【霞が関2017夏】(15) 農水省、次の改革は“山”と“海”

60年ぶりの農協改革、50年ぶりの酪農改革、『全国農業協同組合連合会(JA全農)』の組織刷新――。農業分野で相次いで改革を打ち出してきた農林水産省に、変化の兆しが出ている。次のテーマが林業と水産業に移っているのだ。キーワードは、農業と同じく“成長産業化”。日本の山と海は変われるか? 兆候は幹部人事に見てとれる。7月、農水省外局である林野庁長官に沖修司同庁次長が、水産庁長官に長谷成人同庁次長が其々昇格した。注目すべきは、両氏とも技官出身である点。事務系のキャリア官僚が幅を利かす同省内では、驚きをもって受け止められた。水産庁で技官の長官就任は初めてだ。「技官にやる気を持ってもらわないと変わっていかない」。事務方トップの奥原正明事務次官は、周辺にそう漏らす。林野・水産行政を実務面で支え、現場にも詳しい技官に相応のポストを用意し、難しい政策テーマに挑もうとしている。参考にするのは農業だ。“農協(JA)グループの独占打破”・“企業による農業参入の後押し”・“農地の大規模化”・“輸出の促進”。最近の農水省の政策は、こんなキーワードで説明できる。底流にあるのは、意欲ある農家が腕を振るい易い環境作りだ。既得権益層との軋轢はあったが、農業参入した企業が2000社を超え、農産物の輸出額も過去最高を更新する等、風景は随分変わった。

“ラストチャンス”――。日本の林業は、こう表現されることが多い。日本の国土の2割超を占めるスギやヒノキ等の人工林が育成段階を終え、成熟した木を伐採する“主伐”に適した時期を迎えているからだ。戦後の一時期に集中して植林された木が多いのが主因。需要と上手く噛み合えば林業の活性化に繋がるが、放置すると荒廃が一気に進む。課題は、林業に関心を失っている山林地主が多いことだ。農水省が約1000人にアンケート調査したところ、「山林は保有するが、林業経営を行うつもりはない」との回答が5割に達した。同省は、高齢農家の農地を大規模農家に貸し出す『農地中間管理機構(農地バンク)』を参考に、山林を意欲ある林業経営者に委ねる枠組み作りを進めている。漁業生産量がピークだった1984年の4割に留まる水産業。世界屈指の漁場に恵まれているにも拘わらず、衰退傾向に歯止めがかからない。農水省が今春纏めた水産基本計画には、そんな流れを変える文言が入った。“魚類・貝類養殖業等への企業の参入”がそれだ。ノルウェー等と比べ、家族経営で成り立つ日本の漁業は、企業による大規模な養殖業が少ない。農水省は、地元の漁業者優先の制度の見直しを視野に入れる。通商交渉や食品偽装が世間を賑わす度に改革を迫られてきた農業と比べ、林業と水産業は大きな政策転換を経験していない。それが吉と出るか凶となるか。これから農水省の政策推進力が問われることになる。 (中戸川誠)


⦿日本経済新聞電子版 2017年8月29日付掲載⦿
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