松居一代劇場に完敗! “荒涼”の2017年夏ドラマをメッタ斬り!

青春ドクター・食み出し探偵・仕事のできない夫・おデブなシングルマザー…。例によって主役は脈絡なく出揃ったが、今夏ドラマも砂を噛む試練の予感。「砂漠が美しいのは、どこかに井戸を隠しているからだよ」。星の王子さまはそう言うけれど、これ、井戸無くね? (フリーライター 今井舞)

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毎日怒涛の新展開を見せる“松居一代劇場”。あっちに比べてかなり注目度は劣るが、一応、夏ドラマ群も始まっている。ラインナップを見ていこう。瀕死状態のフジ月9に助けが飛んできた。バラバラバラバラ。『コード・ブルー~ドクターへリ緊急救命~』(フジテレビ系・月曜21時)。ドクターへリで患者の元に駆けつけるフライトドクターたちの活躍を描いた人気ドラマシリーズの第3シーズン。優秀で責任感が強い新垣結衣、クールで超一流のオペの腕を持つ山下智久、負けず嫌いで鼻っ柱の強い戸田恵梨香等々、安定感あるキャラクター配置と、「了解、ドクターへリ、出動します。エンジンスタート!」といった派手な画ヅラ、緊張感ある救命のシーンの合間に織り込まれるヒューマンなストーリー。…ザ・盤石。今シーズンは、そこに“ダメな新人たちを一人前に育てる”というテーマが加わり、今時の若者に煮え湯を飲まされている人が溜飲を下げられる作りに。ドクターヘリがあるような大病院に何で若い救急医しかいないの? シーズン1・2に比べて事故現場のセットがチャチ過ぎやしない?――色んなツッコミはさておき、初回視聴率は今期最高の16.3%。だが、これはあくまで昔取った杵柄による延命治療。“月9という病”の根治には、新作成功しか治療法はない。へリは未だか。

「小難しいテーマよりも、偏差値低めで共感し易いポジティブな話を」というのが、今のドラマ制作の基本理念。その見本のような作品が『カンナさーん!』(TBSテレビ系・火曜22時)。主人公は、夫と1人息子をこよなく愛し、パワフルな毎日を送るアパレル会社勤務の渡辺直美。しかし、息子の誕生日に夫の不倫が発覚。即別居。パパがいなくたって大丈夫。保育園の父親ドッチボール大会には私が出るわ。うりゃー、ドカーン、わーい優勝。帰りに自転車でコケて病院。夫が駆けつけてくれたのは嬉しいけれど、いつも笑顔の自分でいたいから「私と離婚して下さい!」。…うーむ。離婚に至るまでの筋運びの感情移入のし難さも然ることながら、シシド・カフカと不倫するようなロマンチストの要潤演じる夫が、容姿もバイタリティーも何もかも“規格外”の渡辺直美と何故恋に落ち、どうして結婚したのか、今ひとつ合点が行く描写がないまま話が進むので、夫婦の絆や歴史が感じられず、仲直りを強要してくる姑の斉藤由貴の鬱陶しさにもリアリティーが伴わない。突飛な風貌でガサツにドタバタ大立ち回りする渡辺直美の姿は、ママドラマの主人公というより、殆どゆるキャラ。育児も家事も仕事も、鼻歌歌いながらあっという間に片付き、4歳の息子は人形みたいに大人しい。端からシングルマザーの細かな心の襞なぞ期待してない人たちが、主な視聴者層なんだろう。「直美ちゃん、明るくて元気貰えるー」って。それが一定数いるから視聴率12%。ビバ、偏差値低めポジティブ! 『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ系・土曜22時)。会社でお荷物扱いされている夫の錦戸亮と、それを支える妻の松岡茉優の二人三脚の奮闘の物語。この筋と大仰なタイトルから、「それ、パワハラされていますよ」とユニオン的NPO団体に目を付けられた主人公が、次第にシンボルマークとして扱われるようになり、本人は何も変わっていないのに、会社での扱いや世間からの目線が勝手に変化し、出世するという、映画『メルシィ!人生』(メディアボックス)的な見所を勝手に想像していたのだが。忘れ物を届ける度に錦戸が会社で叱られているのを見てしまい、本屋で買った自己啓発本を頼りに松岡が夫にアドバイスするという、何じゃそりゃあなストーリー。突然、無意味に始まる『ラ・ラ・ランド』(ギャガ)的ミュージカルシーンも、唐突でツラい。錦戸は大手イベント会社勤務なのだが、そこで描かれる“仕事”のチャチさがまた…。閑職の弁当係を押し付けられて、予算無視で仕入れまくり。理由は「皆の喜ぶ顔が見たかったから」。うーむ。そういうべクトルで“仕事ができない”を捌くのか。お人好しで損しているけど、そこを評価してくれる人もいて…ってこれ、『なぜか笑介』(聖日出夫)の世界観だよなぁ。21世紀に『なぜか笑介』かぁ。ズッ。

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「どうして今更その漫画?」ということでは、こちらも負けてない。『ハロー張りネズミ』(TBSテレビ系・金曜22時)。島耕作シリーズで知られる弘兼憲史の漫画原作で、面倒な案件を専門に受ける探偵事務所を舞台に、風変わりな探偵たちの活躍を描く。学生時代、歯医者で読んだなぁ。そんな昔の漫画を何故今。“原作モノは企画書が通り易い”ってことなんだろうけど。「あの島耕作シリーズの作者の作品ですよ」で、スポンサーの通りもいいってことなんだろうけど。『探偵物語』(日本テレビ系)以降、ボロい事務所で変わり者の探偵が主人公というと、何か“ハードボイルドでカッコいい”というざっくりしたイメージも定着してるし。主演に瑛太も押さえたし。やりましょー、やりましょー、か。しかし、原作も元々ざっくりしている話が多いハロー張りネズミ。第1話は、「妻と娘が事故に遭い、娘は即死。妻も危篤で、死ぬ前に娘の姿を見せてやりたい」という依頼で、娘のそっくりさんを探すというやっぱりなざっくり感。偽のオーディションで子役を集めるも見つからず(※当たり前)、公園で途方に暮れていると、偶然、瓜二つの子がいて…という探偵の腕云々関係無しの展開。粗くて薄い話運びを、カッコいいジャズのBGMで“ハードボイルド”に上げ底。上手の瑛太も、この作品ではイマイチ魂が感じられず、お笑いコンビ『ハイキングウォーキング』のQ太郎にしか見えないし。卑弥呼さまーッ!

だが、深田恭子だけは“女は触れなば落ちんのムチムチプリンが一番”という弘兼憲史的ヒロイン観(古っ!)と合口がいい印象で、イキイキと鋭意セクシー増産中。やり過ぎて川島なお美にならないよう気をつけて、喫水線を抉ってほしい。過酷な運命の中で、愛を求めて彷徨う主人公を描いた、人気韓流ドラマのリメイク『ごめん、愛してる』(TBSテレビ系・日曜21時)。 生まれて直ぐ捨てられ、韓国の裏社会で生きてきた長瀬智也は、抗争で負った怪我により余命僅かと診断され、残りの人生で母を探す為に日本に帰国。しかし、探し出した有名ピアニストの母・大竹しのぶには、溺愛する息子・坂ロ健太郎が。ここにヒロイン・吉岡里帆が加わり、恋と母子の絆と2つの三角関係が描かれる…。生まれつき心臓に欠陥がある坂口と、死期迫る長瀬。あー。“皆まで言うな”のラストに向けて、べタ・雑・強引は気にせず、用意されたカタルシスだけを拾い味わう。それが韓流というものだから。好きな人だけ召し上がれ。得意の“バカ系キャラ”を封印し、女心を擽る無骨な寂しん坊を演じる長瀬智也。明るく健気なヒロイン道を邁進する吉岡里帆。星野源の不在はおまかせ坂口健太郎。癖のある女を演じて四十余年、“老舗の風格”大竹しのぶ。流石の仕事っぷりの主演陣に加え、脳障害の女性を演じる池脇千鶴と、“如何にも韓流に出てくる悪女”のマンネリを超えてくる大西礼芳の演技は中々。にしても、突飛な役が多いこと。好きな人だけ召し上がれ。両親に溺愛されて育った箱入り娘の成長を描く『過保護のカホコ』(日本テレビ系・水曜22時)。確かに、友だちみたいな親子が増え、「家族といるほうが楽」と外界に二の足を踏む若者は増えている。その問題点を描くのかと思いきや。主人公の高畑充希は、大学生だというのに「ママ、ママ、んとね、あのね、カホコね」。興味のある物に向かって全速力でダッシュし、会話の言外のニュアンスを理解できず、感情の抑制が苦手で、動きに落ち着きがない。うーむ。これ 、“過保護”の範疇で片付けていいのか? 無邪気に全力疾走する高畑を見ていると、どうしても映画『フォレスト・ガンプ』(パラマウント映画)を思い出す。耳目を集めそうなキャッチーなテーマを提示するだけで、あとは浮き世離れした人物と強引な筋で引っ張り、1クール凌ぐ…。なーんだ、いつもの脚本家・遊川和彦ワールドか。願わくば一期一会で終わることを。

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4%台と他作品とはダンジョンの違う低視聴率を叩き出した『セシルのもくろみ』(フジテレビ系・木曜22時)。ひょんなことから読者モデルになった主人公が、ファッション誌業界で揉まれ、モデルとして成長する姿を描く。タイトルの雰囲気からはシリアスな世界観を想起させるが、蓋を開けてみれば、主演の真木よう子がオーバーリアクションで暑苦しく右往左往するだけのドタバタコメディー。読者モデルが売れないと担当ライターが失業といったあり得ないエピソードに、“ファッション誌が流行の中心”という二昔も前の感覚。敗因は色々あるが、一番大きなファクターは真木よう子の“痩せ過ぎ”に尽きると思う。登場人物の中で一番ガリガリで、骸骨みたいになっている彼女が、「もっとダイエットしなさい!」と叱られている。これは、視聴者層である女性たちの神経を確実に逆撫でする背徳行為だ。例の激太りしていた時と同じ位の状態で撮影に臨めばよかったのに。“役柄に合わせて太ってみせる”も立派な女優魂だと思うのだが。“みっともない姿は曝したくない”が勝ったか。だったら得意のミステリアスだけ請け負っとけばいいものを、無理に市場を広げて慣れないコメディエンヌに手を出し、大ヤケド。“業界ズレしていない素人”を表現する為、ガニ股のおどけた演技でハジけてみせる真木よう子は、もう久本雅美にしか見えず、痛々しさだけが目にしみる。結局、コメディー、サスペンス、ホラー、ファミリー、ヒューマン、ファンタジー、ロマンス、戦争、犯罪、フィルムノワールと、一作で、 しかも1人で全てのジャンルを網羅していた“松居一代劇場”に、束になっても勝てなかった2017年夏ドラマ。この夏を、きっと忘れない。


キャプチャ  2017年8月3日号掲載

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