【東京五輪後の地方経済を読み解く】(14) 大型ショッピングモールが地方のカネを奪っていく…

20170911 03
地方の疲弊はアメリカの要求だった――。トンデモ史観にも聞こえるかもしれないが、この30年の日本経済史を見れば頷かざるを得ないだろう。特に、1990年から10年で430兆円規模の公共投資という1986年4月の“前川レポート”が示すような内需の拡大要求と、旧大店法の改正等に現れた市場開放の要求は、地方経済に壊滅的な打撃を与えることになった。先ず、公共投資はリゾート法の他、道路建設・整備という政策となって現れた。1990年代以降、地方を中心に道路網が整備され、人々は自家用車による移動に利便性を感じ始めた。2000年代には、その道路網沿いに大店法の改正による大型ショッピングモールが出来て、表面的には新たな消費生活を謳歌できた。円高で日本の企業は海外に進出しており、格好の就職先でもあった。しかし、自家用車は増えたものの、一方で鉄道の利用は急減。駅前商店街は通行量が激減。更に、郊外に出来た大型ショッピングモールが追い打ちをかける形で、商店街はシャッター通りと化すことになった。公共投資は、一時は建設業界を通じて地方経済をも潤わせる。しかし、2000年代の小泉純一郎政権下の公共投資の見直しと財政緊縮策で、カネの流れは逆回転を始める。残り少ないパイの奪い合いが始まったのだ。それでも、郊外の大型ショッピングモールは出店ラッシュ。常に投資家の為に利益を生み出さなければならない企業の宿命が、競争を過熱させるのだ。その過熱ぶりは、福島県で見ることができる。

「市内の商店街が大打撃を受ける」「県北地域における商業まちづくりの観点からも容認できない」(福島市の小林香市長・記者会見にて)、「コンパクトなまちづくりを進める上で、郊外に大規模な商業施設は好ましくない」(福島県)――。県と市が揃って批判するのは、福島市に隣接する伊達市等が進める大型ショッピングモール計画だ。出店を計画しているのは『イオンモール』(千葉市美浜区)。国道4号沿いの伊達市堂ノ内地区に、2017年から2022年まで、地権者らが土地区画整理事業を進め、約19haに店舗を誘致する計画だ。用地は、国道4号と2020年度末に開通予定の東北中央自動車道(相馬福島道路)のインターチェンジに隣接し、東北自動車道と連絡する福島北ジャンクションにも約2㎞の場所に位置する。その上、相馬福島道路は復興支援道路で無料なのだ。反対する福島市の駅前には、街のステータスだった老舗デパートの『中合』がある。2010年に『ダイエーグループ』(※現在は『イオングループ』)の子会社となり、現在は複数の店舗へ間貸しするだけの経営に追い込まれている。市は駅ビルにショッピングモールを誘致し、駅前にはコンベンションセンターの建設計画もある。これ以上の商店街への打撃は避けたいところなのだ。しかし、伊達市側にも言い分がある。抑々、この計画は1996年からあった話で、2006年の合併を機に誘致を議決。しかし、県が郊外型大型店舖の出店規制条例(『福島県商業まちづくり推進条例』)を施行し、誘致は暗礁に乗り上げたのだ。因みに、当時の佐藤栄佐久知事は、原発のプルサーマルに反対していたことは有名だが、小泉・竹中内閣に批判的で、郵政民営化・首都圏一極集中・道州制・市町村合併にも反対し、「福島県は市町村合併を強制せず、合併する・しないに拘わらず、市町村に対しては支援を行っていく」と表明していた。そして、このまちづくり推進条例を置き土産のように、同年9月、弟の不正疑惑の道義的責任を取る形で、辞職に追い込まれている。また、周辺にはイオンが多い。福島市内にもイオンがあり、イオンモールは既に名取市(※東北のイオンモールで最大規模を誇る)と山形市にある。また、県中央部の郡山市には、イオンに加え、『ユニクロ』等大手チェーンが並立する大型モール『フェスタ』がある。これまで、伊達市の住民の消費は周辺の都市に吸収され、当然ながら、モールから発生する法人住民税や固定資産税等の税金も、これまでは伊達市に入ることはなかった。そこで、伊達市にモールが出来れば税収増も見込めるという訳だ。

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実は、伊達市は東日本大震災で被災地であった為、合併特例債が2025年までに延長され、合併に伴う新市設建設計画の期間も2025年まで延長している。そして、総予算も約253億円から、起債限度額で353億円に増額修正しているのだ。また、地方債も総額で371億円/市民1人あたり約60万円の市債を発行している。更には、合併に伴う交付税の特例措置の減額が始まり、財政は予断を許さないのだ。そして今回強気なのは、東証1部上場で東京に本社を置く町づくりコンサルタント大手の『オオバ』が関わっていることだ。オオバは、宮城県石巻市や女川地区で東日本大震災復興特区――所謂“津波で廃墟”となった地区の事業を手掛けている。今回も“防災拠点モール”の位置付けがある“多機能複合型商業施設”であり、2015年には伊達市新工業団地開発基本構想策定業務も受注している。東日本大震災で津波被害にあった石巻市では、イオン石巻が最大時2500人もの避難施設になったこともあり、“防災”は“まちづくり”を上回る大義名分となったのだ。確かに、モールは単なるショッピングセンターではない。飲食店街・行政窓口・金融機関に加え、イベント広場・ホール・医療機関まで併設された上、避難ビル・備蓄倉庫等の機能を備えれば、地域にとって欠かせない存在になる。誘致を強く望む声には、「福島市近郊には全天候型の娯楽施設が無い。冷暖房完備の遊びに行ける場所が必要」と、モールをアミューズメントパークとして見る声が少なくない。「これからは健康寿命を延ばすのが大切。高齢者、特に人口が多い団塊の世代の憩いの場として、モールはいいと思う」(福祉関連職員)。

但し、モールができて10年間は、団塊の世代をターゲットにすれば元は取れるだろう。しかしその後、不採算となれば、企業は行政ではない。撤退するだろう。モールが去った後には、根絶やしにされた地域経済と、壊滅した地域コミュニティーが“廃墟”として残りはしないか? 「地元のスーパーマーケットは、震災を機に撤退しようとした。市が頼んで何とか続けてもらっている…。既に高齢で、近所の商店にしか行けない人もいる」(地元住民)。既に廃墟化が進む町がある。福島県中通り地方の南に位置する白河市だ。白河市の中心市街地は、『十字屋商店街』と『イトーヨーカドー』の2店舗を中心に、活気ある商店街だった。環状線が整備され、郊外にショッピングモールが2つとイオン(※当時は『ジャスコ』)ができ、商業地図は一変した。デパートは閉店し、商店街の火も消えた。因みに、イトーヨーカドー白河店の年間約29億円あった売り上げは、モールができたことにより、年間19億円まで減少した。更にイオンは、市街地と往復する無料送迎バスを出し、集客を図った。表向きは住民の利便性を謳う。しかも、立地は隣の西郷村なのだ。白河市は商店街からの税収が消えた上に、モールの固定資産税や法人税も入ってこないのだ。若者世帯はモール周辺に整備されたニュータウンに移り、旧市街には高齢世帯が残り、世代間のコミュニティーの分断も起きている――。若い世代は、これまでの都道府県・市町村の枠組みを超えた“モール地方圏”が、生活の基盤になったのだ。若し、福島市内からイオンモールまで無料の送迎バスが運行されたらどうだろう? 駅ビルや中合デパートからテナントが撤退しないだろうか? 事実、既にこの誘致話を受け、駅前に店舗を持つイトーヨーカドー等はテナントの次回更新をせず、撤退との話も噂されている。そして、実は「知事も市長も既にモール誘致を内諾している」という諦めに似た話が、地元では駆け巡っている。現職の内堀雅雄知事は、総務官僚から副知事を経て、2014年に知事に就任。小林市長もまた、環境大臣官房付の元官僚だ。どちらも霞が関の役人上がりで、国の意向が強く出るというのだ。若し、この誘致に成功した場合、地方はパートタイマーという安価な労働を提供し、規格の中で消費を迫られる。わかり易く言えば、東京が地方に資本投下し、それを回収する構図が完成するのだ。地方は永遠に地方交付税で再分配を受け、霞が関の縛りで行政を行うヒエラルキーがより強化される。これでは、地方創生や地方分権とは真逆だろう。利益は東京に“ぶん取られる”のだ。地方の税収に結び付かない肥大化した消費へ疑いの眼差しを忘れてはならないだろう。西洋では、バベルの塔のように、今にも崩れ落ちようとする姿も“廃墟”という。美学者の谷川渥は、日本の廃墟観と対比し、それを“動的廃墟”という。地方を食い尽くす超大型モールは、現代のバベルの塔なのかもしれない。 (取材・文・写真/編集者 奥田龍)


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