【政治の現場・区割り改定】(05) 青森…腹案は“コスタリカ”

20170907 01
今月20日昼、青森県むつ市の電器店。創業48年の店内には、昭和の香りが残る。男性店主(75)と向き合った中村満義(66)は、縋るように頭を下げた。「昔あった後援会を、もう一度、作って頂きたい」。中村は、自民党衆議院議員・津島淳(50・当選2回)の地元である青森市内で事務所長を務める。下北半島にあるむつ市は、中選挙区時代、津島の父で元厚生大臣の雄二(87)の地盤だった。雄二の後援会『盛雄会』が休止に追い込まれたのは、1994年の小選挙区比例代表並立制導入で、むつが青森2区となり、青森市を拠点とする雄二が1区に立った為だ。長男の津島も、旧1区で当選を重ねた。ところが、今回の区割り改定で、父所縁の地は新1区に組み入れられた。むつには盛雄会の元会員が残る。店主もその1人だ。電器店の壁には、色褪せた雄二のポスターが未だ貼られている。中村の狙いは、「新1区から出たい」と公言する津島の為、嘗て雄二を支えた古参の元後援会員を再び束ねることにあった。冷えたサイダーで中村をもてなした店主は、東北弁で「後援会長は、もうちょっと若ぐて知名度のある人がいいんでねぇか?」と謙遜しつつ、今後を見据えた政治談議に花を咲かせた。尤も、自民党の新1区候補が津島だと決まった訳ではない。元防衛大臣の旧2区・江渡聡徳(61・当選6回)も、新1区への出馬を窺う。江渡が地盤としてきた旧2区は、区割り改定で南北に分断された。江渡は、新2区での立候補と両睨みだ。今月20日夕、江渡は十和田市の催事場に支持者約120人を集めた。「極めて残念なことに、(選挙区が)真っ二つに切り裂かれたような状態だが、必ず7期の栄誉を勝ち取らなければならない」。後援会長の小山田富弥(65)は、悲痛な声で訴えた。

黒のスーツにネクタイを締めた江藤の挨拶は、歯切れが悪かった。県連会長として候補者調整を主導する自身の立場も踏まえ、「何とか今月中には一定の目途をつけたい」と語る一方、「中々皆さん、自分の思いが強いので、簡単にいくかどうか…」と苦悩の色を滲ませた。江渡の腹案は“コスタリカ方式”の採用だ。津島、江渡、旧3区の衆議院議長・大島理森(70・当選11回)、旧4区の自民党衆議院議員・木村太郎(52・当選7回)の4人の内、いずれか2人で1つの選挙区を分け合うことを想定した。ただ、新3区は区割り改定後も、旧4区と然して変わらない。この為、新1区か新2区でコスタリカ方式を導入する案が軸とされた。今月5日夜、赤坂の日本料理店に津島・江渡・大島の3人が集まった。木村は諸事情を理由に欠席した。江渡は腹案を打ち明けたが、津島と大島は黙って聞くだけだったという。それから20日後の25日、木村が急逝した。自民党青森県連は、10月の補選に向けて候補者を公募する方針だ。補選は公職選挙法に基づき、旧4区で行われるが、自民候補が当選すれば、次期衆院選では新3区から改めて出馬することになる。新3区へのコスタリカ方式適用は事実上、消えた。大島は、「県連と党本部の調整を見守る」と沈黙を保つ。支持者は不安を隠さない。大島が県内の最長老国会議員で、会長を務めた旧大島派(※現在の麻生派)では、江渡が事務総長として大島を支えた為、「師弟の義理から江渡の提案を呑んで、比例選に回ってしまうのでは?」という訳だ。八戸市等を地盤とする大島は、自民党から新進党等を経て民主党に移った元農林水産大臣の田名部匡省(82)や、娘の匡代(48)と旧3区で激しく議席を争った。その戦いは“八戸戦争”の異名を持つ。自民党八戸市支部は先月17日、今は民進党参議院議員の匡代(衆議院当選3回)が、再び衆院選に鞍替え出馬する可能性も念頭に、大島に対し、新2区から出馬するよう求める決議を採択した。「大島先生は34年間も八戸を拠点に国会議員を務めてきた」。支部長で県議の清水悦郎(68)は、「勝てるのは大島だけだ」と強調する。青森では来月2日から始まる『ねぶた祭』で、短い夏が折り返しを迎える。候補者調整の最終結論が出るのは、祭りの後になる見通しだ。 《敬称略》 =おわり

               ◇

末吉光太郎・塩見尚之・荻原栄太・後藤香代・薩川碧・遠藤信葉・森山雄太・淵上隆悠が担当しました。


⦿読売新聞 2017年7月27日付掲載⦿
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