【中外時評】 現実直視した外国人政策を

移民や難民は、大衆扇動的な政治家の格好の標的になる。欧米の政治の混乱は改めて、そんな教訓を浮き彫りにした。日本はそのような問題とは無縁でよかった――。多くの人がそう感じたかもしれない。だが、果たしてそうか? 日本でも外国人は着実に増えており、その存在無しには経済や社会が回らなくなっているという現実が目の前にある。「各産業で外国人依存度が高まっている」と言うのは、『三菱UFJリサーチ&コンサルティング』の加藤真研究員。その試算によると、例えば宿泊・飲食サービス業では昨年、就業者の30人に1人は外国人だった。比率は7年で2倍に増えた。全産業でも59人に1人で、比率は90%増えた。働き手の多くは留学生のアルバイトや技能実習生だ。建前としては働く目的で来た訳でない人たちが、人手不足の穴を埋めている。今後はどうか? 人工知能(AI)やロボットが補うにしても、50年で4割減とも見込まれる働き手の急減を考えれば、外国人材の助けはより欠かせないものになるだろう。とすれば、外国人材をどう活かし、日本に住む外国人とどう共生していくかという課題に、真剣に向き合うべきだ。先ずは、優秀で日本に溶け込める人材を選択し、確保する仕組み作りだ。反移民ムードの中でも、外国人材に対する世界的な獲得競争は衰えていない。「貴方のような技能労働者が必要だ」。ドイツ政府の特設サイトを開けば、同国で職を得る為に必要な資格から、常時数万件に及ぶ具体的な求人情報までが一目でわかる。日本も、研究者等“超高度人材”には、最短で1年で永住権を与える等の対策が進むが、その他の分野は正式な受け入れ体制が整っていない。人手が足りない分野は、技能実習生で対応するのが基本姿勢だ。だが、一時的な出稼ぎの面が強く処遇も良いとは言えない。この仕組みの拡充では労働の質は高まらず、社会的な摩擦が生じる恐れもある。

そうではなく、一定の技能を持った人材を選んで受け入れ、能力を高めた人は日本に居続け易い制度を、正面から検討すべき時ではないか? 様々な案も出ている。愛知県は、製造分野の技能や高い日本語能力を持つ外国人向けの新たな在留資格“産業人材”の創設を、国家戦略特区の枠内で提案した。また、企業や有識者からなる『外国人雇用協議会』は、日本の職場で活躍できる技能水準を測る“外国人就労適性試験”を準備中だ。試験に通れば働けるようにする制度を提言している。人材の確保には企業の努力も大切。大学新卒者については、かなり自由に採用できる。埼玉県入間市のエンジン部品メーカー『小金井精機製作所』は、日本人の技術者確保が困難になった10年前から、ベトナムの大学と関係を構築して卒業生の採用を開始。今はベトナム人が社員の1割を占め、現場を指導する主任も複数いる。「卒業前に日本語を学ぶよう支援している。処遇は完全に平等。優秀な人を毎年採れている」(鴨下祐介社長)。今後より重要になるのは、増える外国人の生活を支え、社会からの孤立を防ぐことだ。1990年代に南米から入国した日系人が多く住む自治体は、既に経験を積んでいる。外国人向けの相談窓口設置を始め、外国人児童の教育支援、医療や防災の情報伝達等を多言語で進めている。これが土台になるが、自治体任せには限界がある。「生活に必要な日本語の学習支援に力を入れているが、ボランティアに依存せざるを得ないのが現状」(群馬県太田市)といった声は、よく聞かれる。外国人住民が多い自治体による『外国人集住都市会議』は、日本語教育推進を始め、外国人との共生に向け司令塔になる“外国人庁”の設置を政府に求めてきた。だが、反応は鈍い。外国人問題を正面から論じるのを避け、場当たり的な策を続ければ、将来、問題は大きくなって返ってくるだけだ。雇用等への影響を考慮し、管理された形で望ましい人材を受け入れる。同時に、外国人が社会に溶け込めるよう、国全体として支えていく。決して容易な課題ではないが、取り組みを急がねばならない。 (上級論説委員 実哲也)


⦿日本経済新聞 2017年9月7日付掲載⦿
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