【誰の味方でもありません】(17) 真の韓流ファンって

光復節に合わせて韓国に行ってきた。光復節は、日本からの独立を祝う韓国の祝日で、日本の終戦記念日と同じ8月15日に当たる。韓国といえば、“反日”に関するニュースを毎週のように目にするが、光復節では一体どれほどの“反日”運動が見られるのかを知りたかったのだ。ソウルに到着した8月14日、早速びっくりするような“反日”の光景に出くわした。“慰安婦バス”である。ソウル市内で路線バスに乗ったところ、運転手の直ぐ後ろの席に謎の少女像が腰掛けていた。「何かの現代アートなのか?」と思ったら、慰安婦問題を象徴する“平和の少女像”だというのだ。しかも、バスが日本大使館前を通りかかると、バス車内に悲しげな音楽が流れ始める。吊り革や手すりにスマートフォンをタッチすると慰安婦情報を知ることのできる仕掛けも用意されていて、“走る反日”とも言えるバスだ。流石エンタメの国、韓国。発想が中々ぶっ飛んでいる。バスを降りて日本大使館前へ向かうと、ニュースでもお馴染みの少女像がいた。 2015年の慰安婦問題日韓合意では、韓国側が「適切に対応する」と約束したものの、移設や撤去は実現に至っていない。像の隣には仮設テントが設置され、地元の大学生たちがボランティアで詰めていた。そして愈々8月15日。「光化門広場前で大きなデモがある」というので行ってみた。

強い雨が降る中、爆音と共にデモ隊が現れた。サウンドカーに先導されたデモの列が視界の彼方まで続いている。扨て、どんな“反日”の様子を目撃できるのかと思ったら、“NO TRUMP”・“NO WAR”という標語が掲げられていた。えっ、ドナルド・トランプ大統領? そうなのだ。今回のデモの目的は、アメリカのTHAADミサイル配備に対する抗議。中には「徴用工問題を忘れない」「親日派を一掃する」というコールもあったが、全体から見ればほんの一部。警察発表で6000人に及んだデモ隊は、最終的にアメリカ大使館前に押しかけた。同じ日に日本大使館前でもデモはあったが、その規模は光化門広場のデモに比べると遥かに小さかった。実は慰安婦バスにしても、乗客の9割は少女像に気付かないか、全くの無関心だった。気付いた乗客も軽く写真を撮る程度。強い興味や怒りは感じられない。同じくソウル市内に設置されたばかりの徴用工像も見てきたが、こちらも見事に注目を浴びていない。日本人観光客である僕が、誰よりも熱心に痩せ細った男性の像の写真を撮っていた。日本で韓国のニュースを見ていると、どうしても“反日”の話題ばかりが目に留まる。しかし、最近の韓国の関心はすっかりアメリカや中国等、大国との関係に移行している。経済的にも日本の重要性は相対的に低下している。“反日”のニュースに対して誰より敏感に反応しているのは、日本の“反韓”の人々だ。その意味で、彼らこそ真の韓流ファンと呼ばれていい。


古市憲寿(ふるいち・のりとし) 社会学者。1985年、東京都生まれ。東京大学大学院博士課程在籍。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。著書に『希望難民ご一行様 ピースボートと“承認の共同体”幻想』(光文社新書)・『絶望の国の幸福な若者たち』『誰も戦争を教えてくれなかった』(共に講談社)等。近著に『大田舎・東京 都バスから見つけた日本』(文藝春秋)。


キャプチャ  2017年9月7日号掲載
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