【徹底解剖!東京都庁】(14) 実力主義と難関試験…都庁の出世と人事、その全てを解剖する!

30代前半に差し掛かる都庁マン最大の昇任試験“管理職選考A”。合格率7%の難関試験をパスした者だけが、部長・局長への切符を掴み取る。外からは窺い知れない都庁の完成された“出世システム”を解剖する。 (取材・文/本誌編集部)

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都庁における幹部は、定められた選考試験を受け、それに合格することによって出世した職員たちである。国家公務員のように、入り口でキャリア・ノンキャリアで分類されることはなく、たとえ高卒であったとしても、原則、同じ土俵で管理職を目指すことができる。幹部と言われる課長以上(※職員全体の10%以下)に出世する為には、少なくとも2度の昇任試験に合格する必要があるが、その合格率はかなり低い。嘗て、競争率が高かった時代には“司法試験並み”と形容されたこともあったが、今はそれほどではないにせよ、合格する為には、最低でも1年ほどの綿密な準備・努力が必要になってくると言われている。ここでは、大卒で“Ⅰ類B行政”の試験区分で合格し、都庁に採用された場合の出世コースの関門について、順を追う形で説明していくことにする。

■出世コース
①1年目~3年目
最初の配属先がどこになるかは、採用時の成績と無関係であることは既に述べた。最初に出先事務所に配属された場合、そこでやる気を見せ、若者らしく真剣に仕事に取り組み、上司の役に立つ活躍を見せることができれば、3年~4年目に本庁、それも“官房3局”という中枢部署に異動することが多い。
②6年目(主任級職選考A)
5年間下積みをすると、“主任級職選考A”という昇進試験を受けることができる。これが制度上、最速で受けられる昇任試験だが、謂わば1日も早く上に昇進したい幹部候補生の為の試験である。都庁の昇任試験は全て本人の志願制で、黙っていれば試験は受けなくてもいいが、それだと永遠に出世はしない。この試験は、未だ横並び意識が強い若い世代が多いだけに、有資格者の6~7割が取り敢えずは受験する。主任級職選考Aは、マークシート式の教養問題A(※55題・2時間45分)と論文(※2時間30分・2題中1題を選択)があり、これに“専門知識評定”、そして日々の仕事ぶりが判定された“勤務評定”の点数が合算される。都庁の採用試験では、かなり幅広い分野からの教養問題が出されるが、この主任選考の教養試験では更に問題数も増え(※統計資料の見方・基礎的法令・地方自治制度・地方公務員制度・都政実務・都政事情等)、仕事の中身と直結する都政関連問題が出題される。5択問題だが、内容はかなり濃密だ。なお、この教養試験で一定の点数を取ると、たとえ主任試験に落ちたとしても、翌年以降再チャレンジする際、教養試験は免除される(※但し3年間のみ)。この試験の合格率は、1発合格なら20%、トータルで30%程度と言われる。如何に早く(※できれば20代の内に)この試験に合格し、主任になるかが1つの分かれ道となるのである。主任となれば仕事も更に忙しくなる為、年収は150万~200万円アップ。更に、合格後には人事異動が待っているが、ここで総務・予算・人事・政策等に関与する本庁勤務となれば万々歳となる。晩成型の人材というのは存在するが、大抵の場合、3年も働けばどこに配属されていようと、仕事のできるヤツかそうでないかは、かなり評価が定まってきている。主任試験を受けそうで、且つ受かりそうな人材は、かなりの確率で本庁に呼び戻されていると言っていい。この主任級職選考は再チャレンジできるが、ずっと合格できないまま入都後13年経過(※或いは40歳を過ぎると)すると、“選考A”ではなく“選考B”になり、試験内容も変わってくる。毎年受け続けているのに5連敗・6連敗するような職員は、違う意味でちょっと問題がある訳だが、将来、局長になるような人材は、大抵30歳くらいまでに主任になっている。

③8年目(管理職選考A)
扨て、主任を2年務めると、今度は最難関の昇任試験とされる“管理職選考A”を受験できる。これに合格すると課長代理となり、5~6年後の課長昇進が事実上、決定的なものになる。試験は40問の筆記(※5択問題・1時間40分)に論文(※2時間50分・2題中1題を選択)、更に面接と勤務評価が加味される。筆記試験の内容は相当に高度であり、通常の仕事を熟しているだけで頭に入ってくるような内容ではない為、試験用の対策が結果に反映されることは間違いない。この主任向け管理職選考Aの合格率は7%強で、2016年の場合、647人が受験し、合格者は僅か47人だった。この試験に合格すると、幹部候補生としての処遇が確定し、課長代理を5年ほど経験した後、そのまま課長に昇進する。理論上は最速35歳で課長に到達するが、そこまでのスピード出世は殆ど無く、大体、課長一番乗りが37~38歳といったところだ。課長から上は筆記試験は無く、全て業績評価によって部長→局長と出世していく。40歳で課長に昇進した場合でも、統括課長を経て部長に昇進するのは50歳過ぎ。同じ部長・局長でも、内部では細かい格付けがなされており、最終的な到達地点は副知事である。

■まったりコース
①15年目(主任級職選考B)
20代~30代で主任級職選考Aを受けなかった、或いは合格できずにA試験での昇進を諦めたマイペース型職員のケースを見てみよう。大卒後、25歳で入都し、出先機関を中心に回り、主任にならずにいたとしても、40歳(※且つ勤務13年以上)になると“主任級職選考B”を受けることができる。同い年のトップランナーは、ぼちぼち遥か上の課長になっているが、地味に仕事をしていても定期昇給はあるので、この時点で年収は600万円程度にはなっている。遅ればせながら主任を目指す主任級職選考Bは、一般教養試験は無く、筆記は論文のみ。そして、日常の勤務評価に基づく推薦意見によって合否が判定される。この試験の合格率は37%と、主任級職選考Aを選択するより甘い基準だが、既に40代に突入している為、そこから覚醒して課長を狙うのは、不可能ではないがかなり難しいと言える。合格すると、やはり主任に昇任。同じ主任でも“A昇進”と“B昇進”がある訳で、その差は歴然としている。
②20年目(課長代理級職選考)
“課長代理級職選考”は、主任として5年以上実績を積むと受けられる。出世コースでは同じ主任の時に管理職選考Aを受け、合格するとゆくゆくは課長になるが、この試験はあくまで課長代理になる為のもの。書記試験は無いが、合格率は意外に低い13%。この辺りのポストで都庁職員としてのキャリアを終えるのは決して恥ずかしくない為、40歳を過ぎて主任になり、ここから更に頑張って課長になる人は、それほど多くはない。
③23年目(管理職選考B)
課長代理を3年以上、更に56歳未満であれば、“管理職選考B”試験が受けられる。択一式の試験は無く、自分の受験する政策分野を選択し、それについての記述と論文、更に日常の業績評価によって合否が判定される。合格率は約13%と低いが、50代以上で「ここが最後の課長チャレンジだ」と頑張って、何とか最後は課長まで行く人も中にはいる。このまったりコースを選択した場合、一度も“択一式”の試験で高得点を取る必要はない。日頃の勤務成績が安定している職員が上司に勧められる等して試験を受け、人並みに課長代理まで昇進しておく…というイメージである。都庁では、職員全体の30%近くが課長代理級で、普通に仕事を熟せる人材ならば、先ずここまでは出世できると言われる。定年近くまでいれば年収も800万円以上になり、基本的には言われたことを無難に熟すだけで、安定してこの収入が保証されているのだから、悪くはない。民間で年間800万円を稼げる仕事は、そう多くない。

20170911 02
ざっと2つのパターンのモデルケースを見てきたが、ここで課長から先の出世について見ていきたい。ざっと見て、課長の3~4人の内1人が部長に昇進、更に部長の7~8人への内1人が局長にまで出世。そして最後の副知事は、時代にもよるが、同期の中から出るか出ないかといった具合である。従って、民間企業のイメージに直せば、都庁課長が局長、都庁部長が役員、そして都庁局長が社長といったところだろうか。ただ、局長の中にも序列があり、政策企画局長・総務局長・財務局長は“重要条例局長”と呼ばれ、局長の中でもランクが最上位と見られている。また、現業部門として軽視されがちな地方公営企業の交通局・水道局・下水道局の3人の局長は、公営企業警理者として、また1つ別格的な存在で天下りでは優遇されると言われる。また、教育庁・選挙管理委員会・労働委員会等、行政委員会のトップは局長級であるが、格は一枚下と言われ、それ以上出世することは通常ないとされる。都庁の現役課長が語る。「私は40代後半に課長になりましたが、部長にはなれないかもしれません。都庁には大きく分けて3つのグループがあり、トップを目指していく2割くらいの集団と、人並みには出世したい6割ぐらいの集団、そして女性職員を中心とした、仕事より家庭や趣味のほうに軸足を置いて、一切出世に興味を持っていない3割の集団が存在する。上の2割は、最初から最後まで1つでも上のポストを狙っていく勝負師たちで、彼らにとっては、誰がどこまで出世し、最終的にどこに天下ったかというところまで気になって仕方がないのでしょう。その意味では、国家公務員的な気質と似ているところがあるように思います」。

誰でも実力次第で出世の道が開かれている――。それは無条件に素晴らしい“管理職選抜方法”と考える人も多いのだが、都庁出身である中央大学の佐々木信夫教授は、そうしたシステムにも「課題はある」として、著書『東京都政』(岩波新書)の中で次のように指摘している。同書の出版は2003年で、当時と今とでは受験状況データにも選考システムも若干の相違があるが、大意として参考になる部分が多いので、以下紹介しよう。「もっとも、こうした管理職選抜方法にも問題がある。1つは、管理職試験の受験資格があっても受験しない職員があまりに多いことだ。実際、 Aで受験資格者の25%、Bで9%、Cで30%(※編集部注:当時はC試験もあった)しか試験を受けていない。この程度の受験率で適材が選ばれていると言えるかどうか。本人の自由とはいえ、受験しない者のなかに適材はいないだろうか。受験しない理由も様々で、管理職に魅力がない、苦労の割に合格率が低い、30歳前後は結婚適齢で子育てに忙しいといった具合である。本人の申告による少数の申込者からしか管理職を選べないというシステムが、ほんとうによいかどうか疑問である」「もう1つの問題は、管理職に求められる能力が検証されているかどうかだ。分権時代のなか、都庁幹部に求められる能力は、経営能力や政策能力であり、国際感覚に優れているかどうかのはずだ。しかし、現行制度は将来の幹部候補を選ぶ若手選抜の試験ほどペーパー試験への依存度が高い。経営能力や国際感覚は見られていない。知識も大事だが、それ以上にいま必要なのは知恵ではないか。そこが試されていない。また超難関の試験ゆえ、若手時代ほど日常生活が職務重視より受験重視に傾きがちだ。しかもAでだめならB、BでだめならCと、長い間職員は受験体制に釘づけになる。これでほんとうに都庁はよい仕事ができるのだろうか」「さらに加えるなら、こうした身内だけの選抜でよいかどうかだ。昔から純血培養のモンロー主義が都庁の伝統である。しかし、これからの大都市づくりや自治体経営を、身内だけで固めた生え抜き職員だけでうまくやっていけるとは考えにくい。むしろ閉鎖性がネックになっているのではないか。その打破には管理職試験を公開・公募に切り換えることだ。一定の職務経験を持つ者は、国や他県、区市、民間のどこに勤務する者でも応募ができるようにし、生え抜きの職員と同じ条件で試験を受けさせるのである」。この佐々木教授の指摘は、結果として部分的にではあるが、現在の選考システムに取り入れられている。確かに、公務員である職員が、自分の人生のことだけを考え、試験対策に没頭するようになったら、「それが都民の利益になるのかどうか?」という疑問は生じる。ただ実際には、試験があるからといって仕事を疎かにするようなレベルの職員は少ない。日本の公務員の“優秀さ”は、そうしたところに現れているのである。 =おわり


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