【有機EL&半導体バブル】(08) メモリーバブルは続き、大型M&Aも相次ぐ

20170821 16
世界半導体産業の景気指標であるフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)は、今年3月、16年半ぶりに1000を突破して、愈々2000年来のバブルの様相を見せている。2016年後半からメモリー半導体の需給が急に逼迫し、読み書きが高速で行えるが電源を切ると情報は消えてしまうDRAM、読み書きは遅いが電源を切っても情報が消えないNANDフラッシュメモリー共に、価格が高騰し続けているからだ。本誌2016年10月25日号でも触れているように、データセンターのサーバーで、記憶装置がハードディスク(HDD)からNANDへ急速に移行している。一方で、主力のスマートフォン市場では、2017年1~3月期は前期比23%も売り上げが落ちた(※『トレンドフォース』調べ)。パソコン(PC)も2.4%下落した(※『ガートナー』調べ)。これら民生用がマイナス成長だったにも拘わらず、メモリー半導体は需給が逼迫している。PCについては、台数は減っているにも拘わらず、動作の高速化が求められ、HDDからフラッシュメモリーへの置き換えが急速に進んでいる。また、スマホは1台当たりのDRAM・NAND搭載量は共に急増している。今秋発売予定の『Apple』の新型iPhoneには、ノートパソコン並みの容量のメモリーが搭載される。アメリカの半導体市場調査企業『ICインサイツ』は、今年の半導体産業成長率予測を、年初に発表した5%から、4月には11%に上方修正した。ガートナーも同様に、7.7%を12.3%に上方修正している。「メモリー逼迫は、少なくとも今年前半、或いは1年を通して続く」と判断し直した為である。直近の2017年1~3月期と2016年の世界半導体企業売上高ランキングトップ10(※右表)を見ると、メモリーバブルの勢いがわかる。首位の『インテル』は、2017年1~3月期もその座を守ったものの、2位のメモリー最大手『サムスン電子』との差は僅か4%程度とかなり接近してきた。ICインサイツは、4~6月期のサムスンの売上高がインテルを追い抜き、史上初めて念願のトップに躍り出る可能性を予測している。『SKハイニックス』や『マイクロン』も2016年から順位を2つずつ上げる等、メモリーメーカーの好調さが目立つ。

一方、スマホ用のロジック(演算・制御用)半導体メーカーは苦戦している。中国向けスマホ用プロセッサーに強い台湾の『メディアテック』の2017年1~3月期の売上高が、前期比18%も落ち、ランク外となった。スマホ用アプリケーションプロセッサー(※ホームページ閲覧や検索を始め、様々なアプリ処理を担うマイクロプロセッサー)最大手の『クアルコム』も、順位を3つ下げて6位に留まっている。メモリーバブルを横目に、アメリカ勢は新たな策に出ている。成長の鈍ったPCやスマホ分野から脱皮し、今後成長の見込めるIoT(モノのインターネット化)・自動車・データセンター・AI(人工知能)分野へ迅速にシフトする為の大型M&Aに打って出ているのだ。相次ぐM&Aは、生き残りをかけた自己変革と捉えることができる。インテルは今年3月、先進運転支援システム、その為の画像処理用半導体チップを供給する『モービルアイ』を153億ドル(約1兆7000億円)で買収すると発表した。PC全盛時代に我が世の春を謳歌してきたジャイアントのインテルでさえ、モバイル時代には散々な思いをした。PCで培われた思想で、伝統的に低消費電力化より高速高性能化を優先する社風が災いしたからだ。その後、IoT時代を見据えて、データセンターの高速高性能サーバー向けプロセッサーを新たな事業の柱にして、既にシェア9割を握るに至った。しかし、その牙城である筈のデータセンター分野には、クアルコムや『アドバンストマイクロデバイセズ(AMD)』、更にはイギリスの『ARM』陣営も参入し、追い上げている。インテルもうかうかしていられない。モービルアイの買収は、車載ビジネスを逸早く次の事業の柱にする為の戦略だ。車載半導体を供給するには、数年かけて安全性や耐久性の認証を受ける必要がある。インテルは、モービルアイが築いてきた自動車関連機器メーカーとの密接な関係も利用でき、車載半導体の参入が容易になる。世界最大のファブレス(※製造設備を持たないメーカー)で、スマホ用アプリケーションプロセッサーの雄であるクアルコムが、半導体史上最高額の470億ドル(約5兆円)でオランダの『NXPセミコンダクターズ』を買収するのも、伸びが鈍化してきたスマホ向けから、車載・IoT向けへと舵を切る為の自己変革と言える。メモリーバブルは必ず弾ける。時期を巡っては見解が分かれている。しかし、バブルの始まりを誰も予測し得なかったように、需給の駆け引きや技術革新等、様々な要因が絡み合う複雑な環境では、終わりも予測し難い。昨年は全ての調査会社が半導体マイナス成長を予測していたが、後半からメモリー需要急増でプラス成長に転じたのだ。新型iPhoneの売り上げによっても、メモリー需要は変動するだろう。需給バランスなど無視した中国の巨大半導体工場建設計画では、2019年のメモリー量産開始を目指しているようだが、実現すれば、液晶ディスプレイ同様、供給過剰は必至だ。但し、バブル崩壊は産業衰退を意味しない。世界半導体市場規模の推移を見ると、需給変動による半導体景況感の大きな波を乗り越えて、マクロに見れば大きく成長しているのだ。今世紀に入り、半導体市場規模は倍増している。半導体を衰退産業にしてしまったのは日本企業だけだ。今はメモリーばかりに目が行きがちだが、半導体はIoT・自動運転・ロボット・AI等、今後成長が期待される分野の中核エンジンとして未来を開く知識創造型産業である。半導体産業の本当の勝負はこれからだ。激しい時代の変化に備えた足場を今のうちから築き、新たなメガトレンドに乗って、大きなチャンスを掴めた者だけが勝ち残るだろう。 (『服部コンサルティングインターナショナル』代表 服部毅)


キャプチャ  2017年6月13日号掲載
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