を賄う余裕は無く、『国際原子力機関(IAEA)』の判断の下、『ヨーロッパ復興開発銀行』が中心となって融資した。同様に、1FもIAEA、即ち公的な第三者機関に技術的な判断を仰ぐことにもなりかねない。1Fが巨大な鉄の楼閣となる恐れを、福島県民は未だ知らない――。


キャプチャ  2017年7月号掲載

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