【働き方改革の表と裏】(04) 変われない広告代理店…テレビ業界は残業300時間も、日本経済新聞社は“夜回り廃止”

20170911 07
2016年に新入社員の過労自殺が表面化して以降、『電通』は残業時間の上限を引き下げ、22時の全館消灯(※午前5時まで)を実施。組織改革も進めてきた。今年1月に就任した山本敏博社長は、「法令を順守し、社員の健康を守ることを最優先にやる」と説明する。今期は人的資源の補充に25億円、デジタル化やITインフラ投資に30億円以上を投じる。「広告代理店の実態は広告主の奴隷。二言目には『できないなら電通に変える』と脅される。何を言われてもやるしかない」。こう証言するのは、『博報堂』の元社員だ。広告主がコンペ(競合プレゼン)を実施するとなれば、年末年始も無く、資料作り等準備に追われる。24時からの会議もザラだ。求められる業務の水準も高い。残業は毎月200時間を超え、ほぼ毎日タクシーで帰宅していた。元社員は、電通との格差についても指摘する。「年収で数百万円の差がある。電通は残業代が付くが、博報堂は入社4年目以降、残業代込みの賃金の裁量労働制になる」。親会社の『博報堂DYホールディングス』は今年度、採用の強化やシステムによる業務合理化等で予算を積み増した。働き方改革を主導する専門部署も設置済みだ。戸田裕一社長は、「ITツールで生産性を引き上げ、従業員満足度も上げる。電通で起きた事件を他人事にはしない」と強調する。ただ、業務の範囲を明確に定めた契約を結ぶ等、代理店が広告主との関係を見直さない限り、現場の疲弊は広がる一方だろう。6月15日の22時前。電通本社の1階には、一斉に帰宅の途に就く社員を撮影するテレビクルーの姿があった。働き方改革に関する番組に用いるのだろう。22時を過ぎても撮影は続いていた。長時間労働の呪縛の最たる例がテレビだ。24時間番組収録が行われる為、社員の働きぶりは半端ではない。「帰宅は毎日午前3時くらい。有休は1回も使ったことがない」。こう話すのは、キー局でスポーツニュースを担当するディレクターの社員だ。選手らを取材し、試合の映像を編集したり、原稿を執筆したりする役目だ。オンエアは当日の夜遅い時間が多く、番組終了後に反省会を行うこともある。退社は午前2時近く。

朝も早い。プロ野球の場合、デーゲームは午前9時には球場で取材を始める。ゴルフは更に早い。選手が7時頃に集まる為、取材クルーは4時には現場に到着しなくてはならない。しかも、ゴルフ場は関東近辺の場合でも都心からは遠く、出発は深夜になる。これが日々続く。残業も桁違いだ。200時間は当たり前、300時間を超える月も珍しくない。当然、休日出勤も多く、1ヵ月間全く休みが無いこともあった。猛烈な働きぶりで、体を壊して入院する同僚も多かったという。これだけ多忙にも拘わらず、この社員が「全く苦にならなかった」と言ってのけるのには、高給がモチベーションを支えている面もあるだろう。局や部署によっても異なるが、20代で年収が1500万円に迫るケースもある。各局は現場の長時間労働を把握しつつも、対策には頭を悩ませている。「収録が始まると徹夜になることも多い。業務が特殊な為、メリハリをどうつけるか苦労している」(民放首脳)。ハードワークでは新聞も負けていない。特ダネを追う記者の夜討ち・朝駆けは日常茶飯事。朝刊の最終版である14版の締め切りが午前1時前後に設定されている為、記事の最終工程はどうしても夜中になってしまう。2016年12月6日には、『朝日新聞東京本社』が中央労働基準監督署から是正勧告を受けた。編集ではなく、財務部門の20代社員が、同年3月に36協定を超える85時間20分の残業をしていた。今後は各紙の編集部門がターゲットとなる可能性もあるが、記者の残業削減は簡単ではない。事件の発生は時と場所を選ばないし、良い記事を書く為に徹夜することもあるからだ。そんな中、重い腰を上げたのが『日本経済新聞社』だ。今年2月10日、長谷部剛専務(東京本社編集局長)が局員に対し、「働き方改革に本腰を入れる。我々の頃と時代が変わった」と言明。編集総務や人事労務の部長も同席し、「取材先の自宅を定期的に夜訪れる“定例夜回り”は止めろ」「必要な場合も交代制とし、朝と夜は別の人間が行け」「残業抑制へ締め切り重視を徹底する。特ダネを連発する記者でも、締め切りが守れなければマイナス評価」等と訴えた。重要ニュースは最終14版だけに入れることがあったが、禁止された。14版で変更するのは1面と、天変地異対応がある社会面や、最新展開が必要なスポーツ面のみで、他は13版で完結する。ここまで真剣な理由は、新卒採用への逆風が強い為。内定者が働き方への不安を口にして入社を辞退するケースが、会社側の想定を上回っているのだ。『フィナンシャルタイムズ』を買収したこともあり、インターネットの電子版を優先する“デジタルファースト”が徹底され始めたことも、深夜に集中しない働き方に一役買っているようだ。夜回りの在り方に関する議論や削減は、程度の差こそあれ、他社も行っている。記者だけでなく、整理部等スタッフ全員が終電までに帰ることを奨励する社もある。朝日では、社会部が毎週水曜日を“ノー残業デー”に設定。記者クラブに属さない遊軍記者が半数ずつ早帰りをしている。なお、日経にも5月30日付で労基署から即時是正勧告が出ている。対象は編集局以外の裁量労働でない職場で、36協定の45時間を超過しているケースについてだという。会社側は特別条項を設けるべく、36協定の見直しを組合に提案している。 (取材・文/本誌 田邉佳介・メディア取材班)


キャプチャ  2017年7月1日号掲載
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